俺と貴様と魔法使いのいる世界 ~テオスサーガ2~

天瀬由美子

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第5章-----(4)-1〈太陽〉テオス

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 アルシュは階段を見上げた。かれは背筋を伸ばし、おもてを引き締めた。ウーディがその横顔を見つめながら、小声で話しかける。

「行くのか」

「行くしかないみたいだな」

「――創世神がいると言ったな。本当に? 俺にはそのう、信じられないのだが」

 ウーディが呻くように言う。無理もないとアルシュは同情する。かれにしても、霊界での数々の不思議を経験してなければとてもその事実を受け入れられなかっただろう。アルシュよりこちらに来て日が浅いウーディが、この階段の上にデーミウールゴスがいると言われて、困惑するのも仕方がなかった。

「多分、向こうに害意はない。前に会った時も、敵対するような言動はなかった。俺が話す。お前はぴったりついて来てくれ」

「わかった。お前がそう言うのなら。俺はお前を信じてる。アルシュ」

「行くぞ、ウーディ」

 彼らは視線をかわして、頷きあった。

 アルシュは優美な曲線をえがく、緩やかな階段をのぼりはじめた。ウーディもすぐ後に続く。

 あたりは静謐に包まれていた。

 階段をのぼる二人の足音以外、何も聞こえない。抜けるような蒼穹と壮麗な宮殿。居並ぶ天使たち。まるでお伽話のようだ、とアルシュは頭のどこかで考えた。

 同時に、かれは微かな苛立ちを感じていた。

(……)

 ドラゴンのポポが言ったように、この場にいるのは霊界でもそうそうの実力者たちなのだろう。そうであるなら、創世神をはじめ階段の上にいる人々は、アルシュたちが苦労して成し遂げてきたことなど、簡単にできてしまうのではないかと思う。

 勿論、手を貸してくれようとしたテオス〈太陽〉の誘いを断ったのはアルシュだ。

 だがこのような場に呼び出されてみると、なんとなく霊界の実力者たちがアルシュとウーディの冒険を高見から見物していたような感じがして、良い気持ちはしなかった。

(どういうつもりなんだ)

(俺たちのことに手出しするなと言ったのに、まだ関わってこようとするのか)

 かれは深呼吸した。こんな時ほど冷静にならなければならない。エラルドのテオスに教えられたことである。

 アルシュはつとめて客観的に、階段の上のフロアの円卓にいる人々を見た。

 ホッとした表情をしたレベリアがいた。彼女はアルシュとウーディを地獄に送り出したものの、帰りが遅いのでさぞ心配してたのだろう。

 魔法使いメフィストの姿もあった。

 アルシュはメフィストがこれまで色々と助けてくれていたことはわかってたが、生身の術師にすぎないメフィストが同席してることに違和感を持った。

 が、元々、メフィストは得体のしれない人物だった。

 そもそも、テオスがただの人間でないことを知った今、そのテオスが個人的に緊急に会いに行った人物――というだけでも、メフィストには大きな秘密がありそうだった。

 それからアルシュの知らない人々がいた。

 こちらは普通の霊人たちのようだったが、彼らは種族も人種も様々だった。揃いの盛装をし、後頭部の上あたりにぼんやり光る円盤のようなものが見える。

 白い衣の天使たちもいた。彼らは階段に並ぶ天使たちより、格上であることを感じさせる風格があった。そうして円卓の中央には、アルシュとウーディを面白そうに眺めているテオス〈太陽〉がいた。


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