【完結】うだつが上がらない底辺冒険者だったオッサンは命を燃やして強くなる

邪代夜叉(ヤシロヤシャ)

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【61】同居

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 家の戸口を開けた瞬間、胸の奥がざわめいた。
 ――何かが違う。

 半年以上ぶりの、我が家への帰還。

 かつて、この家の持ち主だったノックおじさんが使っていた古い椅子や、使い込まれた木製の机。
 冒険者たちが間借りしていたせいで、家具の配置も変わり、壁際には見慣れぬ寝台が増えていた。

 まるで他人の部屋をのぞいたような妙な感覚があった。

 それでも――自分だけの空間があるというのは、悪くない。
 この小さな空間で、久々にゆっくりとできると思った。
 思った、のだが。

「トーマ、ちょっといいかしら?」

 背後から聞こえた声に、振り返る。
 ドアの向こうに立っていたのは、スハァル。
 その横には、肩に荷袋を提げた女剣士・セリヤがいた。

「どうした?」

 問いかけると、スハァルが口を開く

「この荷物はどこに置いとけば良いかしら?」

「ああ、それなら空いている場所に好きに置いとけばいいよ」

 答えながら、トーマは頭をかきつつ二人を見直した。

 村に冒険者が沢山訪れており、宿泊施設が足りていない状態であった。
 トーマが留守にしている間、この家も臨時の宿として貸し出されていたが、幸運なことに、借りていた連中がちょうど出立したため、トーマの手に戻ってきたのだが――

「そんなに広くないけど、まあ三人ぐらいなら問題無いわね」

「トーマさん、私たちはどっちの寝台を使えば良いですか?」

 スハァルとセリヤが間借りすることになってしまった。
 旅を共にした仲ということもあり、オッサン(トーマ)との同居は気にならないらしい。

 とはいえ――視線が自然とスハァルの白い首筋に落ちてしまう。
 陽光に照らされた銀の髪が、風にそよいで光る。
 隣でセリヤが腰を伸ばすたび、軽装の胸元がわずかに揺れる。


 ……駄目だ。
 半年以上、禁欲生活だったせいで、脳が危険信号を出している。

「ちょっと掃除をした方がいいわね。前に使った冒険者居住者のゴミとか残っているし。トーマも手伝ってよね」

 スハァルは小さくため息をつき、腕まくりをした。

「ああ、わかった……」

 トーマは掃除道具を持ち、三人で汗を流したのであった。

 淡々とした掃除の音が続き、やがて夕日が窓を染めるころには、部屋はようやく、ゆっくりと暮らせるような空間となっていった。

 スハァルがそう言って微笑んだ瞬間、トーマの胸が微妙にざわついた。

 掃除のあとは簡単な夕食。
 そして夜。

 灯りを落とし、家具で仕切りを作った即席の寝所。
 静寂の中、セリヤとスハァルの寝息が微かに聞こえる。

 家具とかで仕切りを作り、そこでセリヤとスハァル寝息が聞こえる。

 トーマは布団の上で天井を見つめたまま、ため息をついた。

(……やっぱり、落ち着かねえな)

 半年もの間、欲も衝動も押し殺してきた。
 それが今、すぐ隣に“女性の気配”が存在している。
 寝返りで寝台の軋む音ひとつで心が跳ねる。スハァルの寝息が微かに届くだけで、理性が試される。

 このムラムラを発散しようとマリィに夜翅よはねをお願いしたいところだが、多忙ゆえにそんな暇がなかった。

「……はぁ」

 長いため息を漏らし、トーマは寝返りを打った。
 瞼を閉じても、耳が敏感に二人の寝息を拾ってしまう。
 静けさが、かえって心を騒がせた。

 眠れぬままの夜。

(今は別のことを考えよう……。ダンジョンに必要に道具とかを……)

 トーマは寝返りを打ち、額を押さえた。
 自分が成すべき為に必要なことを思案したのであった。

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