枢軸特急トルマリン=ソジャーナー 異世界逗留者のインクライン

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エトワール・ノワールの燭光② 鬼畜のコラボレーション

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 ■ 枢軸特急蜂狩・聖イライサニス学園地下直通線 カルチェラタン駅(承前)

「はぐらかすのは終わりにしましょう。隠し事をするなんて……私たち、そういう関係だったんですか?」
 長谷江は愛人である立場を利用して祥子を揺さぶった。何としてでも幽霊列車の秘密を教えねば別れるとまで言い切った。祥子としては別に交際を持ち掛けたわけでもないので、脅迫まがいの行動に出られても戸惑うばかりだ。しかし、荒井風吹と自分の関係を釈明せねば、あらぬ誤解がかかってしまう。そして、異世界逗留者に課せられる鋼鉄の規律――機密保持は絶対だ。トラブルが津波となって押し寄せる。祥子は息が詰まりそうになった。
「貴女たち、そこでなにをやっているの? 下校のチャイムが聞こえなかったの?」
 窮地を救ったのは荒井風吹その人だ。腕組みをして階段の上から睨みつけている。
「「「先生」」」
 三人は雷に打たれたように静まり返った。
「わ、私たち、鉄道同好会を結成したんです」
 長谷江はしどろもどろに答えた。そんな彼女の動揺を風吹は敏感にとらえた。教師という優位性を活かして主導権を握る。
「ホールの使用許可申請は出てないわ。さっさと寮に戻りなさい」
 一喝されて、三人はすごすごとカルチェラタンを後にした。長谷江は絶対に暴いてやると言いたげにシャッターを見やった。祥子は何か言いたげだったが、風吹はあえて目を合わせなかった。誤解を解くための配慮が却って仇となる
 学園の女子寮は個室と相部屋が半々ずつある。部屋は学校側が状況に応じて割り当てる。祥子はこれまでの経緯から個室を与えられている。部屋に戻り、カバンを降ろすとセーラー服のまま食堂に向かう。寮内では起床から就寝まで制服着用が義務付けられている。風呂あがりも制服のままだ。特に気温が高い夏場は半袖シャツとブルマ着用が許される場合もある。
 給食当番が厨房からシチュー鍋を受けとり、アルミのボウルに装っていく。祥子は御飯係であったが、クラスメイト達は炊飯ジャーを渡さなかった。幽霊列車と荒井先生の妖しい噂はすでに蔓延しており、女生徒はこぞって祥子を無視している。
 祥子は針の筵に座ってシチューを口に運んだ。砂の混じった段ボールを噛んでいるようで、味気ない。咀嚼している間じゅう、彼女は自身の境遇を呪った。
「やっぱり、ここにもボクの居場所はないんだ。異世界逗留者になるんじゃなかった。死にたい」
 そんな自己憐憫を繰り返していると、風吹が向かいの席に座った。
「祥子! いつまでウジウジしているの? リンドバーグのまた壁が動き出したわ!」
 声にならない声が耳を弄した。
「この言い回し……あなた、いや、ハーベルト?!」
 ぎゅっと心臓を鷲づかみにされた。対面といめんで閣下がニコニコ笑っている。いつのまに風吹と入れ替わったのだろう。本当に彼女とハーベルトは瓜二つだ。祥子の考えを見抜いたようにハーベルトが口を開いた。
「些細な事にうつつを抜してる場合ではないわ。トワイライトエクリプスのダイヤが大幅に乱れているのよ」
「しっ、声が大きいよ」
 秘匿義務が台無しだ。祥子がハーベルトの無頓着を注意しようとして食堂内の異常に気付いた。隣の席の女生徒が青ざめた顔で固まっている。周囲を見回すと、彼女だけでなく全員が静止している。
「外套が効いているわ。えっと、枢軸特急の偽物ぱちもんが現れた話は済んだかしら?」
 ハーベルトが何事もなかったように続ける。
「聞いてないよ。それに、ボクは異世界逗留者を辞めたいんだ。列車の事で弄られるし、荒井先生まで巻き込んじゃって、もうたくさんだよ!」
 悲痛な叫びをハーベルトは聞き流した。そして、忘れかけていた現実を突きつける。
「ご両親を半身不随にした連中を放っておくの?」
「捜査は警察の仕事だろ。ボクは女の体でいたくないんだ。もうボクに構わないで。でなきゃ、死ぬ」
 涙ながらに訴えている祥子。その瞳をじっと見据え、ハーベルトは考え込んだ。そして、ふっと肩の力を抜く。
「……そう。貴女がそういうのなら、荒井先生と二人で戦うわ」
