【R18】INVADER

深山瀬怜

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執着

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 調査員カノンが惑星イグルマから帰還してから二ヶ月。惑星ソレアでは一ヶ月前とほぼ変わらない日常が過ぎていた。
 ――エルマ以外は。
 バスルームの扉を開けたエルマは、浴槽の中にみちみちに詰まった触手たちに笑いかけ、青紫色に埋め尽くされた浴槽の中に入った。触手はすぐにエルマの体に群がり、エルマに快感を与えていく。エルマはそれを享受しながらも、触手たちに話しかけた。
「みんなが生まれてから一ヶ月ね。そろそろ外に出てもいいかなぁって思ってるんだけど」
 触手に胸を弄られてエルマは嬌声をあげる。この一ヶ月、触手の愛撫に身を任せた結果、エルマの豊満な胸からは母乳が分泌するようになっていた。成分を調べたところ、基本的には普通の母乳とは変わらないが、強い催淫作用があることがわかった。おそらく触手によってエルマの体に変異が起きているのだろう。
「あ、あん……もう、みんな胸ばっかり……んっ、好きなのね……ッ」
 通常の授乳では快楽を感じることはないという。むしろ上手く吸い付かせることができなければ痛みを感じることすらあるらしい。けれど、触手にはそのようなことはなかった。最初からエルマの母乳をうまく吸い、すくすくと成長していったのだ。
 触手を成長させるために必要なのは母乳だけではない。触手は母乳よりもむしろ愛液を好んでいるようだった。カノンを見ていればわかる。彼女は惑星イグルマで何度か触手の出産をしているはずだが、彼女の胸からは母乳が分泌されることはなかったからだ。
「あっ……んぅ、下も……いっぱい気持ちよくして……」
 エルマは完全に快楽に溺れていた。自室にいるほとんどの時間をこの浴室で過ごし、昼間も時々小さな触手を膣内に入れたまま仕事をしていた。しかしエルマの変化に気付いたものは誰もいなかった。惑星イグルマに行く前のカノンならば気付いていたかもしれないが、今の彼女は本調子ではない。その理由もエルマは知っていた。
「カノンも、早くこっち側に来ればいいのにね」
 エルマは触手の一つを軽く撫でる。すると触手はキスをせがむようにエルマの唇に近付いた。エルマは自ら触手を咥える。触手が出す甘露を味わい、身体を火照らせたエルマは、自分の指をぷくりと顔を出した陰核に持って行った。
「はぁ……ぁん、あ、ああ……!」
 エルマを手伝うように触手たちがエルマの胸や膣を刺激する。それ以外の触手もエルマの体を這い回り、エルマを絶頂に導こうとしていた。
「ぁ……ん、イ、イく、イっちゃう……ああっ!」
 エルマの蜜壺から愛液が溢れ出る。同時にエルマの陰核がむくむくと肥大し始めた。その変化も快楽を伴うのか、エルマは背をのけぞらせながら絶頂を迎え続ける。
「ぁ、ああ! イく、イくの止まんな……ああん……っ!」
 エルマは変異した陰核から白い液体を吐き出しながら果てた。力の抜けたエルマの体を触手が優しく受け止める。エルマは男性器のようにそそり立つ、自分自身の体と融合した触手を愛おしげに撫でた。
 産卵され、苗床になった人間はもれなく触手に寄生されていると考えていい。胎の中で孵り、外に出る触手は全てではないのだ。外に出ることなく母体に残った触手は母体の行動を変えてしまう。カノンの場合は毎晩見る悪夢とそれに伴う自慰行為という形でそれが現れた。そしてエルマの場合は、エルマ自身の望みによって、陰核に触手が寄生する形になったのだ。
「ふふ……このくらいおっきくなったら、もう十分かしらね」
 エルマは嫣然と微笑み、浴槽の中の触手たちに話しかけた。
「それじゃあ私は行ってくるから。あなたたちもそろそろ自由に動いていいわよ」
