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社会病理の対流圏(ヘヴンズドア・インサフェイス・オンフットルース)⑨ 地底王国シャンバラにもっとも近い国
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■ ウランウデ
長い長い湖底横断トンネル。胎内のように暗くて湿った坑道を抜けると黒い巨大な頭が車窓に飛び込んできた。世界一大きなレーニン像だ。重さ10トンはくだらない。ブリャート共和国の首都ウラン・ウデはバイカル湖の南岸からモンゴル北部国境に接する広大な街だ。往生特急ウンエントリヒ・アハトアハトは市庁舎の隣に停車した。
「永劫回帰線シベリア鉄道のウランウデ駅よ。そろそろ起きたらどうなの?」
エリスは逆さづりにされたハゲ天使に冷水を浴びせた。満身創痍の女は重苦しいうめき声をあげて身震いする。
「ご自慢のダイマー能力で援軍を呼んだらどうなの? もっとも、ここは交通の要衝。ここからモンゴル分岐線が延びている。枢軸特急が束になって襲ってきても怖くないさ」
エリスはモンゴル国内に駐留しているシノワ勢力をほのめかした。マーサズ・ヴィニャードの消失はワールドクラスを通じて枢軸同盟傘下の類似世界に影響するらしく、「ヘヴンズドア」の地球上でも権力の空白が生じていた。本初始祖世界1986の延長線上――だいたいコード2020あたり――に大国家を築いているシノワ軍は異世界掘削機を使って、ただちに占領軍を送り込んできた。
「いつまで蝙蝠の出来損ないみたいにぶら下がっている気だい。さっさと着替えな」
宇宙人がカロリーメーターを揮うと鋼索が消えた。衣装ケースのうえにどさりと天使が落ちる。半開きのチャックから納衣七條がのぞいている。もともとボロ布をつなぎ合わせて作った法衣だ。エリスも一糸まとわぬ姿になると、腰に褌を巻いた。乳房を隠すように法衣を羽織る。
「何をボーっとしているの。あんたも着るのよ」
荒井吹雪は有無も言わさず尼僧にジョブチェンジさせられた。二人は駅舎のヘリポートから市街の高台を目指した。ウランウデは有数の工業都市だ。航空機工場の滑走路にピカピカの戦闘機が並んでいる。尾翼にエーデルヴァイス海賊団紋章が描かれており、枢軸各国へ出荷される時を待っている。目抜き通りから少し外れるとそこかしこに木造建築が点在している。どれも古びていて軒や窓枠が鮮やかな三原色に塗られている。
「まるで曼荼羅のようだわ」
緑とコンクリートが錯綜したあげく、原色が混合する風景は密教僧が描く文様そのものだ。
吹雪がツルツル頭を振り仰ぐと、エリスが言った。「そうよ。ブリャート共和国は始祖露西亜でも希少な仏教国。ここに日本人のお前を連れてきた理由がある」
「私が仏教徒だから? それだけじゃなさそうね。チベットのお寺らしきものが見えて来たけど、あれも関係あるの?」
「ご明察」
■ ウランウデ郊外 イヴォルガ村村 イヴォルギンスキー・ダツァン
エリスはパイロットに命じて始祖露西亜チベット教の総本山に着陸させた。三重塔の縦横比を誇張して金メッキ仕上げしたような寺院がそびえている。石畳に降りると、プロペラのダウンフォースが吹雪の袈裟をめくった。みっともないヒップがむき出して深々と食い込んだ黒猫褌が丸見えになる。中央霊的仏教委員と名乗る若い尼僧たちが二人を出迎えた。ゲレルトヤー一行が待っているという。
この建物は仏教徒大学を兼ねていて、頭を青々と剃り上げた女子大生たちが、境内を行きかっている。ちょうど托鉢を終えてウランウデ市内から帰ってきた尼僧たちでごった返している。マニ車をカラカラ回して輪廻をカウントしている。こうしてみると日本人の女の子が剃髪しているのとほとんど変わらない。エリスは彼女たちをかき分けて無数の書庫やお堂が立ち並ぶ通りを突き進んでいく。その突き当りに宿坊があった。
「遅かったわね」
スレンは机に経典を広げて作戦を練っていた。ゲレルトヤーはモーリアとリュプヴィーに具体的な指示を与えている。やはりテロの張本人は母親だった。イルクーツクに建設労働者が蝟集している状況を利用して大規模蜂起を画策している。福祉の恩恵にあずかる人々が社会の成功者だと映るように仕向け、不公平感を増大させ、階級闘争を巻き起こす。そうすれば、バイカル湖重水プラント計画は頓挫し、大総統の面目はつぶれ、増幅された憎悪だけが残るだろう。