 ハーベルトは顔を曇らせると、踵を返して寂しそうに立ち去った。
 そして、どっと喧騒が戻ってきた。長テーブルの上は茶わんや皿でごった返している。お腹を空かせた女生徒がお替りを求めて押し寄せる。
「列を乱す人はお替りできません」「ちゃんと並んでください」 給食係たちは声を嗄らして整列作業に当たる。
「藤野さん! ちょっと、藤野さん?!」
 茫然としていると後ろから声をかけられた。振り向けば二年生の鈴川なるみが目を逆三角形にしている。
「あなたも給食当番でしょ? ちゃんと仕事してよね!!」
 思いっきり叱られた。
「ごめんなさい。考え事してたんだ」
「考えるも何も、行列を正すのよ。何も難しいことはないわ」
 なるみは太ったクラスメイトを華奢な手で押しのけた。
「キミは列車の事を気にしてたんじゃないの?」
「は? 列車? 列車じゃなくてギョーレツ! お前、頭おかしいの?」
 彼女は幽霊列車騒動じたいに関心が薄かったらしく、色気より食い気を爆発させる。
 ハーベルトは枢軸特急にまつわる疑問を目撃者の記憶から消し去ったように思えた。それなら、なぜ回りくどい方法を取ったのか。祥子は思い悩む暇もなく、生徒たちに翻弄された。
 ◇ ◇ ◇ ◇
 夜間中等部の校舎へ向かう夜道は暗い。風吹は安全確保のため、カルチェラタンの厨房を通り抜けていく。すると大型冷蔵庫の扉が開いた。ぎゃっと悲鳴をあげると、ハーベルトに腕をつかまれた。険しい表情をで中に招き入れる。
「びっくりしたじゃないですか?! いきなり」
 風吹が心臓をバクバクさせていると、ハーベルトが「壁」の活動再開を告げた。
「祥子は降りると言って聞かないの。一緒に来てちょうだい」
 有無を言わさぬ姿勢に風吹が憤った。「お断りします。今から、授業があるんです」
 するとハーベルトはとんでもないことを口走った。
「少しくらい遅刻したっていいじゃない」
「ダメです。生徒が待っています。一分一秒たりとも無駄にしない真面目な社会人たちが」
「余裕のない会社員は成功しません。一分ぐらいいいでしょう? 枢軸特急はこの世界とは違う時間軸を走っています」
 風吹は腕時計をチラ見した。
「じゃあ、本当に一分後の時点に戻ってこれるんですか?」
「ええ。あと五十秒。急ぎましょう」
 ハーベルトが冷蔵庫を再び開くと二人分のスペースがあった。ハーベルトが扉の内側を叩くと庫内にネオンサインが溢れた。急激な加速と上下運動を繰り返して、闇が晴れた。周囲の壁が透明になって夜景が流れている。
「ここはどこ?」
 風吹の眼前に渋滞が列をなしている。どうやらクレーン車に吊り下げられているようだ。時速60キロぐらいで車列が流れている。
「阪京高速道路よ。TWX666Ωは港の中央卸売市場駅に停車中」
 風吹はゴンドラの中でスーツジャケットとタイトスカートを脱ぎ、膝上丈のセーラー服に生着替えする。ホームに留萌が待っていた。「それで、『あちら』のダイヤが変わったって、間違いないの?」
 ハーベルトは分厚い時刻表を取り出してハウゼル列車長と突き合わせている。
「はい。臨時増発する模様です。連合軍最高司令部特別専用列車アライド・エクスプレス。くだりALX427ψ。寂寥の漠野行き」ハウゼルは不気味な時刻表を繰る。真っ黒な表紙にクロスボーンが描かれている。
「何、この本、気持ち悪い。デザインセンスを疑うわ」
 風吹が嫌悪するのも無理はない。「これは枢軸の物ではありません。連合の時刻表です」、と留萌。
「連合軍用列車よ。不知火高美を熱力学第二法則の奈落に追放したのは間違いだったわ。二度と這い上がれないと思っていた」
 ハーベルトが悔しそうに言う。
「拾う神がいたんですよ」
 列車長が手短にブリーフィングした。連合が枢軸特急の模造に成功した。彼らは熱力学第二法則の終焉。すなわち、死の世界に異世界軌道を敷設し、乗り入れを開始している。死とはエントロピーの極限状態だ。万物は滅びる運命にあり、そこに至るのはたやすい。
「つまり高美たちは亡くなっているんでしょう? 死んで花実は咲かないわ。連合はどうしてそんな無駄骨を?」
 不思議がる風吹にハウゼルが答えた。
「それを探りに行くんです。アライド・エクスプレスの製造拠点を突き止めて、潰さなくちゃいけない。私たちの使命は何でしたか? 荒井乗務員」
 風吹は即答して見せた。
「運航阻害要因の排除!」