 触手の目的は殖えること、ただそれだけだ。そして殖える過程で惑星一つを滅ぼしたところでなんとも思わない生物だ。惑星イグルマでも、自分たちが繁殖できる最低限の人間は代替わりさせながら残していたようだ。惑星ソレアも同じ道を辿ることになるのだろう。
 しかし、そんな未来のことはエルマにとってはどうでもいいことだった。



「いや、ぁ……ぅ、」
 カノンは悪夢に苛まれていた。それは彼女に寄生している触手が見せているものだ。全ては自らが育ち、生殖するために必要な蜜を分泌させるためだ。カノンはそうとは知らず、無意識のまま自分自身を慰めていた。
「やだ……っ、も、やめて……っ」
 弱々しい声も、自分で蜜壺を掻き回しながらでは説得力がない。カノンはぐちゅぐちゅと卑猥な水音を立てながら、何度も首を横に振っていた。
「産みたくない……っ、いや、入っちゃ……ぁあ……っ!」
 産卵管を入れられる瞬間を夢に見ているのだろう。しかし彼女を苛んでいるのは彼女自身の指である。秘部に入っているのとは反対の手は、柔らかな胸を自ら揉んでいた。ピンと立った乳首を親指と人差し指でつまみながら、カノンは体を反らせて喘ぐ。
「ぁ、ああ……っ、だめ、イ、ぁ……ああっ!」
 夢の中で触手を産みながら、カノンは果てた。垂れた愛液でシーツが濡れている。力なく蜜壺から抜かれたカノンの手を、誰かがそっと握った。そして意識のないカノンの耳元で囁く。
「随分はしたなくイっちゃったのね、カノン」
 その声にカノンの意識は徐々に覚醒し始める。ぼんやりとした視界で捉えたのは眼鏡と薄いオレンジ色の短い髪。カノンはその名前を掠れた声で呟いた。
「エルマ……?」
「ねぇ、カノン。自分が今何してたかわかってる?」
 エルマは笑みを浮かべている。カノンはその笑顔に不気味なものを感じたが、全身が怠く、エルマから逃げるために動くことはできなかった。
「わかってないみたいだから教えてあげる。あのね、カノンはあの触手の夢を見ながら、オナニーしてたのよ?」
「……っ!」
「このびしょ濡れの手が何よりの証拠よね。あの日から毎晩毎晩、カノンはずうっとエッチなことをしてたのよ?」
 カノンは怯えた顔で後退った。エルマの言うことが本当だとして、カノンの知るエルマは、こんな風に真実を告げる人ではなかった。エルマはカノンの反応を見ながら、カノンの指を舐める。
「触手に一度でも産卵された人は、触手に寄生されてしまうみたいなの。宿主の行動を自分の都合のいいように変えてしまう寄生虫のことは聞いたことがあるでしょう?」
 寄生虫の類は、現場に出る調査員が気をつけなければならないことのひとつだ。もちろん知識はある。けれど自分の身にそれが起こっていたということは、カノンにとっても衝撃的だった。
「きっとね、普段のカノンだったら惑星イグルマから帰還しなかったと思うのよ。だって自分自身が持ち帰ってしまうっていうのはわかってたわけでしょう? この星を危険な目に晒すような行動、普段のカノンだったら絶対に選ばない」
「じゃあ、私はずっと……」
「ずっと、行動を操られていたかもしれないわね。あの触手に。でも悲観することはないわ」
 エルマがそう言った瞬間に、カノンの体は青紫色の触手に拘束された。カノンは目を見開く。その触手はエルマの背中から伸びていたのだった。
「エルマ……どうして……」
「カノンがオナニーしてるところ、私ずっと見てたんだよ。そしたらカノンに寄生してた触手に襲われちゃって」
「そんな……私のせいで……」
 自分を責めるカノンの頬に、エルマは触手を優しく伸ばした。
「ううん、カノンは何も悪くない。――だって、カノンのおかげでこんなに気持ちいいことを知れたんだから」
「エルマ……」
「でも、カノンはまだ知らないんだね。自分であそこ触ってるのに、嫌だってずっと言ってて、本当に可哀想」
 カノンはエルマの言葉に侮蔑の色を感じ取った。可哀想と言いながら、エルマはカノンを笑っている。その昏い感情はカノンの心さえも曇らせていく。
