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第5章-----(3)-3白の宮殿
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そこは神秘的な世界だった。
宇宙そのもののような漆黒に無数の光が散りばめられている。もう、雲は全くなかった。ポポはその空間を光の矢のように飛んだ。やがて前方に岩の塊のようなものが現れた。はじめ、それはごく小さなものに見えたが、近づくにつれ、巨大化した。
まるで宇宙にただよう小惑星のようだった。
惑星の周囲には薄い色の曲線の帯が何重にも巻かれていて、それらが飴細工のように絡まりあいながら、不思議な光景を作り出していた。曲線の帯を突き抜けた向こうにはさらに広々とした星空が広がっていて、宇宙のなかに宇宙があるイメージである。
「これは」
アルシュは、ぽかんと口をあけた。
突然、視界が開けたと思うと、今度は抜けるような青空と大地が見えた。見たことがないような大都市が眼下に広がっている。白く透き通る尖塔と荘厳で美麗な建物群。庭園と森、整備された道がある。それらを見下ろす丘には横幅の広い階段があり、神殿のようなものが聳えている。
「なんだか、すごいな……本当に、とんでもないな」
アルシュは呆れて言った。明らかにこれまでの霊界と様子が異なる。ウーディも驚いたようにポポから身を乗りだした。ポポは丘のてっぺんの神殿の上を旋回しながら、歌うように言う。
「ここは白の宮殿。霊界の上層階をつかさどる司令塔のような階層じゃよ。ここで天使たちと光と闇の魔女レベリア、時のさすらい人メフィスト、中間霊界を管理する英傑たち、そして今世テオスと〈太陽〉テオスその人がおぬしたちを待っておる。今後の話し合いをするためにな」
「はっ?」
アルシュは素っ頓狂な声をだした。そして、ポポの次の言葉にもっと仰天させられた。
「ついでに言うと、我がお前さんたちを迎えに地獄へおりることができたのは、我が肉体を失ってこちらの住人になってしまってるからだ。我は死んだ。いつもの暖炉の近くで、レザックを遊ばせながら、眠るようにこちら側へ来た。満足できる人生だったよ」
「――……っ」
「そのタイミングでこちらに来て、お前たちの窮地を知った。それで天使たちが動くより我の翼のほうが簡単だったので、お前たちを拾いあげる役目を申し出たのだよ」
「おまえ、死んで――? そんなバカな……本当に?」
「我は浮遊大陸の土地神のひとりだが、寿命はある。このところ力を使いすぎてしまって、多少、死期が早まったというだけだ。気にするな。遠からず、こうなることはわかっておった。それにどのみち我は甦る。レザックのドラゴンとしてな。新しい我は今の我とは別人格だが、我はその出会いを楽しみにしておるよ。さあ、降りるぞ。二人とも、お歴々と対面する心構えは良いか」
「ちょっ、ちょっと待って、ポポ」
「現実へ戻れば、お前たちはこちらでかわした言葉の大半を忘れてしまうだろう。だが、言わせてくれ。我は人生の最後に我の愛した二種族の末裔の、お前たちのような若者に出会えて、楽しかったぞ。さらばだ。機会があれば、また会おう」
「ポポッ!」
アルシュは叫んだ。だが、老竜は消えてしまい、アルシュとウーディだけが磨き抜かれた石の床に立ち尽くしていた。
「エラルドの〈聖母〉アルシュ・エム・ロディシ。そのつがいであり、聖母の騎士である、ムフー獣人族のウーディ=バーディ。こちらへおいでなさい」
殷々と声が聞こえてきた。見ると、階段の両端に翼を折りたたんだ天使たちが立っている。階段の上のフロアの巨大な円卓にはレベリアとメフィスト、アルシュの知らない人々が座っていた。勿論、その中心にいるのは、いつかアルシュが無意識の夢で言葉をかわした、テオス〈太陽〉その人だった。
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