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しおりを挟むアルバイトの後、久しぶりにプレハブ小屋へ寄った。
今日は俊太が来ていて、お茶を飲みながら漫画を読んでいた。俊太は私に気がつくと、よぉ、と言って、また漫画の続きを読み始めた。
私は窓の方へ椅子を持っていくと、立ち仕事でむくんだ足を揉みながら座る。そして、田植えを終えたばかりの、田んぼだけが広がる、これといって何もない風景を眺めた。耳を澄ますと、遠くで遮断機が鳴っている音が耳を掠める。
窓からは初夏の匂いと、爽やかな風が前髪を揺らした。
「日が延びたねぇ……。もう少しすると、夏が来るねぇ……」
ぼんやりとそんなことを言ってみたら、俊太がそれに対して適当に返してきた。彼は今、漫画に夢中なのだ。
私は無意識に溜め息をついていた。
佳くんが帰ってしまってから、私はまた無気力に戻ってしまった。何の刺激もない、同じような日々の繰り返し。この毎日はいつまで続くのだろう。いつか誰かが変えてくれるのだろうか。
私は自分の腕時計を見た。そろそろ帰らなければならない時間だ。
佳くんは今頃、何してるだろうな。
佳くんとは、初めて会ったあの日から、何度か演技の練習に付き合った。演技を詳しく教えてほしいとは言い出せなかったけれど、彼が演技をしている姿を、一瞬だって見逃したくないと思いながら過ごした。
佳くんは、役者は体力勝負だから、長距離を自分のペースで走ったり、柔軟体操などをして身体を解しておかなければならない事などを教えてくれた。
基礎トレで体を十分にあたためてから一番最後に発声練習をするという事を、この時に初めて知った。
私は合唱部だったので、体が冷えていると声がよく出ないのだという事は知っていたけれど。
それらのメニューを全てやり終えて、やっと演技の練習に入れるのだそうだ。
私……。
気が付くと、私の頭の中は演劇の事でいっぱいになっていた。
どうしよう――。
「なぁ、これ食うか?」
その時、俊太がグミキャンディーの小さな袋をこちらへ向けてきた。私はお礼を言うと、彼の傍まで歩み寄り、袋からグミを一つ取り出した。
「お前、なに考えてるんだ?」
「え?」
突然の言葉に、私は俊太を見返した。
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