HOME(ホーム)

たいけみお

文字の大きさ
47 / 114

第43章:「何があっても」

しおりを挟む
俺の部屋に美和を連れ帰ると、そのままゆっくり美和をベッドに横たえた。

「来週が来ないかもってどういうことだよ?」


美和が逃げられないように、でも優しく、俺は両手首を掴む。

「どういうことだ?」



すると美和は、ちょっと微笑んで言った。

「なんでそんなに焦ってるの?私は単に「何が起こるかわからない」って思っただけ。突然カレンさんに用事が出来てお流れになっちゃうかもしれないし、みんなだって毎回参加できるとは限らないし」


そんな美和の言葉に納得いかない俺はこう続けた。

「―――健さんからなんか連絡が来たんじゃないのか?」

「えっ・・・杏、何を言って・・・?」


少し、美和の瞳が動いた。


健さんが生きていることは敢えていう必要はないと、スティーブは俺に言った。

でも、俺がその事実を知ってることを美和に黙っとけと、口止めもされなかった。



「美和、言えないんだったら言わなくてもいい。だけど、一人で危険なことだけはしないでくれ。頼むから」

「・・・」


「ここに俺がいるんだから一緒に策を練ればいい。そうだろ?」

「・・・」

「もし勝手なことしそうだったら・・・ペンダント外すよ?俺に隠し事できないようにしてやる」


美和がそれに答えずにちょっと目を伏せたから、不安になって抱き寄せた。


ペンダントを外したらきっと、俺の「例の布石」もバレて、また新たな伏線を引かなきゃいけなくなる。

だけど。

そんなことよりも。


美和が健さんのことで何か危ない橋を渡ろうとしているなら、それを阻止する方が先だ。



「俺、美和のこと信じてるから・・・絶対に俺を置いて一人でどっかに行ったりしないって。俺のこと本当に大事に思ってくれてるんだったら、絶対にそういうことすんなよ?」

「・・・」


「俺は何があっても、美和から離れない。だから美和も、俺を置いてくとか絶対に考えんなよ?」

すると美和は俺の問いには答えずに、聞いた。




「杏は・・・」

「ん?」

「私のこと、面倒くさいとか、思ったりしないの?」



は?

なんだ、それ?




「変なことに巻き込まれて、危ない目に合うかもしれないのに・・・」

「そんなこと、考えたこともない。どうやったら美和のこと面倒くさいとか思えんの?」

「え?」

「逆に教えてよ?」


俺は美和の唇に優しく、自分の唇を重ねた。

「美和はもう、俺の一部なんだ。なかったら逆に困る・・・美和のない俺とか、想像できない」


ゆっくり唇を離して美和を見ると、美和は目を逸らしたまま、黙ったままで。

「美和にとって、俺はそういう存在じゃないの?」


そういう存在じゃないって答えられたとしても、俺は美和を絶対に離さない。

そんな自信が俺にはあって、だからそういう質問も出来たんだと思う。


すると美和はゆっくり顔を上げて、言った。



「杏は私にとって・・・」

「ん」


「全てだよ」

「え?」


「杏がもし私より先に死ぬことがあったら、私も死ぬ」

「だめだよ、死んじゃ。くくっ」


その言葉が嬉しかったのと、わざと美和が冗談ぽく言ったんだと思って、思わず笑った。

「だから・・・」


すると美和は真面目な顔で俺を引き寄せ、キスをして・・・こう言った。

「だから、何があっても、生き続けて・・・私のためにも」






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...