運命量子色力学の感情素粒子「憤怒」が蓄積する。
いっぽう、ゲレルトヤーはモーリアとリュプヴィーに不正受給の拡大を幇助させる。
「要するにマッチポンプ。バイカル湖を挟んで福祉勝者と極貧世帯の抗争が勃発するわ」
火を放とうとするエリスに荒井吹雪はうんざりした表情を向ける。
「また戦争? 毎回毎回よく懲りないわねぇ。それで今度は何を発掘する気? ビーンスタークが倒れてハイパー核の件は諦めたかと思ったのに」
「今度はお前に手伝って貰うさ。日本人人の強みを存分に活用する」
スレン・オチルバトは故郷を失った痛手をもろともせず、重要プロジェクトを率いている。
「ヤンガードライアス彗星に回りくどい方法で接続しても効率が悪い。ダイレクトにつなぐのさ」
彼女はロマノフ王朝財宝引揚計画の概略を語り始めた。話は第一次大戦までさかのぼる。当時、連合の一員としてドイツ帝国と戦っていたロシアでロマノフ王朝が倒された。実験を握った共産主義者――赤軍はドイツと停戦し、王党派である白軍を弾圧し始めた。怒ったのはアメリカだ。軍資金として旧王朝に莫大な戦費を貸していた。それが革命によって潰えたのだ。白軍は債務を金塊に変えていた。それを持ち出そうと125万人の白軍が8000キロに及ぶ逃避行をつづけたが、赤軍に追い詰められてバイカル湖沿岸で力尽きた。
焦げ付きを恐れたアメリカは黄金を貨車に積み込むところまでは成功した。その行方はようとして知れない。赤軍に日本まで加わったからだ。その日本軍も第二次世界大戦に敗れて、ウラン・ウデに拘留された。
「来るときに見たでしょう? 街の基礎を建設したのはシベリア抑留者よ。そして、バイカル湖には25万人の白軍が眠っている」
聞き終えるころ、荒井吹雪は押しつぶすような圧力を感じた。室内に青白い人影が幾つもちらついているのだ。
「これだけの負の遺産。市民を焚きつけたところで、どうにもならないと思うけど」
ビーンスタークの倒壊ほどエネルギーを得られないという。
するとまってましたと、エリスが写真を取り出した。ブリャート人の即身成仏だ。
「イチゲロフよ。1926年に入滅後30年たったら掘り起こしてくれ、と遺言したの。結果は生前の肌つやを保った『新鮮な死体』としてカムバックし、科学者や宗教法人の人々を驚かせたの」
吹雪はにわかに信じがたかった。しかし、スナップ写真の中に熱力学第二法則の処方箋を見た。
「イチゲロフ?」
長い長い湖底横断トンネル。胎内のように暗くて湿った坑道を抜けると黒い巨大な頭が車窓に飛び込んできた。世界一大きなレーニン像だ。重さ10トンはくだらない。ブリャート共和国の首都ウラン・ウデはバイカル湖の南岸からモンゴル北部国境に接する広大な街だ。往生特急ウンエントリヒ・アハトアハトは市庁舎の隣に停車した。
「永劫回帰線シベリア鉄道のウランウデ駅よ。そろそろ起きたらどうなの?」
エリスは逆さづりにされたハゲ天使に冷水を浴びせた。満身創痍の女は重苦しいうめき声をあげて身震いする。
「ご自慢のダイマー能力で援軍を呼んだらどうなの? もっとも、ここは交通の要衝。ここからモンゴル分岐線が延びている。枢軸特急が束になって襲ってきても怖くないさ」
エリスはモンゴル国内に駐留しているシノワ勢力をほのめかした。マーサズ・ヴィニャードの消失はワールドクラスを通じて枢軸同盟傘下の類似世界に影響するらしく、「ヘヴンズドア」の地球上でも権力の空白が生じていた。本初始祖世界1986の延長線上――だいたいコード2020あたり――に大国家を築いているシノワ軍は異世界掘削機を使って、ただちに占領軍を送り込んできた。
「いつまで蝙蝠の出来損ないみたいにぶら下がっている気だい。さっさと着替えな」
宇宙人がカロリーメーターを揮うと鋼索が消えた。衣装ケースのうえにどさりと天使が落ちる。半開きのチャックから納衣七條がのぞいている。もともとボロ布をつなぎ合わせて作った法衣だ。エリスも一糸まとわぬ姿になると、腰に褌を巻いた。乳房を隠すように法衣を羽織る。
「何をボーっとしているの。あんたも着るのよ」
荒井吹雪は有無も言わさず尼僧にジョブチェンジさせられた。二人は駅舎のヘリポートから市街の高台を目指した。ウランウデは有数の工業都市だ。航空機工場の滑走路にピカピカの戦闘機が並んでいる。尾翼にエーデルヴァイス海賊団紋章が描かれており、枢軸各国へ出荷される時を待っている。目抜き通りから少し外れるとそこかしこに木造建築が点在している。どれも古びていて軒や窓枠が鮮やかな三原色に塗られている。
「まるで曼荼羅のようだわ」
緑とコンクリートが錯綜したあげく、原色が混合する風景は密教僧が描く文様そのものだ。
吹雪がツルツル頭を振り仰ぐと、エリスが言った。「そうよ。ブリャート共和国は始祖露西亜でも希少な仏教国。ここに日本人のお前を連れてきた理由がある」
「私が仏教徒だから? それだけじゃなさそうね。チベットのお寺らしきものが見えて来たけど、あれも関係あるの?」
「ご明察」
■ ウランウデ郊外 イヴォルガ村村 イヴォルギンスキー・ダツァン
エリスはパイロットに命じて始祖露西亜チベット教の総本山に着陸させた。三重塔の縦横比を誇張して金メッキ仕上げしたような寺院がそびえている。石畳に降りると、プロペラのダウンフォースが吹雪の袈裟をめくった。みっともないヒップがむき出して深々と食い込んだ黒猫褌が丸見えになる。中央霊的仏教委員と名乗る若い尼僧たちが二人を出迎えた。ゲレルトヤー一行が待っているという。
この建物は仏教徒大学を兼ねていて、頭を青々と剃り上げた女子大生たちが、境内を行きかっている。ちょうど托鉢を終えてウランウデ市内から帰ってきた尼僧たちでごった返している。マニ車をカラカラ回して輪廻をカウントしている。こうしてみると日本人の女の子が剃髪しているのとほとんど変わらない。エリスは彼女たちをかき分けて無数の書庫やお堂が立ち並ぶ通りを突き進んでいく。その突き当りに宿坊があった。
「遅かったわね」
スレンは机に経典を広げて作戦を練っていた。ゲレルトヤーはモーリアとリュプヴィーに具体的な指示を与えている。やはりテロの張本人は母親だった。イルクーツクに建設労働者が蝟集している状況を利用して大規模蜂起を画策している。福祉の恩恵にあずかる人々が社会の成功者だと映るように仕向け、不公平感を増大させ、階級闘争を巻き起こす。そうすれば、バイカル湖重水プラント計画は頓挫し、大総統の面目はつぶれ、増幅された憎悪だけが残るだろう。
運命量子色力学の感情素粒子「憤怒」が蓄積する。
いっぽう、ゲレルトヤーはモーリアとリュプヴィーに不正受給の拡大を幇助させる。
「要するにマッチポンプ。バイカル湖を挟んで福祉勝者と極貧世帯の抗争が勃発するわ」
火を放とうとするエリスに荒井吹雪はうんざりした表情を向ける。
「また戦争? 毎回毎回よく懲りないわねぇ。それで今度は何を発掘する気? ビーンスタークが倒れてハイパー核の件は諦めたかと思ったのに」
「今度はお前に手伝って貰うさ。日本人人の強みを存分に活用する」
スレン・オチルバトは故郷を失った痛手をもろともせず、重要プロジェクトを率いている。
「ヤンガードライアス彗星に回りくどい方法で接続しても効率が悪い。ダイレクトにつなぐのさ」
彼女はロマノフ王朝財宝引揚計画の概略を語り始めた。話は第一次大戦までさかのぼる。当時、連合の一員としてドイツ帝国と戦っていたロシアでロマノフ王朝が倒された。実験を握った共産主義者――赤軍はドイツと停戦し、王党派である白軍を弾圧し始めた。怒ったのはアメリカだ。軍資金として旧王朝に莫大な戦費を貸していた。それが革命によって潰えたのだ。白軍は債務を金塊に変えていた。それを持ち出そうと125万人の白軍が8000キロに及ぶ逃避行をつづけたが、赤軍に追い詰められてバイカル湖沿岸で力尽きた。
焦げ付きを恐れたアメリカは黄金を貨車に積み込むところまでは成功した。その行方はようとして知れない。赤軍に日本まで加わったからだ。その日本軍も第二次世界大戦に敗れて、ウラン・ウデに拘留された。
「来るときに見たでしょう? 街の基礎を建設したのはシベリア抑留者よ。そして、バイカル湖には25万人の白軍が眠っている」
聞き終えるころ、荒井吹雪は押しつぶすような圧力を感じた。室内に青白い人影が幾つもちらついているのだ。
「これだけの負の遺産。市民を焚きつけたところで、どうにもならないと思うけど」
ビーンスタークの倒壊ほどエネルギーを得られないという。
するとまってましたと、エリスが写真を取り出した。ブリャート人の即身成仏だ。
「イチゲロフよ。1926年に入滅後30年たったら掘り起こしてくれ、と遺言したの。結果は生前の肌つやを保った『新鮮な死体』としてカムバックし、科学者や宗教法人の人々を驚かせたの」
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