オープン・ステージ

平野 絵梨佳

文字の大きさ
上 下
40 / 56

2-27

しおりを挟む
「そうだな。市販の打ち上げ花火は迫力不足で盛り上がらないって事で、そっちにするか」
 俊太は目を凝らしてロウソクを見つけると、火をつけてコンクリートの上に立てた。
「暗くてよく見えないから、適当に選んでやっていこう」
 私たちは花火を持つと、その先端に火を近づけていく。
 シューッと勢いよく音を立て、火花がきらめくように舞った。
「わあ、綺麗!」
 火花の色が、緑や赤に変わっていく。
 花火が燃えている間はとても明るい。二人の表情も、この時にはよく見えた。
 少しすると花火が燃え尽きる。辺りが急に暗くなって、またすぐに次を見たくなった。
「手持ち花火って、なんか夢中になっちゃうよね」
 私は両手に一本ずつ持って火をつけた。
「あ、二刀流持ちだ! 僕もやろうっと」
 佳くんも両手に花火を持って火をつけると、円を描くように軽く振って見せた。
 残像で目がちかちかしたけれど、気持ちが上がって楽しくなる。
「それ、何でやりたくなるんだろうな」
 そう言いながら、俊太も二刀流で遊び始めた。
 二袋あった花火が、あっという間になくなっていく。
「最後の一本だよ。誰がやる?」
「僕はたった今つけたばかりだから、螢ちゃんがどうぞ」
「俺も今持ってるのが最後でいい。お前がやれよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
 最後の一本を火に近付ける。
 近付けすぎたのか、ロウソクの火が消えてしまった。
「あ……」
「螢ちゃん、ほら、僕の火をあげるから、こっちに来て」
 佳くんが後ろから声をかけてきた。
「うん、ありがとう」
 返事をして、彼の花火に自分の花火を近付ける。
 しかしなかなか燃え移らず、佳くんの花火が終わる頃になって、ようやく燃え出した。
「ギリギリだったね」
 そう言って微笑んだ彼の笑顔にドキリとした。
 暗闇の中で花火に照らされる彼の顔はとても綺麗で――
 ――佳くんって、こんなに――。
 彼の顔が整っていることは、出逢った日から知っている。
 それなのに、どうして今夜は、こんなにも……。
しおりを挟む

処理中です...