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第44章:「夏休み、最終週」
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夏休みもあと1週間で終わろうとする、残暑の厳しい朝。
俺の腕枕の中で美和が言った。
「もうすぐ杏の夏休みも終わりだし、2人でどっか行きたいな・・・」
「危なくないところだったらいいよ」
「杏が傍にいるからどこでも平気でしょ?ふふっ」
「そうだけど、今回は絶対に誰にも邪魔されたくないし。くくっ。で、どこ行く?」
たしかにこの夏休み中、
俺たちはなんだかんだ忙しかったり、危険を避けたりで、
二人きりで出かけることはなかった。
まぁそれでも俺は、例の布石の件以外、美和とほぼ毎日一緒に過ごせたから全く不満はなかったのだけれど。
それに結構、千晶とか木村さんとか、明良さんたちとか、みんなここに寄ってくれたから、
夏休みのイベントらしきものはそれなりにあったし。
でも、美和にしてみれば・・・そうだよな。
それでなくとも、俺より外に出ないし、
デートらしいことも最近全然してないし・・・
たまには思いっきり、外の空気を吸わせてやりたい。
「どこがいい?」
「遊園地は私が選んだから、今度は杏が決めて?」
「え、俺?」
「うん。行きたいところ、1つくらいあるでしょ?」
「まぁ、そう言われてみればないこともない・・・けど」
「どこ?」
言ったら美和、ビビるだろうな。
「ね、どこ、どこ?どこへでも一緒に行くよ?」
美和が楽しそうに俺の肩を揺らす。
「ホントにどこでもいいの?」
「いいよ!で、どこ?」
だから俺は・・・人差し指を天井に向け、縦に2度、揺らした。
「へ?」
「アーサーのジェットって窓なしだから、外の景色、見れないだろ?」
「でも操縦トレーニングの時は景色見えるよね?」
「でも日本上空だけだよ。何度も国外脱出してんのに景色見たことないなんておかしくない?俺、見てみたいよ、上空から」
「サイパンでヘリからジェイクの船見つけた時は?」
「俺のトラウマ、思い出させたいの?」
「・・・ごめん。何が見たいの?」
「なんでも。海、山、街並み・・・観れたら何でもいい」
「国外かぁ・・・特に希望は?」
「そうだなぁ・・・カナダとアメリカを巡る旅、っていうのは?・・・美和、行ったことある?」
「ないよ!それにそっか・・・ジェットで上空飛んでる分には、地上より安全だよね。うん、いいアイデアだよ!」
「じゃ、準備して?」
「え、今から?」
「だってあと一週間しかないし。レオンとカレンさんは俺が説得するから―――Zにジェット借りなきゃいけないし」
そして、すぐに連絡をすると、
レオンはあっさりOKしてくれた。
「夏休みどこにもいかなかったからね!トレーニングも頑張ってくれたしさ!」
と言って。
カレンさんも
「ま、ケインがそういうなら・・・スティーブにもそう言っとくわね?」
と、不気味な笑顔で送りだしてくれた。
だから。
なんとなく予想はしてたけど。
研究所のエントランスではZ部隊のDと喜多嶋さんが俺達を待ち構えていた。
「なんでDが?俺が操縦するから大丈夫ですよ?」
「Zからの命令です。まぁ、レオンからの命令でもありますが―――」
「どうして?」
「Dが管制塔とやりとりした方が手っ取り早いからです。杏くんはまだ国外で経験したことないでしょう?」
「あ、そうか・・・」
俺の返事に喜多嶋さんが笑った。
「私はお2人の邪魔はしないので安心してください。レオンからも、これは二人へのプレゼントだから絶対に邪魔するな、と言われてますし」
Dも笑う。
「邪魔じゃないけど・・・なんか遊びに付き合わせるみたいで申し訳ないよ」
「私にとってこれは仕事です。お給料出てるので心配しないでください。くくっ」
「Dが迷惑じゃないならいいけど・・・それにDひとり?ま、俺も途中で操縦するけど」
「私ひとりで余裕ですよ。そういう訓練をずっと受けてきてるんですから―――途中で給油がてら休憩入れますし。それに、そうですね、キョウさんにどこかで操縦していただくのも悪くないですね。ついでにトレーニングもしましょうか。くく」
「いやでも、やっぱ申し訳ないなぁ・・・な、美和?」
「うん・・・ホントにいいの?」
「全然気にしないでください。私も楽しみなんですから!」
そしてDが俺達を連れていった先には。
窓は付いてるけど・・・なんていうか、今まで乗ったことのない、戦闘機っぽいジェットが待っていて。
「なんでこれなの?普通のでいいのに」
「速いからです!それにカッコいいでしょう?私の一番のお気に入りなんですよ!」
「ん、まぁ、カッコいいけど・・・でも観光だよ?」
「でもあと一週間で学校が始まるんですよね?ヒダカが機内に必要なもの全て整えてくれたので、何も心配せず、観光だけに集中してくださいね!」
「「・・・」」
