29 / 72
第4章 迷宮探索(ダンジョン・アタック)
第29話 オルフェリアの秘密
しおりを挟む
ボロボロと体を崩壊させていくホルベイル。
致命的な攻撃を受けたので、霊体と魔力で構成された体を維持できなくなっているのだ。
「おおお! 死霊術の秘儀にて不死者へと昇華し三百年を生きた、この儂が! このホルベイルが、あのような小僧の一撃でやられるのか!」
怨嗟の声を上げるホルベイル。
隙を突いたとは言え、確かにおかしな話と言えた。
ミスティファー、イスカリオスの魔法攻撃を耐え抜いた高レベル不死者が、未熟なロウドのたった一撃で滅びるとは、到底考えられることではない。
周りでホルベイルの断末魔を見届けているヴァルたちも、『まさか一撃で』と疑問を感じていた。
当然、その疑問の焦点は、素性不明の魔剣オルフェリアへと向けられる。
『オルフェリアの隠された能力が、ホルベイルに致命的なダメージを与えたのでは?』
実際にロウドがオルフェリアを振り下ろした際、柄頭の宝玉が微かな光を放っており、オルフェリアの助力があったことはほぼ確実であった。
しかし追究することも憚られる。どんな事情であれ、助かったことには変わりが無いからだ。
そして肝心のオルフェリアはと言うと、意識内にて煩悶していた。
「『過剰な助力は避けよ、でなければ使い手が成長しないから。お前が制限無しで全力を出していいのは、竜相手の時だけ』。創造主よ、貴方はそうおっしゃられた。真にその通りだと妾も思う。しかし、此度は、明らかに力量が違いすぎた。今のロウドでは、あの死に損ないにまともなダメージを与えることなどできはしません。故に過ぎたる助力をいたしました。お叱りは、妾の存在が限界を迎え、貴方の元へと戻ったときに幾らでもお受けいたします。妾はもう見たくないのです、使い手が死ぬのを……」
己を作り上げた創造主への懺悔。
創造主との約定を破ってまで、ロウドを助けたオルフェリア。
幾度となく使い手の死を見てきた。
老衰や病死なら仕方が無い。
だが、ほとんどの者は戦いの果てに死んだ。そう、敗北して死んでいったのだ。
使い手と認めた者の死を間近で見続けてきたオルフェリア。
使い手の力量以上の助力はするな。との創造主の言葉に従い助力を制限したが故に、皆格上の奴らに敗れて死んでいった。
使い手の死を見すぎて倦み疲れていたオルフェリア。そんな状態のところで不意を突かれて七十余年ほど封印されたのだ。
それが解かれて今、山人のナウマウに拾われて、ロウドと出会うことになる。
新たな使い手を見て思ったのは『この真っ直ぐな子を死なせはしない。守り導き育てよう』であった。
そしてロウドの手に余る強敵のホルベイルと戦う羽目になって約定を破ることとなるが、オルフェリアとしては後悔はしていない。
使い手が死ぬのをむざむざと見ているのは、もう御免なのだ。
そんなオルフェリアの思いを知ってか知らずか、強敵を撃ち倒した感動に打ち震えているロウド。
「やった! あの手強い敵を倒した!」
無邪気に喜んでいる。オルフェリアが制限を解除して力を貸してくれたなどとは露ほども思ってないのだろう。
「やりましたね!」
アナスタシアも眼鏡の下の瞳を輝かせて、一緒に喜んでいる。
他の皆は、薄々オルフェリアのことに感づいてはいるが、少年少女の感動に水を差すのもアレなので黙っていた。
だが、そこに冷水を浴びせる者がいる。
「それは……オルフェリアか?」
魔力阻害銀粉の影響から抜け出て、魔力による視覚を取り戻したホルベイルがオルフェリアをじっと見ていた。
その声には憎悪と恐怖が滲んでいた。
「何故それがここにある。封印されていたはず……魔老公に、ムドウ様にお知らせせねば」
バラバラになりつつある魔力を最後の力を振り絞り集中させるホルベイル。
占いに使う水晶玉位の大きさの光球がホルベイルの前に出現した。
「マズい! ロウドよ、あの玉を切れ!」
オルフェリアが慌てた様子で指示を出す。
その切迫した様子に聞き返すこともなく、光球を切ろうとするロウド。
しかしオルフェリアの刃が当たる寸前にソレは消えた。
「もう遅い! お前らの映像は記録してムドウ様のところに送った! お前らは魔族の総力を挙げて追われることになる。その忌まわしき屠竜剣を持っている限りな。これから先、怯えて震えながら眠れぬ夜を過ごすがいい! くかかかか!」
哄笑を上げながら、光る粒と化して散っていくホルベイル。
「屠竜剣だと?」
オルフェリアを見詰めながらヴァルが呟いた。
* * *
グレイズ王国より遥か東、〈大地の背骨山脈〉の地下。
そこに魔族の国がある。
そこの一角、魔老公ムドウの部屋。
椅子に座った見事な白い髭を床にまで届かんばかりに伸ばした矮躯の老人が、目の前に座る額から角を生やした美少女に術の講義をしている。
魔老公ムドウと孫の魔少女パメラだ。
「ん? この魔力はホルベイルか?」
魔力の波動を感じて身構えるムドウの前に、ロウドたちの前から消えた光球が出現した。
光球が虚空に映像を映し出す。
「な、これはオルフェリア? 馬鹿な! アレは七十年程前に捕らえて封印庫に叩き込んだはずじゃ!」
映像の中のオルフェリアを見て驚愕するムドウ。
「オルフェリアと言うと、あの忌まわしき屠竜剣ですか?」
映像を見ながら、パメラが祖父に問う。
「そうじゃ。ちと待っておれ、封印庫に行って確認してくる」
そう言うや、転移をして消えるムドウ。
厳重な封がされていて正式な手順を踏まなければ入れない封印庫だが、魔族随一の魔力を誇るムドウならば、転移も可能なのだろう。
ムドウはすぐに戻ってきた。
で開口一番、
「フッカー! あの馬鹿者が!」
と額に青筋を立てて怒鳴る。
「お、お祖父さま? どうされたのですか?」
怒る祖父などそうそう見たことないパメラが、恐る恐る聞く。
「封印庫には、精巧な複製が置いてあったわい。そこに残っていた魔力はフッカーのものじゃった。あの馬鹿、色々と引っかき回すためにオルフェリアを持ち出したに違いない!」
フッカー。道化師の格好をした魔族。その実力は魔神将級。
性格は快楽優先。事態を引っかき回すことを一番の楽しみにしている享楽主義者である。
「どうしますの、お祖父さま?」
孫娘の問いに、
「どうもこうも……評議会を召集し、議題に掛けるしかなかろう」
と答えるムドウ。
「そうですか。お祖父さま、私コイツらに見覚えがありますの」
* * *
「アーサーたちの冥福を祈って乾杯!」
マッセウ最大の冒険者の宿〈天上の舞姫亭〉の一階の酒場ホールにて、宴会が行われていた。
参加しているのは、アーサーたちのことを知る者たちであり、彼らが死んだことを聞いて集まってきたのだ。
「たくよう、ジャンの野郎がグダグダ言わなきゃ、今でもここでやれてたのによ!」
オブライエンが木製ジョッキになみなみとつがれたエールを飲みながら、くだを巻く。
オブライエンもアーサーたちがマッセウにいた頃に良くつるんで馬鹿をやっていたので、その死に関しては思うところがあるのだろう。
そんなふうにヴァルとオブライエンらがアーサーたちを偲んでいる脇で、ミスティファーは山人のナウマウに話を聞いていた。
「じゃあ、宝箱の中に入ってたんじゃなくて落ちていたのね、オルフェリアは?」
ミスティファーの前に座っている、肝っ玉母さんのように恰幅の良い女性が頷く。
「そうだよ。あの剣は、宝箱に戦利品として入ってたんじゃない。九階層の玄室の片隅に落ちていたのさ。一目見て、これはいいもんだ。と思ったよ。で拾ったんだ」
山人女性のナウマウの言葉を聞いて、思案するミスティファー。
「え、どういうこと? 誰かが置いてったってことかしら? あんな高レベルの不死者でも恐れるようなモノを一体、誰が?」
