VMW部

もちぃ

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助っ人

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翌日。明日がVMWの公式大会。

部員を集めることに関しては優希さんさんに頼りっきりのため、今の僕に出来ることは少しでもVMWをプレイし、明日に備えることだけだ。

というわけで、昼休みの時間もVMWに打ち込む。空腹により悲鳴を上げるお腹をさすりながら部室に到着。ガラリと扉を開ける。

「おう、遅かったじゃねーか。」

「…優希さんさん?こんな時間から何してるの?」

僕より先に優希さんさん部室に到着していた。相変わらず可愛らしい顔をしている。

部室内、コンピュータルームは僕がまとめたはずのVMWについての資料が山積みとなっており、荒れに荒らされていた。少し前に掃除したばかりだというのに。そんな僕の不満に気づかず、優希さんさんは読み終えた資料をひょいと床に投げつける。ファイルで止めていた資料が外れ、地面にバラバラになってしまう。

「…ねぇ。一人暮らし大学生の汚部屋かってくらい散らかってるんだけど?」

「いや、ゴミ屋敷だろ。全く、こんな汚いと部活どころの話じゃねぇよな。」

「うん、他人事みたいに言ってるけど君がこうしたんだけどね?」

「…!?」

「…いつの間にオレにそんな力が!?って言いたげな表情で両手を見つめるな!確信犯だろ!」

優希さんさんは我関せずの構えで棚から新しい資料を引っ張り出して読み始めたので、仕方なく僕が資料を整理し、床に散らばった資料をまとめる。

「かるぅくVMWのことについて研究してたんだけどよ。いやはや、知れば知るほどおもしれぇな。朝から読み込んじまったよ。もっと早く知っておきたかったぜ。」

「へぇ…興味を持ってくれてるなら…え?朝から?授業は?」

「教師の退屈な話聞くくらいなら自分で勉強した方がマシだよ。」

退屈って…まぁ、正直教師の当たり外れはあるけどさ。そんなんだから学園長に目をつけられるんだよ。ちなみに僕も勉強は得意な方だ。英語を除いて。

まぁ、テスト期間中もほとんどの生徒が部活に行っているため単純に勉強時間の差の気もするけれど…。

「とりあえず、VMWプレイしてみる?」

ようやく資料を集め終えたので、優希さんさんにそう提案する。今すぐにでもVMWに潜って彼女にVMWの感覚を身につけてもらいたい。優希さんさんはずぶの素人だ。少しでも実践に近い練習がしたい。

「まぁ落ち着けよ。先にやることがあるだろ?とりあえずついてこい。」

突然僕の腕を引く優希さん。やること…?

「…は?どこに?あ、学園長に殴り込み?ならちょっと待ってよ。武器を用意するからさ。」

「それもあるけど後回しだ。部員集めだよ。」

「あぁ、そっか。」

僕の腕を引き走りだす優希さんにつられるように僕も走る。あ、なんかこれ学園純愛モノでよく見る光景じゃん、これ。男女の立ち位置逆の気がするけど。



「MPは魔法を撃ち続ければいつかはなくなる。であるなら、MPの量が全員MAX100で同じ、さらに自動回復量も同じな以上、人数差が開けば開くほど、単純な魔力の差ですぐに息切れする。勝利は程遠いだろうな。はっきりいうが、今の戦力じゃ数を揃えただけの小学生相手にも勝てないだろうよ。形だけでもいいからとりあえず人数を揃える必要がある。」

優希さんさんと一緒に、なぜか放送室に辿り着き、放送のセットをしながら彼女が言う。昼休みではあるが放送室は空いていた。

柊星高校は放送部等、文化系の部活はない。放送室も業務連絡の時くらいしか使わないからほとんど利用されていない。

「人数が必要なのはわかるけど…昨日も学園長が言ってたけど、うちはかけもち禁止なんだよ。今になって部活に入ってない子なんていないし。」

「わぁってるよ。ようは入部しなきゃいいんだろ?」

「…?」

「物わかり悪いな。助っ人って形で試合だけ出てもらえればいいんだろ。」

思わず、ぽん、と手を鳴らす。なるほど。各部活から部員をお借りしてVMWに出てもらうわけだ。これなら部活のかけもち禁止というルールを守りつつ、人員を募集できる。若干反則ギリギリな気がするが、何か言われても学園長がなんとかするだろう。

「…それで、どうやって助っ人を集めるの?VMWは知名度ゼロに近いし、明日までに30人は到底集まらないような気がするんだけど。」

「そのための、コレだよ。」

ぽんぽん、と放送室のマイクを叩く。学校中にVMWのことを放送するのだろうか。

しかし…それだと僕が今までやっていた勧誘活動と変わらないのでは?興味すら持たれていないのに放送をするメリットはない気がする。一体優希さんはどうやって放送するというのだろうか。

「マイクをオンにして全教室に行き渡るようにしろ。ウン、コホン。あー、あー。」

不安は残るが言われるがままに設定をする。といっても、僕も放送室を使うのは初めてだ。コレで合ってると思うけど…。

優希さんは何度も何度も発声練習をしている。緊張しているのだろうか。こういうところだけ見ていると可愛いんだけどなぁ。優希さんが大きく息を吸う。

「みなさぁん!こんにちはぁ!」

優希さんが元気いっぱいにマイクに向かって話す。俗に言う、アニメ声、というやつだろうか。なんというか、すごく可愛い。いつもと違う調子の喋り方にあんぐりとしてしまう。

「優希はぁ、VMW部に所属している、織田優希って言いまぁす!明日はついにVMW部はじめての公式大会!…だけど部員さんが足りなくて、試合に勝てそうにないの…。」

先ほどの元気いっぱいの様子とは打って変わって、今度は弱々しい、助けてあげたくなるような声だ。声の使い分けが上手い。声優の才能があるなこの子。

「だからお願い!明日の試合、助っ人っていう形で参加してくれないかなっ。活躍してくれたら、ご褒美、あげちゃうかもっ。それじゃあ、今日の放課後、VMW部の部室で待ってまーす。またねっ。」

優希さんが手で放送を終えるよう合図をする。初めて使用するもんだからよく分からないけど…これで終えられたはずだ。

「ふぅ、ま、こんなもんかな。」

「…あれ?さっきの美少女はどこ?」

「あひゃひゃ!お前まで騙されてどうするんだ。オレだよ。」

「嘘だ!さっきの女の子はそんな汚い笑い方をしないぼげぇ!顔面が陥没したような痛みがぁ!ただでさえ凹凸のない顔がさらに真っ平にぃ!」

「…二度と笑い方を馬鹿にするんじゃねーよ。」

痛みに転げ回る僕をぐりぐりと踏みつける優希さん。そういえば笑い方は地雷だった。顔面の痛みがじわじわと広がっていく。

「それにしても、今の放送で助っ人なんて集まるのかな。彼らも自分の部活の練習はあるだろうし。」

「まぁ大丈夫だろ。男は女のお願いに弱いからな。部活に打ち込んで女と遊ぶ機会なんてないだろうし、女に飢えたサルばかりのはずだ。ま、放課後になればどうなるか、分かるだろうよ。」

そんな簡単に行くのだろうか。若干の不安材料を残しつつ、放課後を待った。
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