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ひと段落ついて

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「流石聖女様、覚えが早くて助かるわぁ。」

 マリー様が、満面の笑みで私に話しかけてくる。
「あのー、マリー様?本当にこれ、マナーの勉強なのですか?」
「うーん、マナーの基礎の基礎ってとこかしら。」
 頬を人差し指で軽く触れながら、マリー様が答える。けれど、どう考えてもバレーの練習なのよ。
「あら、綺麗なカーテシーも素敵なダンスも、足腰がしっかりして姿勢がきちんとしていた方が、覚えやすいと思うんだけど?」
 ふーん、そういうものなのかしら?
「それにね?痩せるわよ。」
「ほんとに?」
 二人で他愛もない話をしていたら、扉を叩く音がした。エルザさんが、応対してくれる。
「シリウス様が、お見えになりました。」
「お通しして。」
 私達は、挨拶を交わしてソファに腰掛けた。シリウス様が、事件の経過を話してくれる。
「テシオンは、教会にいる者から、余罪がボロボロ出てきて、裁判は直ぐには開けない状態。かなり恨みをかって、酷いもんだ。」
 シリウス様が溜息を吐く。
「まぁ、親であるブライトル元枢機卿が、教会資金の横領なんてしているくらいだから、悪いところが似てしまったってところか。」
 私が襲われた日、アレクシス様が教会に来た時、ブライトル枢機卿に国王が時間を空けていると言っていたのは、ブライトル枢機卿の横領疑惑の証拠が、ほぼ揃っていたかららしい。
 私達が、部屋で話をしている間に証拠品はちゃっかり押収。だから、テシオン様を捕まえた後、間もなくブライトル枢機卿も捕まったということらしい。
 そこまで話すと、シリウス様は、紅茶を一口飲んで一息吐いた。 
「教会には、再犯がされないような体制づくりが出来ない限り、国王は、聖女を教会には返さないと断言した。だから、当分の間ここで生活をしてもらう事になる。希望があれば優先的に考慮してもらえるので、いつでも言ってくれ。」
「お兄様、明後日から学園が始まりますけど、学園の寮には入れなかったのですか?」
「警備の都合上、安全の確保は難しいと判断された。」
 駄目だったか……。
「王妃が、明日の午後にもゆっくりお茶会がしたいと言っていたから、後で連絡が来るんじゃないか?」
 私の感情が顔に出たらしい。シリウス様が、笑って言った。
「まぁ、何事も経験と慣れだよ。それ無くして、完璧に出来るものなど無いだろう。ああ、物事によっては努力も必要だが。」
 確かにそうなんだけど、最初の一歩って怖いものなのよね。
「明後日の学園は、ルイベルト様と一緒に行って欲しい。警備の都合があって、すまない。」
「お気遣いありがとうございます。大丈夫ですよ。ルイベルト様も、以前より私の言い分を聞いて頂けるようになりましたし。」
「ああ、何の心境変化なのか。急に落ち着いて王子らしくなったな。このまま成長して頂けると良いのだが。」
 シリウス様が、マリー様を見る。マリー様は、優しく微笑みながら頷いた。
「そういえば、ユーリとサラはどうしてますか?」
 私は、ずっと気にかかっていた事を尋ねた。これには、マリー様が答えてくれた。
「二人は、私が経営する孤児院に入って、勉強してもらっているわ。」
「あれっ?あれは孤児院だったっけ?てっきり訓練学校だと思ってたぞ。」
「お兄様、失礼ですわ。それに、ちゃんと本人達も納得して入ってもらったんですからね。」
 シリウス様が、不安になることを言う。でも、きっと頑張っているはず。私も前向きにならなきゃね。
 
   
  
 
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