トリックスターの魔族が面白がって置いてった。などという真相に辿りつくことは絶対にないだろう。
「いたたた……」
更に酒場の片隅では、ロウドが全身筋肉痛に苛まれながら食事をしていた。
筋力増強薬の副作用だ。
「だ、大丈夫?」
心配そうに見ているアナスタシア。
自分が与えた薬のせいでこうなっているのだからと、食事の補佐を申し出たのだ。
「大丈夫です。一人で食べられます……ところで、オルフェリア」
ロウドはアナスタシアの申し出をやんわりと断り、愛剣に話しかけた。
実は帰還の途中、オルフェリアはだんまりを決め込み、一言も喋らなかったのだ。
「ホルベイル、倒せたのは君のおかげなんだよね?」
使い手の問いかけに、溜息を一つついて答えるオルフェリア。
「そうじゃ。妾が力を貸した」
「そうか……そうだよね、僕なんかにあんな化け物が倒せる訳がない」
「何をしょげとる。ソレが悔しいなら自分の力で倒せるように強くなれば良かろう。今回は確かに妾が力を貸した。しかし、我が身には色々と制約がかかっており、今後も同じように力を貸せるわけでもない。だから強くなれ、ロウドよ」
オルフェリアがこんこんと少年を諭す。
「ちらと聞いたが、お前には倒さなきゃならない奴がおるのじゃろう?」
オルフェリアの言葉に、リーズを思い出すロウド。
「そうだ。リーズ。アーサーさんたちとリチャード兄さんの仇」
ホルベイル戦の勝利が自分の力では無かったことを知って落ち込んでいた心が、メラメラと燃え盛る。
「そうだ、僕は強くなんなきゃならないんだ。なんでソレを忘れていたんだろう」
「持ち直したか。その意気じゃ。所詮は妾は武器に過ぎん。何度も言っとるが、武器を生かすも殺すも使い手次第じゃ、良いな。妾を持つに相応しく強くなるがいい」
「はい」
少年が落ち込みから回復したのを見て、アナスタシアは微笑み自分も料理を口に運んだ。
「良かった、元気になって……あら、これ美味しい」
オルフェリアの秘密 終了
致命的な攻撃を受けたので、霊体と魔力で構成された体を維持できなくなっているのだ。
「おおお! 死霊術の秘儀にて不死者へと昇華し三百年を生きた、この儂が! このホルベイルが、あのような小僧の一撃でやられるのか!」
怨嗟の声を上げるホルベイル。
隙を突いたとは言え、確かにおかしな話と言えた。
ミスティファー、イスカリオスの魔法攻撃を耐え抜いた高レベル不死者が、未熟なロウドのたった一撃で滅びるとは、到底考えられることではない。
周りでホルベイルの断末魔を見届けているヴァルたちも、『まさか一撃で』と疑問を感じていた。
当然、その疑問の焦点は、素性不明の魔剣オルフェリアへと向けられる。
『オルフェリアの隠された能力が、ホルベイルに致命的なダメージを与えたのでは?』
実際にロウドがオルフェリアを振り下ろした際、柄頭の宝玉が微かな光を放っており、オルフェリアの助力があったことはほぼ確実であった。
しかし追究することも憚られる。どんな事情であれ、助かったことには変わりが無いからだ。
そして肝心のオルフェリアはと言うと、意識内にて煩悶していた。
「『過剰な助力は避けよ、でなければ使い手が成長しないから。お前が制限無しで全力を出していいのは、竜相手の時だけ』。創造主よ、貴方はそうおっしゃられた。真にその通りだと妾も思う。しかし、此度は、明らかに力量が違いすぎた。今のロウドでは、あの死に損ないにまともなダメージを与えることなどできはしません。故に過ぎたる助力をいたしました。お叱りは、妾の存在が限界を迎え、貴方の元へと戻ったときに幾らでもお受けいたします。妾はもう見たくないのです、使い手が死ぬのを……」
己を作り上げた創造主への懺悔。
創造主との約定を破ってまで、ロウドを助けたオルフェリア。
幾度となく使い手の死を見てきた。
老衰や病死なら仕方が無い。
だが、ほとんどの者は戦いの果てに死んだ。そう、敗北して死んでいったのだ。
