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異世界転生ー私は騎士になりますー
24 地下への道のり
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私は後ろ手を縛られた状態でゼビルに背中を押されるままに薄暗い厨房内を歩いていた。
一歩前を先導している男達の内一人が灯りを持ち、もう一人がカーラを肩に担いでいる。
扇子は取り上げられて、灯り持ちの男の手に渡ってしまった。
一階の厨房は随分長い間使われていないようで、埃っぽい匂いがする。
調理器具等も全て撤去されていて、何もないようだ。例えば包丁とかそういった武器になりそうなものも恐らくないだろう。
「妙なこと考えるなよ」
ゼビルが唸るように言った。ほぼ密着している位の距離で、上から私の視線の動きすらも監視しているのだ。
「そんな恰好して戦う気満々だったみたいだが、侍女に守られたヴィラント家最弱の娘なんか、すぐに殺せるんだからな」
最弱とか。私が弱いなんて初めて言われた。
最近はカーラと戦ってもそれなりに善戦出来るくらいになったのになー。
あ、実は皆主の娘だから手加減してたのかも。なんかショック。
私が俯くと、何故かゼビルが動揺して焦りだした。
「そっそんなしおらしいふりをしても駄目だ。ヴィラント家の人間は全員皆殺しにしてやるって決めてるんだからな!」
ゼビルの叫びに引っかかりを覚えて顔を上げると、思った以上に近くにゼビルの顔があってびっくりしたが、ゼビルはもっとびっくりしたようで身体を放されてしまい、よろけた。
なんとか踏ん張って転ばないように体勢を立て直すと、私を拘束していた筈の男は真っ赤な顔をしていた。一体何なんだ。
「どういうこと? 私がウィルの……、ウィンスター王子の婚約者だからこんなことをしたんじゃないってこと?」
「うわぁっ近寄るな! それがお前の作戦か、騙されないからな!」
「意味の分からないことを言ってないで、理由を話して貰いたいんだけど」
ずいっと距離を詰めると。もっと離れられた。何だこいつ。拘束されて連行されているのはこっちで、後ろ手に手を縛られたままなのに。
「おいっ遊んでないで早くしろ!」
「わぁっ」
いつの間にか先導していた男が戻ってきたようで、私を拘束しているロープをぐぃっと引っ張った。
後頭部が後ろに立つ男の肩にぶつかって痛いし、クラクラしてしまった。
「へぇ、見れば見るほど良い女だな。殺す前に楽しませてもらうのもいいか」
灯りを持っていた男が私の身体をジロジロ見て言う。うわぁ気持ち悪い。
私の今の服は元がドレスなので胸元が大胆に開いていて、コルセットで持ち上げられたことで出来た谷間ががっつり見えている。男の視線がそこに釘付けになっているので鳥肌が立つ。
「……放してぇっ……」
「かーわいいねぇ」
男は私のお腹に腕を回すと、軽く抱き上げた状態で引きずるようにして先を急ぎだした。
私は半ば宙に浮いていて別の意味でも気持ち悪い状態で言葉も出ない。
「やめろ。そんなことの為に連れてきたんじゃねぇぞ。早く王女も連れて脱出しねぇと」
「まだ大丈夫だよ。パーティーはまだ続くんだから。今頃あいつらが王女とクロウツィア嬢は意気投合して休憩所で仲良くおしゃべりしてるっていう話を伝えてる頃だろうよ」
ゼビルが止めようとするが、私を抱えた男は聞く耳を持っていない。
脱出して連れ去ってから殺す作戦だったようだ。
そして、パーティー会場に出入り出来る誰かが嘘の伝達でアリバイ工作をすると。確実に高位貴族も絡んだ大胆な作戦だ。
「灯りはお前が持て」
男が命じると、渋々といった体で灯りを受け取り、ゼビルが先導する形に隊形が変更になった。
