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12・カイルの戦いと助けた少女
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ナッシュとコーサットを逃がして、一人で戦う事を選んだカイル。
しかし、決して勝ちを見越しての事では無かった。旅に出る数ヶ月前までは、剣士として名を馳せていたのだ。王弟である父親から、家宝であるデスサイズを扱う事が出来なければ、家督は継がせないと言われ、得物を持ち替えたばかりだった。
それでも、幼い頃からデスサイズの使い手であった父の戦い方を見ていた事と、打ち合いのセンスが良かったカイルは、得物の扱い方を直ぐに身につける事が出来た。Sランクとまではいかないが。
「ほう、お前一人で俺達の相手をする気か?しかもデスサイズとはな。それはな、お前みたいなひよっ子が扱う武器では無いんだよ」
「……へぇー、まるで手にした事がある様な言い方だな」
「ふん、手にした事は無い。戦った事はあるがな。そうだな……お前を倒して手に入れるのも、悪くは無いかもしれん」
「そう簡単に……いくかよっ!!」
カイルは、先に仕掛けていく。目の前の相手との力差は恐らく互角。しかし、弓を避けながらとなると話は違ってくる。
しかも、河原の石は思うような動きを許してはくれない。
数度打ち合い、得物を合わせたまま動きを止めれば、すかさず矢が飛んでくる。気を抜く事が出来ない戦いは、徐々にカイルの精神と集中力を削っていく。
徐ろにカイルが、足下の石によって態勢を崩した。
それを狙ったかのように、カイル目掛けて矢が飛んでくる。片足で踏ん張り転倒は避けたが、一本の矢がカイルの左腕を掠めた。
「くっ……」
カイルは、近衛兵から一旦距離をおき、矢の掠めた部分の血を吸い、吐き捨てた。
「無駄だ、無駄だ。ははは、やっと戦いやすくなったな」
「卑怯者が……」
「何とでも言うがいい。今は、訓練でも武闘会でもない。死ぬか生きるかの戦いをしているんだ。さて、覚悟は良いかな?」
近衛兵が、剣を振り回し、カイルを攻め立てる。少しずつ抜けていく力と霞んでいく視界を必死に鼓舞しながら、カイルは戦い続ける。しかし、カイルの体は、徐々に傷つけられていった。
そして、とうとうカイルは倒れ込んでしまう。
「終わりだ」
近衛兵がカイルの側に立つが、その時不意に、森の中にいた弓使いが声をあげた。
(ヒュンッ……)
「ぐぁぁ……」
声に反応した近衛兵が、弓使いの方を見た次の瞬間、近衛兵は大きな獣に吹き飛ばされ、そのまま頭を打って意識を失った。
カイルの視界にも黒い物が映るが、それが何であるのかまでは確認出来なかった。
(ジャリ……)
弓を携えた一人の少女がカイルに近づく。
「どうだ?」
大きな獣が少女に話し掛ける。
「あまり良くありませんね。このまま旅を続けるのは無理でしょう。彼等の足手まといにもなってしまいます。フェン様、お願い出来ますか?」
「……仕方ない」
フェンと呼ばれた大きな獣は、カイルの腹の下に潜り込み、そのまま背に乗せて立ち上がった。
少女は、近くに落ちていた矢を一本拾い上げ、先端に目をやる。
「待て、カイルを降ろせっ!!」
少女とフェンが、声のした方を見ると、一人の青年が、大太刀を構えて立っていた。
少女は、ゆっくりと答える。
「……それは出来ません。カイル様は、このまま私達が、先に連れてまいります」
「……?先に……連れて行く?」
「はい。私の名はファミ。ファミ・トゥルーシ。貴方様は、フラン・ダーチェン様でいらっしゃいますね」
「何故、俺の名を?」
「ふふふ、詳しい事は向こうに着いてからゆっくりと。それより、カイル様のお命を救う方が先ですわ」
ファミは、デスサイズを拾い上げると、フェンの背に腰かける。
「ああ、スーチェ様にお伝え願います。この先は、森の木々達がご案内します。皆様、スーチェ様から離れませぬように。敵が現れても深追いなさいませぬようご注意下さいませ。では、お待ち致しております」
ファミが言い終えると、フェンは飛ぶように駆けていった。
