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◇
「あっ、あっ――あぁっん……あぁ……」
金髪の男娼が女装を脱ぎ捨てて、ミシェルの下で身をくねらせている。
「もっとぉ……いい――あぁっ、素敵……」
シーツを掴み、大袈裟に腰を振り、貫かれるたびに熱い呻きをあげる。ミシェルはがばがばに開いた男娼のそこを醒めた気持ちで眺めながら、おのれの欲望を解放することに専念し続けている。
(フン。セラとは大違いだな)
確かに見た目はセラと似ていないこともない。
ナイトクラブのバーに現れた姿は、なかなか女装した時のセラに雰囲気を似せていた。
だが、中身はまるで違うとミシェルは感じていた。以前、ミシェルはこの男娼にセラの性格や癖、色々な好みや喋り方などを教えた。そしてそれを真似て、セラになりきって自分に抱かれろと命じた。
その時、セラはベッドの中ではとても妖艶だったと伝えたので、男娼は今夜もそれを忠実に再現しようとしているらしかった。
(セラはそんなふうに下品に抱かれない。見え透いた媚びも売らない。大きな声をあげれば喜ぶバカな客と私を一緒にするな。セラはもっとしたたかで……危険な獣のような。そう、油断するとこちらの喉笛を嚙み切ってくるような緊迫感があって)
かれの下半身が熱くなった。
甘い、喘ぎ。
拷問のようなセックスで悲鳴をあげさせ過ぎたせいで、セラの声は掠れている。その甘く掠れた悲鳴はどんな美酒よりミシェルを酔わせた。
「ミシェル……お願い――もう、やめて……」
ついに耐えきれなくなって、セラが懇願する。
鞭で打たれ、手首を縛られ、アナルに淫らな器具を入れられ、長時間、犯され続けていたセラは疲れ果てていた。そのセラから血に濡れたバイブレーターを引き抜き、残酷な凶器と化したおれの自身を埋め込んでゆく。
甘美な悲鳴。
「お前の主人は誰だ?」
ミシェルが囁く。セラはぐったりしながら答える。
「あなたです……ミシェル――」
「そうだ。私がお前の主人だ。私に跪け。完全に服従しろ。そうすればペットとして可愛がってやる。お前はトリプルエーとして安泰だ、セラ。私のセラ」
「は……い」
「いい子だ」
だが、セラは屈服しなかった。ミシェルがどんなに恐怖で支配しようとしても、セラの牙は抜け落ちなかった。
(あの怪物を恐怖で支配することなどできない)
なぜなら、セラはミシェルの支配よりずっと恐ろしい経験をしてきていたのだから。
つまり、ルキナスの売春クラブでのセックスではどんなに痛めつけられても、命を落とすことはない。長期的に見れば、荒淫や病気などで不幸な死に方をする者も少なくなかったが、金のなる木である男娼をその場で殺すバカはいない。
しかしマフィアの抗争では違う。そこでは本物の銃撃戦があり、暴力があり、殺人がある。
セラはイタリアン・マフィアのボスの息子で、実の弟とのボスの座をめぐる血みどろの抗争をし、それに敗れてルキナスの男娼として売られてきたのだった。そういう相手に大富豪の御曹司にすぎなかったミシェルの脅しなど効くわけがなかったのである。
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