冒険しようよ!!ー攻略対象と知らない彼らは自ら冒険物語を創っていく

叶多 桜

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14・カイル、エルフの里に到着

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「長老、長老、大変です。ファミ様が、人間を連れて戻ってきました」
「ああ、わかった。直ぐに連れて参れ」
「はい」

 白髪の長髪を一つに縛り、机に向かっていた長老と呼ばれた女性は、転がるように駆け込んできた付き人に指示を出す。

「失礼致します、長老様、ファミ、ただ今戻りました」
「ファミ、ご苦労でした。フェン殿、付き添いありがとう。いつもすみません。……フェン殿の背に乗せているのが、人間?……デスサイズ……もしや、ドルマーレ公爵か?」

 長老は、慌ててフェンの背に乗る人間に近づこうとする。

「否、その息子の方だ。カイルと言うらしい。何者かと交戦して倒れている所を拾って来た。申し訳ないのだが、お主の力で救っては貰えないか?どうやら毒が回っているらしいのだ」
「わかりました。最善を尽くさせて頂きます。カイル殿を処置室へ」
「頼んだ」

 カイルは、夢と現実の狭間を彷徨っていた。
 主に毒による高熱が意識を朦朧とさせている。浮上する意識の合間には、歪んだ幾何学な世界が映り暴れ回る。己を責め立てるように近づいては消え、抗おうと手を伸ばせば、千切れて嘲笑う幻影。
 カイルはやがて、手放した意識の中で夢をみる。いつもの嫌な夢。
 
「フランを排除だ?親父、何言ってんだよ!!冗談にも程がある」
「冗談では無い」
「意味がわからない。『排除』って……フランを『この世から消せ』って事か?」
「そうだ」
「何故?あいつが何をした?」
「このままこの国にいればやがて、災いを招く事になるのだ」
「何故そうなる?先の事なんてまだ分からないだろ」
「事が起きてからでは遅いのだ」
「理由は?」
「今は話せない」
「わけわかんねぇ……王命か?」
「いや、私の独断だ。王はこの事は知らん」
「それがどういう事か、わかってんのか?」
「ある意味、反逆になるかもしれん」
「……俺は納得いかねぇ限り、指示には従わねぇ」
「ふん、甘い奴らだ」

 ドルマーレ公爵は、カイルに背を向けた。
 カイルは部屋を出て行く。
(何故だ?何があった……おかしい。おかし過ぎる。フランについて自分なりに調べてみるか)

 カイルは小さな光を見つける。無意識に手を伸ばしてそれを掴むと、光は手の中で大きく輝き出した。同時にカイルの意識がゆっくりと浮上する。

「ん……」
「カイル様、カイル様、気が付かれましたか?」
「ん……ここ…は?」
「エルフの里でございます」
「エル…フ…の…里?」
「はい。河原で、危うく敵に斬られようとしていた所をフェン様が助けたのですわ」
「河原……ああ、そうか。そうだった。フェン?そいつがガートラントの近衛兵を倒したのか?」
「ガートラントの……そうでしたか。ナッシュ様の敵と戦われていたのですね」
「知ってんのか?」
「周辺国であれば、どの国も警戒して密偵ぐらいは送っているものかと」
「と言うことは、お前はこの里の中枢の役職者か」
「残念ながら、まだ見習いでございます」

 ファミは、袂で口元を隠してコロコロと笑う。
 カイルは、一つ息を吐きファミに伝える。

「『フェン』という奴に礼を言いたい」
「あっ、そうでしたね。カイル様がお目覚めになった事も伝えて参ります。少々お待ち下さいませ」

 カイルは、ファミがいなくなった方向を見つめ、溜息を吐いた。ガートラントの近衛兵と戦って気を失う寸前、自分はもうこの世界から消えるものと思っていた。しかし、今こうして生きている。いや、生かされているのか?何のために?

(コンッコンッ……)
「失礼致します。カイル様、長老とフェン様をお連れ致しました」
「どうぞ、あ……痛っ……」
「カイル殿、まだ起き上がるのは無理でしょう。そのままで」
「……すまない」
「お加減は如何ですか?」
「正直最悪だが、自業自得だからな」

 カイルは、ゆっくりと空気を胸に入れるように吸って、大きく息を吐く。

「まぁ、死線を彷徨っていたのですから、体はかなりボロボロの状態です。お辛いでしょうが、他のお仲間達がお見えになる迄には、身体も動かせるように、私達も最善を尽くさせて頂きます。ご安心下さい」
「助かる。ありがとう。フェン殿にも会って礼を言いたいのだが」
「そうでしたね。フェン殿」

 長老がカイルの側を離れ、フェンがカイルの側に近づく。
 
(狼…か?)
「人では無かったのか?」
「……我は、フェンリル。故に皆はフェンと呼ぶ」
「噂には聞いていたが……本当に存在している生き物だとは……」
「あまり驚いてはいないのだな」
「いや、かなり驚いてはいる。けれど、エルフの存在が真実ならば、フェンリルが存在していても納得せざるを得ない。それに、言葉を話しているしな。助けてくれてありがとう」
「親父より殊勝だな」
「……親父を知っているのか?」
「知っている。共に戦っていたのだからな」
「一緒に?」
「あ奴は時々、良くも悪くも何を考えているか読めん時があった」
「ああ、確かにな」

 カイルの脳裏に夢が浮かぶ。

「兎に角、今のうちにゆっくり休んでおく事だ。体が動かせるようになったら、忙しくなるからな」
「ああ」

『仲間達が到着すれば宝を探しに行かなければならない』
(だから忙しくなる)
 フェンが言っているのはそういう事だろうと、この時のカイルは思っていた。
 
 
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