 ■ 

 目から鱗が落ちるという諺があるが、宿命量子色力学者の邨埜純色むらの・ピュアの心境はまさにその通りだ。今まで色彩について自分なりの基礎理論を確立し、その運用方法について通暁している、と自負してきた。ところが、連合から来たという小娘がいとも簡単に打ち砕いてくれた。彼女曰く、ここは地獄の十三番街だという。いわば、目抜き通りだ。なるほど、薄ら寒い空、それらしい荒涼たる地形が一望できる。草一本どころか、赤紫色の毒々しい瘴気が地平線を曇らせている。死の極彩色と呼べばいいか。赤だから興奮、青だから沈静という単純明快な意味づけは何ら成立しない。例えば向こうの小鑓が蛍光ピンクの傘を被っているが、そこからは自己中心的な亡者がバラバラと投げ捨てられている
 。ピンクだから色情であるとか、世俗的な概念が当てはまらない。
「黒は特別な色だといったわね?」
 マドレーヌが「大丈夫かコイツ」と訝し気な眼差しで聞く。
「そうよ。黒というのは自然界に存在しない色なの。正確に色ですらない。白が全ての乱雑を集大成した色であるように、黒は全否定のチャンピオンよ。だから絵具に黒を混ぜるた途端に嘘っぽくなる。黒を使うのは難しいのよ」
 ケラケラと気が触れたようにマドレーヌが笑う。
「だから幼稚なのよ。あなたブラックホールの表面でもそう言えるの? ご存知の通り、ブラックホールの脱出速度は光速度よりも大きい反面、ホーキング輻射という光速度不変の法則にとらわれない……」
「わかったわ。もういい。まさか量子色力学をブラックホールにまで拡張されるとは思わなかった」
 純色は不毛な議論を打ち切った。「それよりも見せたい物って? まさか、これがそうじゃないでしょうね?」
「私が地獄観光の勧誘員じゃないことは承知の通り。貴方が見るべきものはあれよ」
 マドレーヌはかさぶたの様に黒ずんだ丘陵を双眼鏡で覗いた。
「あそこに列車が止まっているでしょう」
 自動追尾トラッキングをオンにしたまま純色に手渡す。
「列車? よく見えないわ。あの暗くて細長いものがそう?」
 純色が返却しようとすると双眼鏡がフォローした。「輪郭強調します」
 今度はくっきりと白い破線で車両が囲まれる。「地獄に公共交通? 死神のウォール街でもあるわけ? 訳が分からない」
 子供だましを鵜呑みにする大人はいない。死後の世界が存在すること自体が眉唾物であるがうえに、ここが地獄だと説明されてもチープなテーマパークに連れてこられたとしか思えない。
「エントロピー増大の法則に逆らおうとして二大陣営が競っているの。世界が滅びる宿命をあの手この手で変えようとしている。私はその一方から来た。連合は無秩序の強行突破ブレイクスルーという戦術を行使しいている。平たく言えば破れかぶれ。あの列車は敵対する枢軸から盗作した物よ。彼らは異世界を渡り歩いて人類滅亡の特効薬を探してる」
「それと死後の世界がどう関係するわけ?」
「厳密にはここは冥界じゃない。第二法則の終局は永遠に凍てつく熱的死の世界よ。再起はない。でもここは負の生命力に満ち溢れている。例えば、あそこにいる百裂鬼の支配層。食欲旺盛で血の気も盛ん。とても冥府の現住生物とは思えない」
 純色は興味なさそうに「ふーん」と唸った。そして憤慨する。
「がっかりした。量子色力学とまったく関係がない。今夜は予約が詰まってるのよ。私の時間を返せ!」
 すると、マドレーヌがエサをぶら下げた。
「ブラックホールの色を知りたいとは思わない? 万物を吸収すると同時に灼熱を噴出する宇宙規模の自己撞着。それと同質の物がここにある。人生の終着駅でありながら、魂の揺籃でもある冥界。つまり、死後の世界は一色じゃない。矛盾という色に満ちている。貴方の理論を発展させる、いい機会だと思うけど」
「着眼点は面白そうだけど、セミナーを放り出してまで取り組むテーマじゃないわ。私はしぼんでしまった人々の手助けができればそれでいい。講習料で食べていくのがやっと。ほとんど手弁当よ」
 純色は面倒くさそうに、ひらひらと手を振ってマドレーヌを遠ざけた。
「それでいいの? 二匹目のドジョウを狙っている奴がごまんといるんだけど。うかうかしていると追い抜かれるわよ??」
 マドレーヌは他人事のように嘯いた。
「宿命量子色力学は簡単にマネできるものじゃないわ。嘴を突っ込もうとしているって何処のバカ?」
「百裂鬼の鬼哭よ。ほら、あそこ」
 純色はうながされて量子オペラグラスを覗き込んだ。列車の前で鬼族と裸の人間が会話している。
「あの女は誰?」
「不知火高美。起業家よ。双眼鏡、読唇して音声出力しなさい」
 マドレーヌがオペラグラスに命じると恐るべき談合が聞こえてきた。鬼哭は種族の中でも知能指数がずば抜けている。冥界の矛盾性に気付いた彼は野心を抱いた。枢軸特急という幸運が転がり込んで、連合というオマケまで現れた。彼らは不死を求めている。そこに鬼哭の利害が一致した。異世界列車をモノにして地獄を脱しようというのだ。完成させるためには、ある技術が必要だ。
 それ見たことか、とマドレーヌがドヤ顔する。
「ブラックホール境界層の二色性を説明する――色力学が欲しいのね」
「自分のピンチを理解できたかしら?」
「私にどうしろと? 理論を墓場に持って行っても、あいつらは独自に完成させるでしょう」
「その逆よ。一刻も早く完成させて、鬼哭を出し抜くのよ。いったん理論が出来上がれば、妨害するのも簡単でしょう」
「必殺技を編み出すみたいに気安く言わないで。アニメヒーローじゃないんだから。それに一朝一夕に完成するもんじゃないわ」
 純色は深刻な問題と受け止めていないようだ。荒涼たる死の世界で鬼どもに何が作れるというのだ。スパコンも粒子加速器もない。
「だから甘いってのよ。無ければ地獄に墜とせばいいじゃん。不知火高美は豊穣世界の出身よ。残してきた遺産と人脈をあなどらない事ね」
 マドレーヌはケラケラと笑い飛ばした。