「さ、急ぎましょう!たくさんいろんな景色をお見せましょう!」
そして俺達は日本を発った。
俺の腕枕の中で美和が言った。
「もうすぐ杏の夏休みも終わりだし、2人でどっか行きたいな・・・」
「危なくないところだったらいいよ」
「杏が傍にいるからどこでも平気でしょ?ふふっ」
「そうだけど、今回は絶対に誰にも邪魔されたくないし。くくっ。で、どこ行く?」
たしかにこの夏休み中、
俺たちはなんだかんだ忙しかったり、危険を避けたりで、
二人きりで出かけることはなかった。
まぁそれでも俺は、例の布石の件以外、美和とほぼ毎日一緒に過ごせたから全く不満はなかったのだけれど。
それに結構、千晶とか木村さんとか、明良さんたちとか、みんなここに寄ってくれたから、
夏休みのイベントらしきものはそれなりにあったし。
でも、美和にしてみれば・・・そうだよな。
それでなくとも、俺より外に出ないし、
デートらしいことも最近全然してないし・・・
たまには思いっきり、外の空気を吸わせてやりたい。
「どこがいい?」
「遊園地は私が選んだから、今度は杏が決めて?」
「え、俺?」
「うん。行きたいところ、1つくらいあるでしょ?」
「まぁ、そう言われてみればないこともない・・・けど」
「どこ?」
言ったら美和、ビビるだろうな。
「ね、どこ、どこ?どこへでも一緒に行くよ?」
美和が楽しそうに俺の肩を揺らす。
「ホントにどこでもいいの?」
「いいよ!で、どこ?」
だから俺は・・・人差し指を天井に向け、縦に2度、揺らした。
「へ?」
「アーサーのジェットって窓なしだから、外の景色、見れないだろ?」
「でも操縦トレーニングの時は景色見えるよね?」
「でも日本上空だけだよ。何度も国外脱出してんのに景色見たことないなんておかしくない?俺、見てみたいよ、上空から」
「サイパンでヘリからジェイクの船見つけた時は?」
「俺のトラウマ、思い出させたいの?」
「・・・ごめん。何が見たいの?」
「なんでも。海、山、街並み・・・観れたら何でもいい」
「国外かぁ・・・特に希望は?」
「そうだなぁ・・・カナダとアメリカを巡る旅、っていうのは?・・・美和、行ったことある?」
「ないよ!それにそっか・・・ジェットで上空飛んでる分には、地上より安全だよね。うん、いいアイデアだよ!」
「じゃ、準備して?」
「え、今から?」
「だってあと一週間しかないし。レオンとカレンさんは俺が説得するから―――Zにジェット借りなきゃいけないし」
そして、すぐに連絡をすると、
レオンはあっさりOKしてくれた。
「夏休みどこにもいかなかったからね!トレーニングも頑張ってくれたしさ!」
と言って。
カレンさんも
「ま、ケインがそういうなら・・・スティーブにもそう言っとくわね?」
と、不気味な笑顔で送りだしてくれた。
だから。
なんとなく予想はしてたけど。
研究所のエントランスではZ部隊のDと喜多嶋さんが俺達を待ち構えていた。
「なんでDが?俺が操縦するから大丈夫ですよ?」
「Zからの命令です。まぁ、レオンからの命令でもありますが―――」
「どうして?」
「Dが管制塔とやりとりした方が手っ取り早いからです。杏くんはまだ国外で経験したことないでしょう?」
「あ、そうか・・・」
俺の返事に喜多嶋さんが笑った。
「私はお2人の邪魔はしないので安心してください。レオンからも、これは二人へのプレゼントだから絶対に邪魔するな、と言われてますし」
Dも笑う。
「邪魔じゃないけど・・・なんか遊びに付き合わせるみたいで申し訳ないよ」
「私にとってこれは仕事です。お給料出てるので心配しないでください。くくっ」
「Dが迷惑じゃないならいいけど・・・それにDひとり?ま、俺も途中で操縦するけど」
「私ひとりで余裕ですよ。そういう訓練をずっと受けてきてるんですから―――途中で給油がてら休憩入れますし。それに、そうですね、キョウさんにどこかで操縦していただくのも悪くないですね。ついでにトレーニングもしましょうか。くく」
「いやでも、やっぱ申し訳ないなぁ・・・な、美和?」
「うん・・・ホントにいいの?」
「全然気にしないでください。私も楽しみなんですから!」
そしてDが俺達を連れていった先には。
窓は付いてるけど・・・なんていうか、今まで乗ったことのない、戦闘機っぽいジェットが待っていて。
「なんでこれなの?普通のでいいのに」
「速いからです!それにカッコいいでしょう?私の一番のお気に入りなんですよ!」
「ん、まぁ、カッコいいけど・・・でも観光だよ?」
「でもあと一週間で学校が始まるんですよね?ヒダカが機内に必要なもの全て整えてくれたので、何も心配せず、観光だけに集中してくださいね!」
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「さ、急ぎましょう!たくさんいろんな景色をお見せましょう!」
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