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世界文明瀑布(グレートスタジアンアビス)① 遡及、秋霧の島! 追記
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■ ドンファン池(承前)
それは一瞬の出来事で、しかも彼女は悪運に見放されていた。銃弾は一発だけでなく間断なく撃ち込まれ、その初速度は秒速六百メートルあまり。シュトゥアムゲヴェーア44自動小銃は数十メートル離れた氷塊の影から暗殺対象に向けられていた。
安っぽい連続活劇のような嘘くさい闖入者やご都合主義的なトラブルは一切、期待できない。凶弾は狙いたがわずハーベルトを貫いた。
だが――。
「ハーベルト!」
祥子が遅ればせながら、タイマー能力で銃撃をはじいた。ハーベルトの後ろで野営テントが蜂の巣になっている。弾痕がくすぶり、硝煙が立ち上っている。それはハーベルトの胸を透かすようにたなびいている。
「そ、そんな……まさか?!」
パンセは遮蔽物から顔を出し、StG44をひとしきり点検する。そして、もう一度連射した。
「祥子。防護結界を解きなさい」
「だって……」
「いう事を聞きなさい!」
ハーベルトは有無を言わさすダイマー能力をキャンセルした。数百発の7.6ミリ弾がハーベルトを貫通する。しかし、彼女は平然としている。
「――ッ?!」
間抜けな暗殺者は疑問と苦悶の入り混じった呻きをあげる。
「――やめなさい。無駄です。お互いに自分たちが何者かわかっているはずでしょう?」
二人の間には祥子が知り得ぬ暗黙の了解があるようだ。パンセ銃身をさげ、激しくかぶりを振る。
「そんな、そんな……」
そして、地面にへたり込んだ。
「ハーベルト。キミは前にも国会議事堂の地下駅で同じことをしたよね。キミはいったい何者なの?」
祥子が怪訝そうに尋ねると、ハーベルトはムッとした。
「祥子、後ろを向きなさい。見ちゃだめよ」
そういうと、強引に腕を引っ張って回れ右させた。ごうっと吹雪が吹き付け、ハーベルトのウイッグが揺れる。さらにプリーツスカートがへその上までめくれ上がる。ハーベルトはブルマーのポケットから紙片を取り出した。凛とした声で読みあげる。
「帰ったら為政者に伝えなさい。スタインハート=テュロックモデルとバウム=フランプトンモデル。議論の余地はないし、選択を試す時間の無駄だと!」
それだけ言うと、パンセは逃げるように立ち去った。氷山の向こうからAC-47がヨタヨタと昇っていく。ハーベルトは追撃を命じることもなく、口を真一文字に結んで、目じりを輝かせた。
「ハーベルト、どういうことなの? なぜ、逃がしちゃうの?」
矢継ぎ早の質問にハーベルトは険しい表情で答えた。
「貴女が大人の階段をのぼる時にわかるわ。もうじきよ。でも、その前にさよならを言わなくちゃいけない」
「そんな……さよならだなんて……」
祥子の不安を物語るように大地が大きく揺れた。機関車が汽笛を鳴らし、ハウゼルがダイマー共有聴覚でアナウンスする。
「急いでください。ラーセン・マグナコアの自己免疫力が弱まっています。ワールドクラスに乱れが生じ、地球平面説を支えきれなくなってます」
ドスンと突き上げる予震で祥子はシュワニーシーの最後を思い出した。
「ハーベルト。この世界もヨーゼフがいなくなったせいで壊れちゃうの?」
おどおどする祥子。ハーベルトは答えず、手元の翡翠タブレットを叩いている。
「――たいへん! 異論人たちがディグロッケに介入して埋蔵資源を煽ってる。確率変動エネルギーをありったけ注入してるわ!!」「ボクたちのせいでこの世界の人々が殺されちゃうの? だったら、ぐずぐずしないで出発しようよ」
「そうじゃないのよ。彼らはヨーゼフの野望を達成しようとしている。これはとんでもないことよ」
ハーベルトのタブレットにはホットケーキのような地球が描かれている。南極の一点に細長いビームが流し込まれ、波紋が宇宙にまで広がっている。それは回転ノコギリのように旋回しながら、大分裂後に生じた異世界を大木を切り倒してしまうように切断している。さすがにその状況はハーベルトも想定していなかったようだ。
「これって、あらゆる異世界が真っ二つにされちゃうってこと?」
「そうよ。異論人は『地球平面説』そのものを巨大な旋盤に仕立てて、世界を両断しているの。祥子の世界も無事ではすまないわ」
「ハーベルト。どうするんだよ!」、と祥子。
「危険だけど、方法が一つだけあるわ。ディグロッケは『レコード針』でもあるの。アカシックレコードに落着させれば、地球平面説を相殺するだけの波紋が生じる。祥子、撃ち落としにいくわよ。」