フランは暫し立ち尽くしたが、弾かれたように我に返ると、急いで皆のもとに駆けていった。
しかし、決して勝ちを見越しての事では無かった。旅に出る数ヶ月前までは、剣士として名を馳せていたのだ。王弟である父親から、家宝であるデスサイズを扱う事が出来なければ、家督は継がせないと言われ、得物を持ち替えたばかりだった。
それでも、幼い頃からデスサイズの使い手であった父の戦い方を見ていた事と、打ち合いのセンスが良かったカイルは、得物の扱い方を直ぐに身につける事が出来た。Sランクとまではいかないが。
「ほう、お前一人で俺達の相手をする気か?しかもデスサイズとはな。それはな、お前みたいなひよっ子が扱う武器では無いんだよ」
「……へぇー、まるで手にした事がある様な言い方だな」
「ふん、手にした事は無い。戦った事はあるがな。そうだな……お前を倒して手に入れるのも、悪くは無いかもしれん」
「そう簡単に……いくかよっ!!」
カイルは、先に仕掛けていく。目の前の相手との力差は恐らく互角。しかし、弓を避けながらとなると話は違ってくる。
しかも、河原の石は思うような動きを許してはくれない。
数度打ち合い、得物を合わせたまま動きを止めれば、すかさず矢が飛んでくる。気を抜く事が出来ない戦いは、徐々にカイルの精神と集中力を削っていく。
徐ろにカイルが、足下の石によって態勢を崩した。
それを狙ったかのように、カイル目掛けて矢が飛んでくる。片足で踏ん張り転倒は避けたが、一本の矢がカイルの左腕を掠めた。
「くっ……」
カイルは、近衛兵から一旦距離をおき、矢の掠めた部分の血を吸い、吐き捨てた。
「無駄だ、無駄だ。ははは、やっと戦いやすくなったな」
「卑怯者が……」
「何とでも言うがいい。今は、訓練でも武闘会でもない。死ぬか生きるかの戦いをしているんだ。さて、覚悟は良いかな?」
近衛兵が、剣を振り回し、カイルを攻め立てる。少しずつ抜けていく力と霞んでいく視界を必死に鼓舞しながら、カイルは戦い続ける。しかし、カイルの体は、徐々に傷つけられていった。
そして、とうとうカイルは倒れ込んでしまう。
「終わりだ」
近衛兵がカイルの側に立つが、その時不意に、森の中にいた弓使いが声をあげた。
(ヒュンッ……)
「ぐぁぁ……」
声に反応した近衛兵が、弓使いの方を見た次の瞬間、近衛兵は大きな獣に吹き飛ばされ、そのまま頭を打って意識を失った。
カイルの視界にも黒い物が映るが、それが何であるのかまでは確認出来なかった。
(ジャリ……)
弓を携えた一人の少女がカイルに近づく。
「どうだ?」
大きな獣が少女に話し掛ける。
「あまり良くありませんね。このまま旅を続けるのは無理でしょう。彼等の足手まといにもなってしまいます。フェン様、お願い出来ますか?」
「……仕方ない」
フェンと呼ばれた大きな獣は、カイルの腹の下に潜り込み、そのまま背に乗せて立ち上がった。
少女は、近くに落ちていた矢を一本拾い上げ、先端に目をやる。
「待て、カイルを降ろせっ!!」
少女とフェンが、声のした方を見ると、一人の青年が、大太刀を構えて立っていた。
少女は、ゆっくりと答える。
「……それは出来ません。カイル様は、このまま私達が、先に連れてまいります」
「……?先に……連れて行く?」
「はい。私の名はファミ。ファミ・トゥルーシ。貴方様は、フラン・ダーチェン様でいらっしゃいますね」
「何故、俺の名を?」
「ふふふ、詳しい事は向こうに着いてからゆっくりと。それより、カイル様のお命を救う方が先ですわ」
ファミは、デスサイズを拾い上げると、フェンの背に腰かける。
「ああ、スーチェ様にお伝え願います。この先は、森の木々達がご案内します。皆様、スーチェ様から離れませぬように。敵が現れても深追いなさいませぬようご注意下さいませ。では、お待ち致しております」
ファミが言い終えると、フェンは飛ぶように駆けていった。
フランは暫し立ち尽くしたが、弾かれたように我に返ると、急いで皆のもとに駆けていった。
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