悪役令嬢? いえ私は、騎士になります。

桜咲 京華

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異世界転生ー私は騎士になりますー

26 ゼビル尋問

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 なんとかゼビルを撃退したら、その隙にレイチェルを連れ去られてしまった。

「嘘だろ……。急いで追いかけないとレイチェル様が……」
「おいお前」
「お前!? ぐっ」

 ゼビルは何かに焦った様子で四つん這いでレイチェルが先程まで寝かされていた場所まで移動しようとしたが、私が阻止するように胸倉を掴み上げる。ゼビルは私の言葉遣いに驚いたようだが、そんなことどうでも良い。
 本当は身体を持ち上げてぐらぐらと揺さぶってやりたいが、非力な私はそれが出来ず、ただ服を締め上げているだけになってしまっている。

「レイチェル様をどこへやった。言え」
「……回廊から外へ出る手筈だったが、俺の先導無しじゃ無理だ。外へ出られないと知ったあいつらが逆上したら……」

 ゼビルの顔は真っ青だが、気になる単語をボロボロとこぼしている。
 私はその頬を軽く叩いた。軽くといってもつい力が入ったのか、割と大き目の音がして、口の中を切ってしまったらしくゼビルの口の端から血が零れた。

「落ち着いて。詳しく話しなさい」
「……はい」

 私と目を合わせたゼビルは服従するかのように力を抜いたので、手を離してやると項垂れて、そしてぽつぽつと身の上話に近いことを話し始めた。

「俺の名前は本当はゼクトルという」
「……ゼクトル……どこかで。まさか、ゼクトル・プリモワール!?」
「そうだ」

 それはミンネから聞いていたこの屋敷の持ち主のプリモワール公爵の行方不明だった息子の名前だった。
 部下の手を借りて母親の故郷だった隣国へ逃れたものの、預けられたのは母と不仲だった妹夫妻の家で、使用人としてこき使われて育ったらしい。それでその遠因となったヴィラント家への恨みの一念で育ってきたらしい。

「あぁ、いいよ、そういうこみいった事情は後で聞いてあげるから。手短に作戦の概要だけ話して」
「くっ」

 話が長くなりそうなところでぶった切ると、ゼビル改めゼクトルが悔しそうに顔を歪めた。殺したい程恨んでいた相手に適当にあしらわれたのが余程悔しいらしいが知ったことではない。
 大体、先の戦の原因は彼の両親にある。これはミンネが調べたのだから噂や伝聞のような曖昧なものではなく、彼らの両親が処刑されるに至った詳細な裁判記録を元にしていることだろう事実だ。
 このあたりを今語って聞かせたとして納得させられないだろうし、今の私の目的は彼を改心させることでは無いのだ。

「この作戦のことを知って帰国したのは半年前、協力する代償として俺は偽名と、セイムリーア伯爵家の護衛という立場を貰った」

 そして、彼はその立場を利用して騎士団に出入りし、このパーティーにも同行してきた。と。
 普通に考えればセイムリーア伯爵は敵の一味だと考えて良いと思うけれど、利用されているだけという可能性も捨てきれない。

「この作戦では、レイチェル様だけを攫う作戦だったのを、俺の参加によってターゲットが追加された」
「随分優遇してもらってるんだね」

 恐らくこんな大それた作戦、恐らく何年もかけて綿密に計画されていた筈だ。途中参加で偽の身分を用意させた上にターゲットの追加までさせるなんて、普通ありえない。
 
「それは当然だ。やつらの悩みを解決できるのは俺だけだったからな」
「悩み?」
「脱出ルートだ。俺はこの屋敷の元の持ち主だったからな。幼かったとはいえ俺は嫡男だったから、公になっているマップには記されていない道を知っている。それがこの地下からのみ通じる迷宮回廊だ」

 ゼビルによると、その迷宮回廊は外へ通じるルートもあるが、殆どは屋敷の中へ戻るルートになっているという。その唯一のルートを知る者として脱出の先導をするということで強引に仲間に加えさせたそうだ。
 それで? と話の続きを聞き出そうとしてふと気づいた。
 
 音楽が、
 
 止んでいる。











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