オープン・ステージ

平野 絵梨佳

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 ピロン。
 LINEの着信音が鳴った。佳くんからの着信だった。

【起きてる?】

【起きてるよ】

【三人のグループを作ったんだ。今から招待するね】

【分かった】

 間もなくして、グループへの招待通知が来る。『サンダー(仮)』と表示されたグループ名に思わず笑ってしまった。

【入りました!】

【いらっしゃい】

 佳くんからの笑顔スタンプに、私もスタンプで返した。

〝野田俊太が参加しました〟

 俊太も通知に気付いたようだ。

【グループ名のサンダーに笑っちゃった】

【俊太、いらっしゃい】

【おい、誰だよ、グループ名考えたやつ】

【佳くん】

【僕だよ。ごめん、特に深く考えないで付けちゃったんだ。でも(仮)だし、あとで三人で考えようよ】

【そうか……】

 そんな取り留めのない話をしているうちに、会話が自然と途切れたので、私はおやすみスタンプを送信してめた。
 そのままスマートフォンをベッドの枕元に置いて充電する。
 そして、今日のプレハブ小屋での出来事を思い返した。
 高校で進路を決めたときから、ずっと無気力に過ごしていた。このまま親の望むままに大学を卒業し、親の望むままに就職をして、自分の望まない毎日を、死ぬまでずっと繰り返していくのかと絶望すら感じていた。
 でも今日、佳くんと出会って、初めて芝居というものをしてみて、やっぱり楽しいものだったのだと痛感した。あんなにも楽しいと胸が熱くなったのは、一体いつ振りだっただろう。
 どうしてもっと早く知ることが出来なかったのだろうか。どうしてもっと早く、彼に出会う事が出来なかったのだろう。
 私の中で、今まで無理やり押さえ付けられていたものが再び力を盛り返し、私を押し返そうとしていた。
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