俺と貴様と魔法使いのいる世界 ~テオスサーガ2~

天瀬由美子

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第5章-----(4)-2〈太陽〉テオス

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    ◇


「おめでとう。また会えましたね」

 テオスの顔をした創造神は穏やかに言った。エラルドのテオスそっくりな姿を見て、ウーディが息をのむ。アルシュは前に進み出た。

「こちらが望んだわけではありません。用件は? 俺たちは早く現実に戻りたいんですが」

 敬意を欠いた言葉に、人々にざわめきが走った。

「無礼な――」

「主に対し、何と言う口を」

「よい。私はこの者と話してみたいのだ」

 テオスは片手を振って、天使たちを黙らせた。それからしげしげとアルシュとウーディを見比べた。

「あなたは不機嫌ですね、アルシュ。理由を聞いても良いですか」

「俺たちがここへ来る理由がないからです」

 テオス〈太陽〉は微苦笑した。

「私にそのような口を利く者はいませんよ。誰もが、一目、私に会えることを至上の喜びにしているというのに」

「あいにく、俺にとってはそうじゃないようです」

「神は嫌いですか?」

「そんなことはありません。俺も子供の頃から神々を敬うよう教えられてきました。特にエラルドの王族は成人の儀には土地の鎮守神に女鹿を供える儀式を続けてます。でも神は神でも、デーミウールゴスのような天地創造の物語に登場する神は違います。創世神は神話の存在にすぎません。そんな神より、実際に口をきいたり会ったりできるポポのような存在のほうが、俺にとってはよほど親しい神なんです」

「私より、あの下等な生き物のほうが良いと言うのですか。土地神もまた、私が作り出したものなのですよ」

「そうかもしれませんが、俺には関係ありません」

「心外ですね。でも私は知ってますよ。あなたたち人間はそのドラゴンですら、長い間、土地神として敬うどころか、農作物を荒らす害獣のように思ってましたね?」

「そ、それは過去のことです。今は違う」

「では私とももう少し仲良くしてくれませんか」

 あまり友好的とは言えない会話だったが、おかしなことに、アルシュは話してるうちに、少しずつリラックスしてくるのを感じていた。

 やはり、この相手はアルシュの知るテオスと同じ存在なのだ。かれはテオス〈太陽〉に好印象を持ってなかったが、話しながら、よくエラルドでテオスとこんなふうに言いたいことを言い合っていたことを思い出した。

 テオス〈太陽〉も同じような感想を持ったのだろう。不躾なアルシュの言葉に怒ったふうでもなく、会話を楽しんでいるのがわかる。

 対照的に天使たちの機嫌は悪くなった。彼らは自分たちが崇拝する、唯一無二の創世神が一人間を特別扱いするのが我慢ならないようだった。レベリアはハラハラした顔をしていて、英傑の霊人たちとメフィストは興味深そうに成り行きを見守っていた。

 テオスは一息つくと、口調を変えた。

「ところでアルシュ。あなたはあなたの世界のテオスの対象者であるわけですが、今後、自分の世界をどのようにしたいと考えますか」

 唐突に話題が変わった。アルシュはびっくりする。

「えっ? 世界。俺の?」

「そうです。現在、あなたの世界の中心はあなたですから」

 テオスは円卓の上で両手を組み、若干、意地悪そうに告げた。

「本来、そうした創造のことわりは対象者本人には告げず、私たちはその者の人生を見守るだけにとどめるのですが、私はあなたを気に入りました。せっかくこうして言葉をかわす機会にも恵まれましたし、あなたが望むなら、あなたの世界をあなたに差し上げようかと思ってます。ほとんどの対象者はそれを自覚しませんが、対象者には本来、そうした強い運があるのですよ」

「ちょっと待て。飛躍しすぎて、ついてゆけないんだけど」

 アルシュは慌てた。テオスはかまわず円卓に居並ぶ人々を見回した。

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