ハーベルトはそう言うと、機関車に乗り込んだ。
それは一瞬の出来事で、しかも彼女は悪運に見放されていた。銃弾は一発だけでなく間断なく撃ち込まれ、その初速度は秒速六百メートルあまり。シュトゥアムゲヴェーア44自動小銃は数十メートル離れた氷塊の影から暗殺対象に向けられていた。
安っぽい連続活劇のような嘘くさい闖入者やご都合主義的なトラブルは一切、期待できない。凶弾は狙いたがわずハーベルトを貫いた。
だが――。
「ハーベルト!」
祥子が遅ればせながら、タイマー能力で銃撃をはじいた。ハーベルトの後ろで野営テントが蜂の巣になっている。弾痕がくすぶり、硝煙が立ち上っている。それはハーベルトの胸を透かすようにたなびいている。
「そ、そんな……まさか?!」
パンセは遮蔽物から顔を出し、StG44をひとしきり点検する。そして、もう一度連射した。
「祥子。防護結界を解きなさい」
「だって……」
「いう事を聞きなさい!」
ハーベルトは有無を言わさすダイマー能力をキャンセルした。数百発の7.6ミリ弾がハーベルトを貫通する。しかし、彼女は平然としている。
「――ッ?!」
間抜けな暗殺者は疑問と苦悶の入り混じった呻きをあげる。
「――やめなさい。無駄です。お互いに自分たちが何者かわかっているはずでしょう?」
二人の間には祥子が知り得ぬ暗黙の了解があるようだ。パンセ銃身をさげ、激しくかぶりを振る。
「そんな、そんな……」
そして、地面にへたり込んだ。
「ハーベルト。キミは前にも国会議事堂の地下駅で同じことをしたよね。キミはいったい何者なの?」
祥子が怪訝そうに尋ねると、ハーベルトはムッとした。
「祥子、後ろを向きなさい。見ちゃだめよ」
そういうと、強引に腕を引っ張って回れ右させた。ごうっと吹雪が吹き付け、ハーベルトのウイッグが揺れる。さらにプリーツスカートがへその上までめくれ上がる。ハーベルトはブルマーのポケットから紙片を取り出した。凛とした声で読みあげる。
「帰ったら為政者に伝えなさい。スタインハート=テュロックモデルとバウム=フランプトンモデル。議論の余地はないし、選択を試す時間の無駄だと!」
それだけ言うと、パンセは逃げるように立ち去った。氷山の向こうからAC-47がヨタヨタと昇っていく。ハーベルトは追撃を命じることもなく、口を真一文字に結んで、目じりを輝かせた。
「ハーベルト、どういうことなの? なぜ、逃がしちゃうの?」
矢継ぎ早の質問にハーベルトは険しい表情で答えた。
「貴女が大人の階段をのぼる時にわかるわ。もうじきよ。でも、その前にさよならを言わなくちゃいけない」
「そんな……さよならだなんて……」
祥子の不安を物語るように大地が大きく揺れた。機関車が汽笛を鳴らし、ハウゼルがダイマー共有聴覚でアナウンスする。
「急いでください。ラーセン・マグナコアの自己免疫力が弱まっています。ワールドクラスに乱れが生じ、地球平面説を支えきれなくなってます」
ドスンと突き上げる予震で祥子はシュワニーシーの最後を思い出した。
「ハーベルト。この世界もヨーゼフがいなくなったせいで壊れちゃうの?」
おどおどする祥子。ハーベルトは答えず、手元の翡翠タブレットを叩いている。
「――たいへん! 異論人たちがディグロッケに介入して埋蔵資源を煽ってる。確率変動エネルギーをありったけ注入してるわ!!」「ボクたちのせいでこの世界の人々が殺されちゃうの? だったら、ぐずぐずしないで出発しようよ」
「そうじゃないのよ。彼らはヨーゼフの野望を達成しようとしている。これはとんでもないことよ」
ハーベルトのタブレットにはホットケーキのような地球が描かれている。南極の一点に細長いビームが流し込まれ、波紋が宇宙にまで広がっている。それは回転ノコギリのように旋回しながら、大分裂後に生じた異世界を大木を切り倒してしまうように切断している。さすがにその状況はハーベルトも想定していなかったようだ。
「これって、あらゆる異世界が真っ二つにされちゃうってこと?」
「そうよ。異論人は『地球平面説』そのものを巨大な旋盤に仕立てて、世界を両断しているの。祥子の世界も無事ではすまないわ」
「ハーベルト。どうするんだよ!」、と祥子。
「危険だけど、方法が一つだけあるわ。ディグロッケは『レコード針』でもあるの。アカシックレコードに落着させれば、地球平面説を相殺するだけの波紋が生じる。祥子、撃ち落としにいくわよ。」
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