使い手と認めた者の死を間近で見続けてきたオルフェリア。
使い手の力量以上の助力はするな。との創造主の言葉に従い助力を制限したが故に、皆格上の奴らに敗れて死んでいった。
使い手の死を見すぎて倦み疲れていたオルフェリア。そんな状態のところで不意を突かれて七十余年ほど封印されたのだ。
それが解かれて今、山人のナウマウに拾われて、ロウドと出会うことになる。
新たな使い手を見て思ったのは『この真っ直ぐな子を死なせはしない。守り導き育てよう』であった。
そしてロウドの手に余る強敵のホルベイルと戦う羽目になって約定を破ることとなるが、オルフェリアとしては後悔はしていない。
使い手が死ぬのをむざむざと見ているのは、もう御免なのだ。
そんなオルフェリアの思いを知ってか知らずか、強敵を撃ち倒した感動に打ち震えているロウド。
「やった! あの手強い敵を倒した!」
無邪気に喜んでいる。オルフェリアが制限を解除して力を貸してくれたなどとは露ほども思ってないのだろう。
「やりましたね!」
アナスタシアも眼鏡の下の瞳を輝かせて、一緒に喜んでいる。
他の皆は、薄々オルフェリアのことに感づいてはいるが、少年少女の感動に水を差すのもアレなので黙っていた。
だが、そこに冷水を浴びせる者がいる。
「それは……オルフェリアか?」
魔力阻害銀粉の影響から抜け出て、魔力による視覚を取り戻したホルベイルがオルフェリアをじっと見ていた。
その声には憎悪と恐怖が滲んでいた。
「何故それがここにある。封印されていたはず……魔老公に、ムドウ様にお知らせせねば」
バラバラになりつつある魔力を最後の力を振り絞り集中させるホルベイル。
占いに使う水晶玉位の大きさの光球がホルベイルの前に出現した。
「マズい! ロウドよ、あの玉を切れ!」
オルフェリアが慌てた様子で指示を出す。
その切迫した様子に聞き返すこともなく、光球を切ろうとするロウド。
しかしオルフェリアの刃が当たる寸前にソレは消えた。
「もう遅い! お前らの映像は記録してムドウ様のところに送った! お前らは魔族の総力を挙げて追われることになる。その忌まわしき屠竜剣を持っている限りな。これから先、怯えて震えながら眠れぬ夜を過ごすがいい! くかかかか!」
哄笑を上げながら、光る粒と化して散っていくホルベイル。
「屠竜剣だと?」
オルフェリアを見詰めながらヴァルが呟いた。
* * *
グレイズ王国より遥か東、〈大地の背骨山脈〉の地下。
そこに魔族の国がある。
そこの一角、魔老公ムドウの部屋。
椅子に座った見事な白い髭を床にまで届かんばかりに伸ばした矮躯の老人が、目の前に座る額から角を生やした美少女に術の講義をしている。
魔老公ムドウと孫の魔少女パメラだ。
「ん? この魔力はホルベイルか?」
魔力の波動を感じて身構えるムドウの前に、ロウドたちの前から消えた光球が出現した。
光球が虚空に映像を映し出す。
「な、これはオルフェリア? 馬鹿な! アレは七十年程前に捕らえて封印庫に叩き込んだはずじゃ!」
映像の中のオルフェリアを見て驚愕するムドウ。
「オルフェリアと言うと、あの忌まわしき屠竜剣ですか?」
映像を見ながら、パメラが祖父に問う。
「そうじゃ。ちと待っておれ、封印庫に行って確認してくる」
そう言うや、転移をして消えるムドウ。
厳重な封がされていて正式な手順を踏まなければ入れない封印庫だが、魔族随一の魔力を誇るムドウならば、転移も可能なのだろう。
ムドウはすぐに戻ってきた。
で開口一番、
「フッカー! あの馬鹿者が!」
と額に青筋を立てて怒鳴る。
「お、お祖父さま? どうされたのですか?」
怒る祖父などそうそう見たことないパメラが、恐る恐る聞く。
「封印庫には、精巧な複製が置いてあったわい。そこに残っていた魔力はフッカーのものじゃった。あの馬鹿、色々と引っかき回すためにオルフェリアを持ち出したに違いない!」
