染色体崩壊

緑茶せんべい

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プチトマト

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僕は妻を失った。助かると信じていた。だけど、もうダメだと思っていながらも1パーセントでも助かるならと藁をもすがるような気持ちで医者にすがった。もう楽にしてあげて欲しいとも医者に強く言えなかった。彼女はただ1人で闘っていた。彼女はあの時、この苦しさから解放されたいと死を望んだのだろうか。それとも、まだ生きたいと心から思っていたのだろうか。僕は彼女の本当の姿を知る事なく失ってしまった。彼女を焼いても骨すら残らず灰が空を舞った。僕は娘を幸せにすると決心した。

 妻が亡くなってから5年が経った。僕は玲奈を1人で育てた。会社が終わってから保育園へ迎えに行き、毎日抱きしめた。「パパ、おうち帰ろー。」こんな無邪気な笑顔に毎日が癒され、そして何よりも娘の成長を実感できる事が僕の唯一の幸せだ。 だが、保育園へ登校させた時に周りの子供達は泣いているのに玲奈は泣かなかった。強い子供になろうとしてるのか、ただ強がっているのか。でも、母親のことをずっと考えていると思う。僕は何度か再婚の話やお見合いの話をいただいたが娘が幼い事を理由に断ってきた。

 ある日、保育園で流しそうめんの催し物があった。玲奈は友達と竹を並べてそうめんを大量に流していた。
 すると友達の男の子が「僕、プチトマト嫌いだから玲奈ちゃん。これ流さないで。」
 玲奈は「うん。いいよ」そのプチトマトの入ったザルを地面に置き先生の所へ駆け寄った。
「先生、袋ちょーだい」 どうするんだろう。僕は微笑ましいような光景を眺めていた。
 玲奈はプチトマトを袋に入れをゴミ箱に入れた。案の定、先生が駆け付けて「みんなのプチトマトもあるのよ。玲奈ちゃんと藤森くんは嫌いでもプチトマト、好きな友達もいるかもしれないよ」
 先生は優しく注意してくれていた。
「うん。今度から玲奈と藤森くんのプチトマトだけ捨てるね」
 先生は苦笑いしながらも「だめだよ。好き嫌いせずに食べてあげないとプチトマトさん、かわいそうだよね」 玲奈は無邪気に笑いながら「うん。頑張って食べる」

 僕はそうだよなぁ。父親として働いて飯は食わせているけど母親にしか教われないことあるよなぁと思った。母親から教わる事を玲奈はこの短い時間、保育園で先生から少ししか教われない。再婚、本気で考えようかな。そう考えながら娘の流すそうめんを食べた。美味しかった。
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