地下へ通じる通路は床下収納のようになっていて、取っ手をスライドさせて開くと地下への階段が表れる仕組みのようだった。
ゼビルが先に入り、次にカーラを担いだ男、最後に私を抱いた男と続いた。
中は、かなり広い空間になっていて、空っぽの棚がいくつも並んでいる。その真ん前に、ドレス姿の少女が横たわっていた。
ゼビルの持つ灯りで照らされて見えたのは、やはりレイチェルだ。
気絶しているからか拘束もされておらず、怪我も無さそうだ。
カーラを担いだ男が奥へ進み、私を抱いた男もそれに続く。
「おい、お前は外で見張っとけ」
「やめろ、俺はこんなことの為に協力したんじゃねぇ」
命じられたゼビルが、男に反抗し始めた。
元々王女や私を攫う作戦があって、ゼビルは何か別の目的で協力することにしたようだ。
「分かってるって、この女を殺す役目は譲ってやるから、とりあえず楽しむ位良いじゃねぇか」
「ダメだ! とにかく先に脱出する」
「うるせぇ邪魔すんな!」
「うっ」
私はレイチェルの方を向かせられていたので見えなかったが、言い争っていた男はゼビルを殴ったようで、ガツンという音とうめき声と共に、壁に何か重い物が叩きつけられる音がした。
「さぁて、たっぷり可愛がってやるからなぁ」
私を床に降ろすと、男が私の両肩を掴み、自分の方を向かせた。
欲望に目が眩んだ気持ち悪い顔が迫り、両肩が後方に押される。
「ぎゃぁ!!」
次の瞬間、轟音と共に何か黒い影が私の真横を吹っ飛んでいって、ゼビルの隣につっこんだ。
勿論今の悲鳴は私のでは無く、ぶっとばされた男のものだ。
「レイチェル様、確保しました」
「でかしたよカーラ!」
カーラがレイチェルを背後に庇った状態で言った。
「なっなんで」
「カーラが一撃で気絶なんて、演技に決まってるじゃない。騙されるなんて馬鹿だね」
「こいつ!」
逆上した男が私に迫ろうとするが、私は怯むことなく足を男の脛めがけて振り下ろした。
「がぁっ」
鉄板入りの靴の威力は割と凄かったようで、鈍い音がした。きっと骨が折れたことだろう。
しかしそれで許さず、怯んだ男の腹部に膝蹴りを叩きこんで昏倒させた。
「ぅ……」
「とりあえず救出成功。かな」
一歩前を先導している男達の内一人が灯りを持ち、もう一人がカーラを肩に担いでいる。
扇子は取り上げられて、灯り持ちの男の手に渡ってしまった。
一階の厨房は随分長い間使われていないようで、埃っぽい匂いがする。
調理器具等も全て撤去されていて、何もないようだ。例えば包丁とかそういった武器になりそうなものも恐らくないだろう。
「妙なこと考えるなよ」
ゼビルが唸るように言った。ほぼ密着している位の距離で、上から私の視線の動きすらも監視しているのだ。
「そんな恰好して戦う気満々だったみたいだが、侍女に守られたヴィラント家最弱の娘なんか、すぐに殺せるんだからな」
最弱とか。私が弱いなんて初めて言われた。
最近はカーラと戦ってもそれなりに善戦出来るくらいになったのになー。
あ、実は皆主の娘だから手加減してたのかも。なんかショック。
私が俯くと、何故かゼビルが動揺して焦りだした。
「そっそんなしおらしいふりをしても駄目だ。ヴィラント家の人間は全員皆殺しにしてやるって決めてるんだからな!」
ゼビルの叫びに引っかかりを覚えて顔を上げると、思った以上に近くにゼビルの顔があってびっくりしたが、ゼビルはもっとびっくりしたようで身体を放されてしまい、よろけた。
なんとか踏ん張って転ばないように体勢を立て直すと、私を拘束していた筈の男は真っ赤な顔をしていた。一体何なんだ。
「どういうこと? 私がウィルの……、ウィンスター王子の婚約者だからこんなことをしたんじゃないってこと?」
「うわぁっ近寄るな! それがお前の作戦か、騙されないからな!」
「意味の分からないことを言ってないで、理由を話して貰いたいんだけど」
ずいっと距離を詰めると。もっと離れられた。何だこいつ。拘束されて連行されているのはこっちで、後ろ手に手を縛られたままなのに。
「おいっ遊んでないで早くしろ!」
「わぁっ」
いつの間にか先導していた男が戻ってきたようで、私を拘束しているロープをぐぃっと引っ張った。
後頭部が後ろに立つ男の肩にぶつかって痛いし、クラクラしてしまった。
「へぇ、見れば見るほど良い女だな。殺す前に楽しませてもらうのもいいか」
灯りを持っていた男が私の身体をジロジロ見て言う。うわぁ気持ち悪い。
私の今の服は元がドレスなので胸元が大胆に開いていて、コルセットで持ち上げられたことで出来た谷間ががっつり見えている。男の視線がそこに釘付けになっているので鳥肌が立つ。
「……放してぇっ……」
「かーわいいねぇ」
男は私のお腹に腕を回すと、軽く抱き上げた状態で引きずるようにして先を急ぎだした。
私は半ば宙に浮いていて別の意味でも気持ち悪い状態で言葉も出ない。
「やめろ。そんなことの為に連れてきたんじゃねぇぞ。早く王女も連れて脱出しねぇと」
「まだ大丈夫だよ。パーティーはまだ続くんだから。今頃あいつらが王女とクロウツィア嬢は意気投合して休憩所で仲良くおしゃべりしてるっていう話を伝えてる頃だろうよ」
ゼビルが止めようとするが、私を抱えた男は聞く耳を持っていない。
脱出して連れ去ってから殺す作戦だったようだ。
そして、パーティー会場に出入り出来る誰かが嘘の伝達でアリバイ工作をすると。確実に高位貴族も絡んだ大胆な作戦だ。
「灯りはお前が持て」
男が命じると、渋々といった体で灯りを受け取り、ゼビルが先導する形に隊形が変更になった。
地下へ通じる通路は床下収納のようになっていて、取っ手をスライドさせて開くと地下への階段が表れる仕組みのようだった。
ゼビルが先に入り、次にカーラを担いだ男、最後に私を抱いた男と続いた。
中は、かなり広い空間になっていて、空っぽの棚がいくつも並んでいる。その真ん前に、ドレス姿の少女が横たわっていた。
ゼビルの持つ灯りで照らされて見えたのは、やはりレイチェルだ。
気絶しているからか拘束もされておらず、怪我も無さそうだ。
カーラを担いだ男が奥へ進み、私を抱いた男もそれに続く。
「おい、お前は外で見張っとけ」
「やめろ、俺はこんなことの為に協力したんじゃねぇ」
命じられたゼビルが、男に反抗し始めた。
元々王女や私を攫う作戦があって、ゼビルは何か別の目的で協力することにしたようだ。
「分かってるって、この女を殺す役目は譲ってやるから、とりあえず楽しむ位良いじゃねぇか」
「ダメだ! とにかく先に脱出する」
「うるせぇ邪魔すんな!」
「うっ」
私はレイチェルの方を向かせられていたので見えなかったが、言い争っていた男はゼビルを殴ったようで、ガツンという音とうめき声と共に、壁に何か重い物が叩きつけられる音がした。
「さぁて、たっぷり可愛がってやるからなぁ」
私を床に降ろすと、男が私の両肩を掴み、自分の方を向かせた。
欲望に目が眩んだ気持ち悪い顔が迫り、両肩が後方に押される。
「ぎゃぁ!!」
次の瞬間、轟音と共に何か黒い影が私の真横を吹っ飛んでいって、ゼビルの隣につっこんだ。
勿論今の悲鳴は私のでは無く、ぶっとばされた男のものだ。
「レイチェル様、確保しました」
「でかしたよカーラ!」
カーラがレイチェルを背後に庇った状態で言った。
「なっなんで」
「カーラが一撃で気絶なんて、演技に決まってるじゃない。騙されるなんて馬鹿だね」
「こいつ!」
逆上した男が私に迫ろうとするが、私は怯むことなく足を男の脛めがけて振り下ろした。
「がぁっ」
鉄板入りの靴の威力は割と凄かったようで、鈍い音がした。きっと骨が折れたことだろう。
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