正義を捕まえた正義

朝香 龍太郎

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ストーカーの後悔

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「誰かいますかー?」
そう言いながら,警察官とその後輩は,部屋の奥へと進んでいく。目の前にはおそらくリビングかダイニングに繋がっているであろう扉がある。
しかもそれも半開きだ。
警察官は嫌な予感がした。
そんな予感も微塵に感じない後輩の警察官は,何も恐れることなく前へ進んでいく。そしてその扉のドアに手をかける。
     ギィィィィー
「ギャァァァァァーーーーー!!!!」
突如として,後輩が悲鳴をあげた。
警察官は,尻餅をついている後輩の方に駆け寄り,後輩の視線の先を見た。

そこには,あの女性がいた。
間違いなく,さっきまでは生きていたセーターの女性だ。

首を吊っていた。
わずかに揺れている。
しかも,笑ったままの息絶えている。
涙も流していない。

笑ったまま硬直しかけた彼女の顔がこちらを向いている。

「こ・・こちら○○。アパートの一室にて女性の首吊り死体を発見。応援頼みます。」
後輩の警察官が、半分裏返ったような声で言う。
「これは・・・・どういうことだ・・・。」
さっきのあの男の言葉が頭をよぎる。

「アイツは自殺したかったんだよ!」
男の言ったことは本当だった!そう確信している中,警察官は彼女の足元に落ちている紙切れを見つけた。それには,血・・?いや,赤のボールペンでこう記されていた。
「10回目にして私の勝ちね。楽しかったよ。」



「おい。アイツはどうだった?!」
警察官に男が詰め寄る。
「・・ダメだった。ついた時にはもう・・。」
「クソっ!!」
「それでだ。お前はこれについて何か知っているか?」
警察官は男に,遺書と思しき紙切れを見せた。
「楽しかったよ。か・・・。」
男は黙り込んだ。一気に気力が抜けたかのように,椅子に座った。

「おい。この10回目って言うのはなんだ?!
     お前とあの女性の間に何があった?」
警察官は男に聞いた。

「・・・わかった。全て話すよ。」
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