「だから私が教えてあげる。気持ちよくなって、何にも考えられなくなれば、みんな幸せになれるって」
 エルマはそう言うと、触手を使ってカノンの服を切り裂いた。着痩せするのか普段は目立たないが、案外大きな胸が外気に晒される。エルマはその胸の先を口に含んだ。赤子のようにちゅうちゅうとそこを吸うと、カノンは微かに声を漏らす。
「だめ……やめて、エルマ……っ」
「こんなにピンと立たせて、説得力ないよ」
 エルマはカノンの拒絶を無視して胸の愛撫を続けた。カノンは首を横に振り続けるが、快楽に慣れた体は抗えない。秘部から新しい蜜が垂れ、内腿を伝っていくのをエルマは見逃さなかった。
 体を這い回る触手とエルマによって胸に与えられる刺激。そして先程まで自らが繰り広げていた痴態により、カノンの身体には再び情欲の炎が点っていた。エルマは触手で拘束したカノンを見下ろしながら内腿をなぞり、蜜をこぼす秘裂に触れた。
「もうこんなに濡れてるじゃない、カノン」
「っ……やだ、離して……ッ!」
「ほら、カノンにも聞こえるでしょ? ちょっと指を入れるだけでこんなにぐちゅぐちゅって」
「エルマ……っ、やめて……」
 カノンは羞恥のあまり顔を赤く染め、エルマから目を逸らす。これが戦闘員にスカウトされるほど強いとされる調査員の姿なのか。エルマはカノンの弱々しい姿に、自分の嗜虐心が更に煽られるのを感じた。
「さっきは何本くらい入れてたの? 二本くらいならすぐ入っちゃいそうね」
「っ……ぁ、あ……!」
 エルマはわざと水音を立てながらカノンの秘部を指で掻き回す。溢れ出した蜜でエルマの手が濡れていく。カノンは弱々しく、何度も首を横に振っていた。
「でも、こんなものじゃ物足りないわよね?」
 エルマは二本の極細の触手を伸ばし、一本はカノンの陰核に巻きつけ、もう一本はその近くにある極小の穴に入れた。目を見開くカノンにエルマは笑いかけて、尿道口に挿入した触手から生温かい液体を放った。
「んんっ……ぁ、ああッ……!」
「ここから飲むのもすごく美味しいでしょ?」
「ぁ、ああ……っ、エル、マ……」
 カノンの体から力が抜ける。触手から分泌される強力な催淫作用がある液体のせいで、全身が性感帯のようになってしまっていた。触手が戯れにその肌をなぞるだけで、カノンは体を大きく震わせる。
「エルマ……どうして……」
「わからない? 私ね、ずっとあなたに勝ちたかったのよ」
 エルマとカノンは同時期に調査員になった。けれど組織の中でのし上がっていくのはカノンの方が圧倒的に早かった。カノンは調査員として優秀なばかりではなく、戦闘員としての才能もあった。禁欲的に仕事に取り組み、現場で多くの成果を上げてきた。エルマはそれをサポートすることに喜びを感じながらも、その胸の奥にカノンへの歪んだ思いを燻らせていたのだった。
「普通に戦っても勝てるわけがないし、何なら研究の成果だってカノンの方が上。カノンはリスクが高い現場にも進んで赴くから、上司からの覚えもいい」
「エルマ……っ」
「でも、人間は快楽には勝てない。鉄の女だって触手の虜になってしまう。そうでしょう?」
「違う……っ、私は……!」
「全部わかってるのよ? 触手に卵を産みつけられて、いっぱい触手の赤ちゃんを産んで、気持ちよかったんでしょう? 我慢なんてしなくていいのよ」
 カノンは快感に耐えながら唇を噛んだ。体はとうの昔に屈していても、調査員としての矜持だけで精神を保っていた。しかしそれも折れそうになっているのをどうにか立たせているような有様だ。隙間が空いた心にエルマの言葉が毒のように染み渡っていく。
「だめ……私が負けたら、この星は……っ」
「相変わらずの忠誠心ね。私はこんな星、どうなったっていいけど」
「エルマ……」
「私はね、カノンさえ手に入れば他には何もいらないの。だから――」
