魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記

文字の大きさ
29 / 82

結界

しおりを挟む
 俺はそれから神殿の結界について調べてみた。結界術についての本はあるけれども、神殿の結界という項目になるとほとんど情報がない。特に古い結界で飛ばされるという話はどこにも出てこなかった。

 もちろんリーフにも相談してみた。

「結界に巻き込まれるという話ですか? はじかれる、ではなくて?」
 リーフは首をかしげる。
「場所と時間が飛ぶ? そんな作用は結界にはないはずですよ」

「でも、実際に飛ばされたんだよ」
 俺は自分の体験を話した。

「授業を欠席した下手な言い訳だと思われますよ」

「いや、だから、本当なんだって」

 リーフは首をひねった。

「僕の知る限り、そういう話は聞いたことがないですけどね。兄さんに聞いてみましょうか」

「本屋のローレンスに?」

「嫌ですか?」

「いや、嫌というか……彼、俺のこと、嫌っているから……」

 リーフがほっとした笑顔を浮かべた。

「兄さんも、今のラークさんなら嫌いにならないと思いますよ。大丈夫。その話、兄さんだったらすごく興味を持つと思うんですよ」

 なんで、そんなにニコニコするのかな。そんなに本屋のローレンスは結界を愛しているのか? 人の趣味はそれぞれだから文句は言わないけれど。

「それはそうと、リーフ。お前、神官どもから何か言われなかったか?」

 リーフは首をかしげて、ああ、といった。

「特別奨学金についての話でしょうか? 僕達、平民に特別に与えられているお金ですね。良く励むようにと、心身を鍛えて、悪い誘惑に耳を貸すなというお話でした」

「それを打ち切るとか、そういう脅しを受けたのか?」
 俺は頭に来た。

「いえいえ、そんな話はありませんでしたよ。それに、成績だけなら僕は自信がありますから。ただ、剣術がちょっと……」

「剣術なんてとっているのか」
 俺は驚いた。

「ええ。必修なので」

 うらやましい。うらやましいぞ。

「俺が代わりに出たらダメかな?」

 単位をすべて落とした伝説のローレンスなら、もう一度受けられるのでは……あれ、なぜ今年その授業が受けられないのだろうか?

 俺はドネイ先生に交渉しに行った。

「剣術、ですか? 貴方はあの授業の単位はとれていますよ。ローレンス」

「えええ? そうなのですか?」

「出席率は……貴方にしては上出来ですね」

 まさかのローレンス、剣術の単位を取っていた? 
 あれ、でも、イーサンはローレンスがそんな授業全く出ていなかったといっていなかったか?

「イーサンは上級者ですので、初級剣術には出ていませんよ。それに、平民と合同クラスで人気がないクラスですからね」

 ローレンスは平民も大嫌いだったはずなのに。なぜだ?

「ほかの剣術の授業を受けるというのはできませんか? 魔法学の代わりに」

 ドネイ先生は諭すような笑顔を浮かべた。

「今のあなたの成績を考えると、今の時間割で頑張る必要があると思いますよ。剣術は来年にでも取れますからね。いけませんよ、ローレンス。苦手な科目から逃げるのは」

 疑問はイーサンが応えてくれた。

「あの授業は、上級生が下級生に剣術を指南する授業なんだよ。なんというか、親睦を兼ねて? 去年は王族自ら指南するということで、ラークも受けていたんだよ」

「王族自ら……それは厳しい指導だな。死人が出そうだ」

 俺は兄貴の指導を思い出した。兄貴の愛の指導は小さいころから慣れている俺ですら逃げ出したくなるものだった。早くあの指導について行けるようになりたいとずっとおもっていたものだ。

「?? 平民を王族方の相手にすることはできないだろう?」

「ふーん、そこでローレンスは第一王子と組んでいたんだな?」

「第一王子? アーサー様と? 違うぞ。ラークはフェリクス様の組だった」

「え? フェリクス様ってあの変態野郎? あいつがローレンスに剣術を教えていたのか?」
 俺は驚いた。
「あいつ、剣を使えるの?」

「……また、不敬なことをいう」
 イーサンが文句をつけた。
「そりゃあ、アーサー様には劣るかもしれないが、フェリクス様も剣術をたしなんでおられる。少なくとも、ラークよりはずっと実力は上だったぞ」

「俺はあいつに教わるのは嫌だぞ。気持ち悪い」
 ちょっと殴られたくらいでいつまでも根に持つ奴は嫌いだ。

「誰も君に教えるとはいっていない。それにあの授業は親睦だといっただろう。剣術の真似事をするだけ。本来は貴族階級と平民の差をなくすとか何とかという目的だったみたいだけれどね」

 俺の授業で気晴らしをしたいという願いはかなえられなかった。イーサンはよい先生だと思うが、他の人の帝国剣術も知りたかったのに。

 仕方なく、俺は夜も座学に励んだ。結界のことを知るためには、まずは基礎から。そういってノートの束をリーフは貸してくれた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

転生聖賢者は、悪女に迷った婚約者の王太子に婚約破棄追放される。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 全五話です。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい

雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。 延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

処理中です...