素敵なものは全て妹が奪っていった。婚約者にも見捨てられた姉は、「ふざけないで!」と叫び、家族を捨てた。

あお

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 二週間、馬車は順調に旅を続け、明日には隣国の王都に着く。

 今夜は王都の一つ手前の街の宿に泊まり、明日のための準備を行う予定だった。

「大変素晴らしい。この二週間、よく頑張りました」

 令嬢としてのドレスを着て、晩餐会でのマナーを確認し終わって、ロザリーの力が抜けた。

「ご指導、ありがとうございました」

 だがここでへたる訳にはいけない。

 優雅に立ち上がり、ロゼに向かってカーテシーを披露する。

 隣国の一般常識とマナーのみならず、侯爵令嬢として足りないマナーを徹底的にやり直しさせられた。

 侯爵家に世話になるとはいえ、そこまで必要なのか、と考えるのは無駄だ。

 ロゼがやれというのだ。意味があるのだろう。

 事実、伯爵令嬢として培ってきた自信がこてんぱんに叩きのめされた。

 まだまだというか、上には上があるというか、立ち方一つ、身体の動き一つが違う。

 ロザリーは貴族令嬢としてまったくダメだった。この二週間で別人になったと自分でも感じるほど、仕草一つ、目線一つの動きが違う。

 苦手としていた令嬢の必須アイテムである扇も、使いこなせるようになった。

「大変よろしいです」

 ロゼは優雅に手を叩いて褒めた。授業終了。ロザリーはやっと力を抜いて、ソファに沈み込んだ。

「お嬢様は筋がよろしいですから、教えがいがありました。これなら侯爵様にご挨拶されても問題ないでしょう」

 ですよね。侯爵夫人の姪がお世話になるのです。侯爵の前でみっともないマナーを晒す訳にはいかないですよね。

 本当に自分は考えが至らない。伯母の家に世話になることを、もっと軽く考えていた。

「ありがとう。おかげで明日を迎える事ができるわ」

 もし侯爵に見せられるレベルに達しなかったら、ロザリーの旅はその分延びる予定だった。

 最悪、留学先の編入予定にも間に合わない可能性もあったので、容赦なくしごいてくれたロゼには感謝しかない。

「侯爵邸では、お嬢様のお披露目もあります。一月後には学院の寮に移るので、それまでにもっと磨いていきましょう」

 待ち望んだ留学が、一月後に控えている。ロザリーの気分が上がった。

「隣国の学院はどんなところかしら。ロゼは卒業しているのよね」

「そうですね。お嬢様の国の学院との一番の違いは、専攻科目の多さでしょうか。
 家庭教師などに学んできている場合、試験に合格した一般科目は受講を免除されます。その分専攻科目を受講できるため、専攻科目の種類が多岐に渡ります。
 お嬢様は農作物が専攻でいらっしゃいますが、その他にも興味があるものがあれば好きに受講できますし、聴講として気になる時だけの参加も可能です」

「よくわからないわ」

「そうですね。実際に編入してから詳しい説明があると思いますので、その時にまた考えてみてください」





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