 ■ 邨埜純色の礼拝堂

「アポイントはお持ちですか? 先生はまだ……。ちょっと、勝手に入らないで! 通報しますよ」
 受付嬢は満艦飾を纏った奇妙な女達に警告した。
「すれば?」
 リーダー格らしい長身のワンピースが憮然と答えた。
「ちょ、ちょっ」
 抵抗もむなしく、受付嬢をガン無視して女どもは純色の部屋に入る。
「運命を色彩で握れるというじゃないか?」
 あとから来た女は小ばかにしたように調度品を見やった。邨埜純色の礼拝所はすべて黒づくめだ。壁や天井に電磁波を吸収する特殊コーティングが施され、床にも足音を打ち消す静謐装置が埋まっている。祭壇は黒檀仕上げで、これも真っ黒だ。闇を損ねる照明や窓の類は一切ない。扉を閉じれば無音の闇が来訪者を覆い隠す。
「なるほど、電磁気的な暗室を設えたのか。それは早計だわね」
 背の低い眼鏡少女が純色の実験機器を弄っている。
「やめなさい!」
 業を煮やした受付嬢が立ちはだかった。
「うるさい!」
 長身女の罵声と乾いた音。黒檀の床に赤黒い液体が広がっていく。受付嬢は最期の力を振り絞って壁際に這いよった。壁の隠しボタンを探り当て、頭をぶつける。

■ 地獄

「――?! ヨリコ?」
 邨埜純色のスカートが激しく振動した。着信履歴に見守り携帯の番号が残っている。メールボックスに写メが届いていた。カメラは研究資料を物色する強盗団を捉えていた。画像認識機能が顔に焦点を当てている。
「生粋のドイッチェラント人よ。枢軸国民。どうする?」
 マドレーヌは判り切った質問を投げた。
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