フッカー。道化師の格好をした魔族。その実力は魔神将級。
性格は快楽優先。事態を引っかき回すことを一番の楽しみにしている享楽主義者である。
「どうしますの、お祖父さま?」
孫娘の問いに、
「どうもこうも……評議会を召集し、議題に掛けるしかなかろう」
と答えるムドウ。
「そうですか。お祖父さま、私コイツらに見覚えがありますの」
* * *
「アーサーたちの冥福を祈って乾杯!」
マッセウ最大の冒険者の宿〈天上の舞姫亭〉の一階の酒場ホールにて、宴会が行われていた。
参加しているのは、アーサーたちのことを知る者たちであり、彼らが死んだことを聞いて集まってきたのだ。
「たくよう、ジャンの野郎がグダグダ言わなきゃ、今でもここでやれてたのによ!」
オブライエンが木製ジョッキになみなみとつがれたエールを飲みながら、くだを巻く。
オブライエンもアーサーたちがマッセウにいた頃に良くつるんで馬鹿をやっていたので、その死に関しては思うところがあるのだろう。
そんなふうにヴァルとオブライエンらがアーサーたちを偲んでいる脇で、ミスティファーは山人のナウマウに話を聞いていた。
「じゃあ、宝箱の中に入ってたんじゃなくて落ちていたのね、オルフェリアは?」
ミスティファーの前に座っている、肝っ玉母さんのように恰幅の良い女性が頷く。
「そうだよ。あの剣は、宝箱に戦利品として入ってたんじゃない。九階層の玄室の片隅に落ちていたのさ。一目見て、これはいいもんだ。と思ったよ。で拾ったんだ」
山人女性のナウマウの言葉を聞いて、思案するミスティファー。
「え、どういうこと? 誰かが置いてったってことかしら? あんな高レベルの不死者でも恐れるようなモノを一体、誰が?」
トリックスターの魔族が面白がって置いてった。などという真相に辿りつくことは絶対にないだろう。
「いたたた……」
更に酒場の片隅では、ロウドが全身筋肉痛に苛まれながら食事をしていた。
筋力増強薬の副作用だ。
「だ、大丈夫?」
心配そうに見ているアナスタシア。
自分が与えた薬のせいでこうなっているのだからと、食事の補佐を申し出たのだ。
「大丈夫です。一人で食べられます……ところで、オルフェリア」
ロウドはアナスタシアの申し出をやんわりと断り、愛剣に話しかけた。
実は帰還の途中、オルフェリアはだんまりを決め込み、一言も喋らなかったのだ。
「ホルベイル、倒せたのは君のおかげなんだよね?」
使い手の問いかけに、溜息を一つついて答えるオルフェリア。
「そうじゃ。妾が力を貸した」
「そうか……そうだよね、僕なんかにあんな化け物が倒せる訳がない」
「何をしょげとる。ソレが悔しいなら自分の力で倒せるように強くなれば良かろう。今回は確かに妾が力を貸した。しかし、我が身には色々と制約がかかっており、今後も同じように力を貸せるわけでもない。だから強くなれ、ロウドよ」
オルフェリアがこんこんと少年を諭す。
「ちらと聞いたが、お前には倒さなきゃならない奴がおるのじゃろう?」
オルフェリアの言葉に、リーズを思い出すロウド。
「そうだ。リーズ。アーサーさんたちとリチャード兄さんの仇」
ホルベイル戦の勝利が自分の力では無かったことを知って落ち込んでいた心が、メラメラと燃え盛る。
「そうだ、僕は強くなんなきゃならないんだ。なんでソレを忘れていたんだろう」
「持ち直したか。その意気じゃ。所詮は妾は武器に過ぎん。何度も言っとるが、武器を生かすも殺すも使い手次第じゃ、良いな。妾を持つに相応しく強くなるがいい」
「はい」
少年が落ち込みから回復したのを見て、アナスタシアは微笑み自分も料理を口に運んだ。
「良かった、元気になって……あら、これ美味しい」
オルフェリアの秘密 終了
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる