25 / 37
異世界転生ー私は騎士になりますー
25 VS ゼビル
しおりを挟む
残る敵はゼビル一人となった。
仲間相手で油断して一撃を食らっただけという様子の彼はあまりダメージを負っている様子はない。
一方私は後ろ手を縛られた状態で武器も無いし、ロープを切って貰う猶予は無さそうなので、ここはカーラに相手を任せて下がるしかない。
「カーラ……ここは、えっ!?」
振り返ると、私に向かって人差し指程の細いナイフを振り下ろそうとするカーラが居て驚愕した。
避けられない!!
思わず目を瞑ったけれど、切られたのはロープで、眼を開けた私が見たのは、崩れ落ちるカーラだった。
慌てて両手を差し伸べたけれど、支えようとする私の手に押し付けるように渡されたのは、例の扇子だった。
カーラはそのまま私ごと倒れこむのを避けるように私を軽く押しながら後ろ向きに倒れてしまった。
「カーラ、一体……」
「なんという精神力だ。麻酔に使う位の強力なものを用意しておいたのに、今まで意識を保っていたのか」
後方からかけられたゼビルの声と同時に直観に従って左に回避すると、先程まで私が居た場所にゼビルが火かき棒を振り下ろして、鉄が石床を削る音が響いた。
うわっちょっと床が削れてる。直撃してたらやばかった。
「へぇ、騎士団での一件から思っては居たが、お前がヴィラント家最弱というのは嘘らしいな」
すかさず追撃されるのを避けて更に大きく退避して、扇子を棒状にしようとするが、自分で棒に戻すのは初めてなのでうまくいかずまごついてしまう。
その間にも、二撃三撃と追尾してくるのを必死で避ける。
「くそっちょこまかと猫みたいなやつだ!」
「ちょっと待ってよ! なんで私を殺そうとするの!?」
次々に繰り出される攻撃に避けきれなくなって火かき棒を扇子で受け止めると同時に後ろへ飛び、ゼビルの力を推進力にして更に飛んで、入口からは反対の部屋の奥の棚を足蹴にして止まり、床に着地する。顔を上げて周囲を確認すると、並ぶように倒れているカーラとレイチェルから大きく離されてしまった。
焦りから内心舌打ちしてしまう。せっかく奪還したのにこれでは元の木阿弥どころかもっと状況が悪化してしまった。思わず手から力が抜けそうになったけれど、ゼビルは二人をそっちのけで私の方につっこんできたので、急いで扇子をいじる。ようやく変形が上手くいったと喜ぶと同時に振り下ろされた火かき棒が襲ってきたので受け止めた。金属同時のこすれ合う不快な音が鼓膜を刺激する。
「抵抗しても無駄だ! お前には死んでもらう!」
もはやレイチェルはどうでもよさそうだ。間近に迫ったゼビルの青い目は憎悪に染まっている。身に覚えは無いけれど相当強い恨みを持たれているようだ。何故だろう、過去のクロウツィアの所為なんだろうか。どう考えても命狙われるようなことはしていない筈。だって引き籠りで貴族令嬢としての真っ当な社交もしていなかったんだから。
鍔迫り合いをしていては力の強いゼビルに有利なので、軽く弾いて後方へ飛ぶ。
「逃げるんじゃねぇよ!」
「理由も分からず火かき棒持って迫ってくる男が居たら誰だって逃げるよ!」
「理由が分らないだと!?」
「あぁ、分からないね! 無知な私に教えてくれない?」
会話する間も火かき棒対扇子での打ち合いが続いている。このまま拮抗した状態が続くかと思ったが、そうはならなかった。
扇子は最初からそういう用途の為に作られているが、火かき棒の方は違うので、段々曲がってきて武器としては使えない状態になりつつある。
ゼビルがそれに伴い焦りを顔に出すようになってきた。
さすが伯爵家の護衛を務めるだけあってゼビルは強い。私が繰り出す扇子はことごとく受け止められているし、全く隙が無い。一方私は使用人やシェイルとの模擬戦ばかりで実戦はこれが初めてだ。流石に無傷とはいかず、左の二の腕に一撃食らってしまった。
痛みに気を取られていては殺されてしまうと気を奮い立たせて、繰り出された火かき棒を扇子ではじく。とうとう火かき棒がひん曲がってしまったので手から叩き落し、出来た隙をついて腹部に渾身の蹴りを入れた。
「ぐぅくそっこれがヴィラント家の娘かっ……」
「事情は、後でゆっくり聞かせてもらうから」
観念したようにゼビルが身体の力を抜いたので、それ以上追撃はせず、まずはレイチェルを安全なところへと二人が倒れていた方へと視線を映して愕然とした。
そこに倒れていたのは、カーラ一人だけだったのだ。
仲間相手で油断して一撃を食らっただけという様子の彼はあまりダメージを負っている様子はない。
一方私は後ろ手を縛られた状態で武器も無いし、ロープを切って貰う猶予は無さそうなので、ここはカーラに相手を任せて下がるしかない。
「カーラ……ここは、えっ!?」
振り返ると、私に向かって人差し指程の細いナイフを振り下ろそうとするカーラが居て驚愕した。
避けられない!!
思わず目を瞑ったけれど、切られたのはロープで、眼を開けた私が見たのは、崩れ落ちるカーラだった。
慌てて両手を差し伸べたけれど、支えようとする私の手に押し付けるように渡されたのは、例の扇子だった。
カーラはそのまま私ごと倒れこむのを避けるように私を軽く押しながら後ろ向きに倒れてしまった。
「カーラ、一体……」
「なんという精神力だ。麻酔に使う位の強力なものを用意しておいたのに、今まで意識を保っていたのか」
後方からかけられたゼビルの声と同時に直観に従って左に回避すると、先程まで私が居た場所にゼビルが火かき棒を振り下ろして、鉄が石床を削る音が響いた。
うわっちょっと床が削れてる。直撃してたらやばかった。
「へぇ、騎士団での一件から思っては居たが、お前がヴィラント家最弱というのは嘘らしいな」
すかさず追撃されるのを避けて更に大きく退避して、扇子を棒状にしようとするが、自分で棒に戻すのは初めてなのでうまくいかずまごついてしまう。
その間にも、二撃三撃と追尾してくるのを必死で避ける。
「くそっちょこまかと猫みたいなやつだ!」
「ちょっと待ってよ! なんで私を殺そうとするの!?」
次々に繰り出される攻撃に避けきれなくなって火かき棒を扇子で受け止めると同時に後ろへ飛び、ゼビルの力を推進力にして更に飛んで、入口からは反対の部屋の奥の棚を足蹴にして止まり、床に着地する。顔を上げて周囲を確認すると、並ぶように倒れているカーラとレイチェルから大きく離されてしまった。
焦りから内心舌打ちしてしまう。せっかく奪還したのにこれでは元の木阿弥どころかもっと状況が悪化してしまった。思わず手から力が抜けそうになったけれど、ゼビルは二人をそっちのけで私の方につっこんできたので、急いで扇子をいじる。ようやく変形が上手くいったと喜ぶと同時に振り下ろされた火かき棒が襲ってきたので受け止めた。金属同時のこすれ合う不快な音が鼓膜を刺激する。
「抵抗しても無駄だ! お前には死んでもらう!」
もはやレイチェルはどうでもよさそうだ。間近に迫ったゼビルの青い目は憎悪に染まっている。身に覚えは無いけれど相当強い恨みを持たれているようだ。何故だろう、過去のクロウツィアの所為なんだろうか。どう考えても命狙われるようなことはしていない筈。だって引き籠りで貴族令嬢としての真っ当な社交もしていなかったんだから。
鍔迫り合いをしていては力の強いゼビルに有利なので、軽く弾いて後方へ飛ぶ。
「逃げるんじゃねぇよ!」
「理由も分からず火かき棒持って迫ってくる男が居たら誰だって逃げるよ!」
「理由が分らないだと!?」
「あぁ、分からないね! 無知な私に教えてくれない?」
会話する間も火かき棒対扇子での打ち合いが続いている。このまま拮抗した状態が続くかと思ったが、そうはならなかった。
扇子は最初からそういう用途の為に作られているが、火かき棒の方は違うので、段々曲がってきて武器としては使えない状態になりつつある。
ゼビルがそれに伴い焦りを顔に出すようになってきた。
さすが伯爵家の護衛を務めるだけあってゼビルは強い。私が繰り出す扇子はことごとく受け止められているし、全く隙が無い。一方私は使用人やシェイルとの模擬戦ばかりで実戦はこれが初めてだ。流石に無傷とはいかず、左の二の腕に一撃食らってしまった。
痛みに気を取られていては殺されてしまうと気を奮い立たせて、繰り出された火かき棒を扇子ではじく。とうとう火かき棒がひん曲がってしまったので手から叩き落し、出来た隙をついて腹部に渾身の蹴りを入れた。
「ぐぅくそっこれがヴィラント家の娘かっ……」
「事情は、後でゆっくり聞かせてもらうから」
観念したようにゼビルが身体の力を抜いたので、それ以上追撃はせず、まずはレイチェルを安全なところへと二人が倒れていた方へと視線を映して愕然とした。
そこに倒れていたのは、カーラ一人だけだったのだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,147
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる