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社会病理の対流圏(ヘヴンズドア・インサフェイス・オンフットルース)⑩ 決戦前夜! バイカル湖、波高し
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■ イヴォルギンスキー・ダツァン
その日の夜遅く、オチルバト親子は吹雪をたたき起こした。モーリアとリュプヴィーを伴ってヘリコプターでで宿坊を発った。機内でソバの実を煮た雑炊がふるまわれた。水だけで炊いた日本の粥とは全く違う。山羊の乳に砂糖とこってりしたバターを加えて、かなりくどい。モーリアは口にした途端、むせてしまった。吹雪は酷いトムヤンクンだと思いながら我慢した。食べている内に体がほてってきた。かなり高カロリー高蛋白な食品だ。これもブリャート人の生活習慣なのだろう。
セレンガ川の高台に仮設のヘリポートが設えてあり、すぐ後ろにこんもりとした岩が連なっていた。
「眠れる獅子のダツァンよ」
エリスが暗がりを案内した。それはライトアップされており、何か特別な行事の開催をにおわせる。
見たところ、ライオンが臥せっているような地形だ。斜面を回り込むと大きな洞窟があり、奥の寺院からくぐもった声が聞こえてきた。
こんな夜中に何の祈りをささげているのか。
ダツァンとはブリャート語で仏教寺院を意味する。赤を基調とした建物は日本の古都を思わせる。吹雪は著しいデジャヴに襲われて、位置感覚が麻痺した。僧侶たちの会話に日本語ではない発音を聞いて、ようやく異世界にいるのだと再認識できたほどだ。それほどまでにブリャート人は日本人に酷似している。有力な学説によるとここは縄文人発祥の地であるという。荒井吹雪が日本人であることがキーパーソンである理由だとスレンは語った。だが、一介の新任教員である自分にどんな貢献が出来るというのか。か弱い女が多くを求められる場合、それは血か快楽の提供でしかない。嫌な予感がして吹雪がスキンヘッドを震わせた。ダツァンは大分裂の後に尼僧院に改築されており、男の住職
はいない筈だ。破戒僧が君臨しているのでなければ、生贄として贖われるのか。彼女は不安が喉まで出かかったが、読経にかき消された。
「もうすぐ、遭えるわ」
スレンの一行は松明を消して、足音を潜めた。息を殺してしずしずと参道を歩む。
そして、闇に閉ざされた洞窟の奥に「熱力学第二法則」を打ち破る奇跡が息づいていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あれが……ロシア密教の師?」
吹雪はあまりの異様さに言葉を失った。
茶褐色のミイラがオレンジ色の鮮やかな布一枚をまとい、結跏趺坐を組んだまま、半開きで睨んでいる。その眼光は精機に満ち溢れており、威圧感が半端ない。思わず顔を背けようとしても、視線が追いかけてくるばかりか、心を無理やりにこじ開けて、踏み込んでくる。
仏教徒でないモーリアはどうして吹雪が縮こまっているのか不思議でならない。リュプヴィーに至っては「これ、死んでるんでしょ?」と不躾な質問をするありさまだ。
中央霊的仏教委員会の若い尼僧たちは、「ええ、医学的には」と認めた。だが、教義上は「彼は生きている」という。
「ご覧ください。右手を挙げて、左手で経典を支える格好をしています。これは瞑想中のポーズです。彼は非常に深い思策を続けているのです」
強弁する姿勢に小学校教諭としての使命感が刺激された。荒井はあえて空気を読まずに反論した。
「わたしは教師です。あなたがたの信仰心を踏みにじる意図はありませんが、世間一般の常識に照らして、彼は死んでいると断言できます」
すると、エリスが長々と吐息した。沈黙のあと、憐れむように口を開いた。
「異世界逗留者らしくないわね。よもや、幽子情報系のことは忘れたわけじゃないでしょ?」
「――! じゃあ、イチゲロフは霊魂喪失してないっていうの?」
「そうよ。彼のソウスは、いや、彼自身がはここにいる。ここで『永遠』を瞑想しているのよ」
カロリーメーターをミイラに向けるとバリバリと唸った。QCDが充満している。
「反QCD粒子、節制、救恤、慈悲、忍耐が満ち満ちているわ。イチゲロフはロマノフ王朝の関係者よ。ロシア革命前夜、ロシアの仏教徒は弾圧されていたの。チベット密教は異教徒による弾圧に備えて避難場所を用意しているの。専用のシェルターとも言える異世界……」
そこまで聞いて、吹雪には思い当たった。
「シャンバラ? それって、地底世界シャンバラのことなの?」
「そうよ。チベット教徒は背中にシャンバラを背負っていると言っても過言ではないわ。おまえは月刊ゴンドワナを貪り読んでいて通り一遍の知識は持っている。日本人だし、シャンバラと親和性が高い」
エリスは中央霊的仏教委員に命じて荒井吹雪を拘束させた。あっという間に黒猫褌まで裂かれてイチゲロフの前に吊るされる。
「お前はシャンバラ誘導体の好材料なのさ。モーリアたちがイルクーツク市民を煽る。ブリャート人が抑圧される。大半がチベット教徒だ。総意がシャンバラを求める。民族移動のうねりが生じる」
スレンが歌うように言うと、吹雪はキリキリと歯噛みした。あとは言わずもがなだ。シャンバラの吸引力を利用してロマノフ家の遺産を獲ようというのだろう。急いでハーベルトに知らせねば。ダイマー能力を揮おうとしたが、芳しくない。枢軸特急には戻らず、モーリア達と暮らす腹積もりでいた。その思いが足枷になっている。
どうすればいいのか悩んでいる間にも怪しげな祭壇が搬入され、吹雪の裸体が安置される。見えない力に捕らわれて身動きできない。リュプヴィーはモーリアと出かけてしまった。
”ハーベルト! 鈴がついているのなら答えて!! ハーベルト!!!”
「無駄だよ」
心の叫びを見透かしたようにエリスが咎めた。
「お前は教師の癖に物忘れが激しいね。力づくで奪い返すのなら、歓迎すると言っておやり」
女教師の裸体に大きな影がさした。地底王国の住民、ネフィリムがじっと覗き込んでいた。
■ バイカル湖
「――離脱しろ! ひっくり返るぞ!!」
言葉を理解する前に大揺れが来た。
眩しいばかりのサーチライトが湖面を照らす。どてポキぐしゃっと複雑骨折したような不協和音が鼓膜を震わせる。
「うわ。世も末だぁ」
「死ぬ! もう、死ぬ!!」
「わぁ、死んだ、死んだ」
「ばか! さっさと逃げないと、本当に死ぬわよ!!」
月明かりにセーラー服が舞い散り、鋼鉄のステージでつかの間のファッションショーが開幕する。
ビキニ姿の異世界逗留者たちが波間に浮かぶ。
「沈埋函を異世界にぶち込むなんて、ムチャクチャにも程があるわ」
彼女が毒づくと、さあっと閃光がよぎった。ちんまいかんとはトンネル建設工法の一種で、あらかじめ建造した鋼鉄の箱を水の底に埋設するやり方だ。トンネルを掘削するより工期が短縮できる。
あろうことか、ハーベルトは潜水空母を送り込む代わりに、「オモチャ」を沈埋函に詰め込んだのだ。ざあっと波しぶきをかき分けて、戦艦入りのケーソンが浮上した。鋼板が外れ、ノーザンプトンが雄姿をあらわした。
その日の夜遅く、オチルバト親子は吹雪をたたき起こした。モーリアとリュプヴィーを伴ってヘリコプターでで宿坊を発った。機内でソバの実を煮た雑炊がふるまわれた。水だけで炊いた日本の粥とは全く違う。山羊の乳に砂糖とこってりしたバターを加えて、かなりくどい。モーリアは口にした途端、むせてしまった。吹雪は酷いトムヤンクンだと思いながら我慢した。食べている内に体がほてってきた。かなり高カロリー高蛋白な食品だ。これもブリャート人の生活習慣なのだろう。
セレンガ川の高台に仮設のヘリポートが設えてあり、すぐ後ろにこんもりとした岩が連なっていた。
「眠れる獅子のダツァンよ」
エリスが暗がりを案内した。それはライトアップされており、何か特別な行事の開催をにおわせる。
見たところ、ライオンが臥せっているような地形だ。斜面を回り込むと大きな洞窟があり、奥の寺院からくぐもった声が聞こえてきた。
こんな夜中に何の祈りをささげているのか。
ダツァンとはブリャート語で仏教寺院を意味する。赤を基調とした建物は日本の古都を思わせる。吹雪は著しいデジャヴに襲われて、位置感覚が麻痺した。僧侶たちの会話に日本語ではない発音を聞いて、ようやく異世界にいるのだと再認識できたほどだ。それほどまでにブリャート人は日本人に酷似している。有力な学説によるとここは縄文人発祥の地であるという。荒井吹雪が日本人であることがキーパーソンである理由だとスレンは語った。だが、一介の新任教員である自分にどんな貢献が出来るというのか。か弱い女が多くを求められる場合、それは血か快楽の提供でしかない。嫌な予感がして吹雪がスキンヘッドを震わせた。ダツァンは大分裂の後に尼僧院に改築されており、男の住職
はいない筈だ。破戒僧が君臨しているのでなければ、生贄として贖われるのか。彼女は不安が喉まで出かかったが、読経にかき消された。
「もうすぐ、遭えるわ」
スレンの一行は松明を消して、足音を潜めた。息を殺してしずしずと参道を歩む。
そして、闇に閉ざされた洞窟の奥に「熱力学第二法則」を打ち破る奇跡が息づいていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あれが……ロシア密教の師?」
吹雪はあまりの異様さに言葉を失った。
茶褐色のミイラがオレンジ色の鮮やかな布一枚をまとい、結跏趺坐を組んだまま、半開きで睨んでいる。その眼光は精機に満ち溢れており、威圧感が半端ない。思わず顔を背けようとしても、視線が追いかけてくるばかりか、心を無理やりにこじ開けて、踏み込んでくる。
仏教徒でないモーリアはどうして吹雪が縮こまっているのか不思議でならない。リュプヴィーに至っては「これ、死んでるんでしょ?」と不躾な質問をするありさまだ。
中央霊的仏教委員会の若い尼僧たちは、「ええ、医学的には」と認めた。だが、教義上は「彼は生きている」という。
「ご覧ください。右手を挙げて、左手で経典を支える格好をしています。これは瞑想中のポーズです。彼は非常に深い思策を続けているのです」
強弁する姿勢に小学校教諭としての使命感が刺激された。荒井はあえて空気を読まずに反論した。
「わたしは教師です。あなたがたの信仰心を踏みにじる意図はありませんが、世間一般の常識に照らして、彼は死んでいると断言できます」
すると、エリスが長々と吐息した。沈黙のあと、憐れむように口を開いた。
「異世界逗留者らしくないわね。よもや、幽子情報系のことは忘れたわけじゃないでしょ?」
「――! じゃあ、イチゲロフは霊魂喪失してないっていうの?」
「そうよ。彼のソウスは、いや、彼自身がはここにいる。ここで『永遠』を瞑想しているのよ」
カロリーメーターをミイラに向けるとバリバリと唸った。QCDが充満している。
「反QCD粒子、節制、救恤、慈悲、忍耐が満ち満ちているわ。イチゲロフはロマノフ王朝の関係者よ。ロシア革命前夜、ロシアの仏教徒は弾圧されていたの。チベット密教は異教徒による弾圧に備えて避難場所を用意しているの。専用のシェルターとも言える異世界……」
そこまで聞いて、吹雪には思い当たった。
「シャンバラ? それって、地底世界シャンバラのことなの?」
「そうよ。チベット教徒は背中にシャンバラを背負っていると言っても過言ではないわ。おまえは月刊ゴンドワナを貪り読んでいて通り一遍の知識は持っている。日本人だし、シャンバラと親和性が高い」
エリスは中央霊的仏教委員に命じて荒井吹雪を拘束させた。あっという間に黒猫褌まで裂かれてイチゲロフの前に吊るされる。
「お前はシャンバラ誘導体の好材料なのさ。モーリアたちがイルクーツク市民を煽る。ブリャート人が抑圧される。大半がチベット教徒だ。総意がシャンバラを求める。民族移動のうねりが生じる」
スレンが歌うように言うと、吹雪はキリキリと歯噛みした。あとは言わずもがなだ。シャンバラの吸引力を利用してロマノフ家の遺産を獲ようというのだろう。急いでハーベルトに知らせねば。ダイマー能力を揮おうとしたが、芳しくない。枢軸特急には戻らず、モーリア達と暮らす腹積もりでいた。その思いが足枷になっている。
どうすればいいのか悩んでいる間にも怪しげな祭壇が搬入され、吹雪の裸体が安置される。見えない力に捕らわれて身動きできない。リュプヴィーはモーリアと出かけてしまった。
”ハーベルト! 鈴がついているのなら答えて!! ハーベルト!!!”
「無駄だよ」
心の叫びを見透かしたようにエリスが咎めた。
「お前は教師の癖に物忘れが激しいね。力づくで奪い返すのなら、歓迎すると言っておやり」
女教師の裸体に大きな影がさした。地底王国の住民、ネフィリムがじっと覗き込んでいた。
■ バイカル湖
「――離脱しろ! ひっくり返るぞ!!」
言葉を理解する前に大揺れが来た。
眩しいばかりのサーチライトが湖面を照らす。どてポキぐしゃっと複雑骨折したような不協和音が鼓膜を震わせる。
「うわ。世も末だぁ」
「死ぬ! もう、死ぬ!!」
「わぁ、死んだ、死んだ」
「ばか! さっさと逃げないと、本当に死ぬわよ!!」
月明かりにセーラー服が舞い散り、鋼鉄のステージでつかの間のファッションショーが開幕する。
ビキニ姿の異世界逗留者たちが波間に浮かぶ。
「沈埋函を異世界にぶち込むなんて、ムチャクチャにも程があるわ」
彼女が毒づくと、さあっと閃光がよぎった。ちんまいかんとはトンネル建設工法の一種で、あらかじめ建造した鋼鉄の箱を水の底に埋設するやり方だ。トンネルを掘削するより工期が短縮できる。
あろうことか、ハーベルトは潜水空母を送り込む代わりに、「オモチャ」を沈埋函に詰め込んだのだ。ざあっと波しぶきをかき分けて、戦艦入りのケーソンが浮上した。鋼板が外れ、ノーザンプトンが雄姿をあらわした。
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