 エルマは自分の下着の紐を解いた。白い布がはらりと床に落ちる。そしてあらわになったエルマの股の間に、カノンは存在しないはずのものを見た、
「エルマ……っ、それは」
「触手の寄生にも色々なパターンがあるみたいでね。今の私の体は触手と完全に融合しているの。ここまで来るのに一ヶ月かかっちゃった」
 一ヶ月。その数字にカノンは衝撃を受けた。一ヶ月もの間、エルマはそれを隠していたのだ。調査員の顔をして働き、カノンに対しても献身的に接し、しかしその裏で触手を育てていたのだ。
「これ、何か覚えてるでしょう?」
 触手の産卵管は、他のものとは違って赤紫色をしている。エルマの体から生えたそれは、鎌首をもたげながらカノンの秘部を狙っていた。
「何を、する気なの……」
「これがあるならやることはひとつでしょ?」
「っ……!」
 カノンは咄嗟に右手の人差し指の付け爪を剥がした。それは超小型の爆弾になっていて、惑星イグルマからの脱出の際にも役に立った。殺傷力はないが、相手から距離を取るための時間稼ぎには有用だ。しかし宙を舞った爪は爆発することなく、地面に落ちた。エルマは声をあげて笑う。
「馬鹿ねぇ。カノンの戦い方は知ってるんだから、それを使えなくしておくのは当然でしょ?」
「……入れ替えてたのね。何でそんなこと」
「何でって、そりゃあ――」
 触手がカノンの拘束を強める。逃げようとするカノンの腰は触手に囚われ、エルマの接近を許してしまった。そしてカノンの体勢が整う前に、エルマは産卵管をカノンの膣内に勢いよく挿入した。
「あぁ……ッ!」
「かわいい声ね、カノン。でも気持ちいいでしょう? 催淫剤だってあんなにいっぱい入れてあげたんだから」
「っ……やめ、ッ……離して、エルマ……っ!」
「離すわけないじゃない。だってずっと、あなたにこういうことがしたかったんだもの」
 エルマは歪んだ笑みを浮かべ、激しく腰を振ってカノンを責め立てる。最初は拒絶していたカノンだったが、先程注ぎ込まれた催淫剤の効果と、悦楽に溺れた体がカノンの思考を白く染め上げていった。
「気持ちいいでしょう、カノン? 私もすごく気持ちいいわ……!」
 エルマは背中から生やした触手を自らの膣内に挿入し、中を掻き回しながらも腰を動かしていた。異常な光景に、カノンの大きな目から涙が一筋溢れ落ちる。しかしそれも細い触手が舐めとるように掬い上げていった。
「いやぁ……ッ、やめて、エルマ……!」
「こんな気持ちいいこと、やめられるわけないでしょう? いいのよ、カノンも自分に正直になれば。本当は気持ちよくて、どうしようもないんでしょう?」
 エルマの言葉は真実だった。しかしカノンにとっては認めることができないものだった。ここで溺れてしまえば楽になれるのかもしれない。けれどそれはできない。カノン自身の矜持がそれを許さなかった。
 エルマに激しく突かれ、カノンは嬌声を上げた。エルマはそんなカノンの様子を見てクスリと笑う。
「もうイっちゃいそうなんでしょ? いいわよ。イかせてあげる」
 二人の肌がぶつかる音が響く。産卵管を深く突き入れられ、カノンの意識は飛びかけていた。エルマはカノンの陰核に巻き付いた触手を動かし、彼女を絶頂に追いやる。
「ぅ、いや……ぁ、あああっ!」
 カノンが果てた瞬間に、エルマはカノンの子宮の中に触手の卵を産みつけた。カノンの腹が膨らんでいく。しかしエルマは卵を全て出し終えても産卵管を抜くことはなかった。
「エルマ……っ」
「この触手にはね、もう私の遺伝子が取り込まれてるの。どういうことかわかる? 今カノンの中にいるのはね、私とカノンの赤ちゃんってことだよ」
 カノンは首を横に振った。遺伝的な繋がりなどどうだっていい。カノンは望んでもいないのに触手の子供を産まされようとしているだけだ。しかしカノンの否定をエルマは許さなかった。
「泣かないで、カノン。何も考えられないくらい、気持ち良くしてあげるから――」
 新しいエルマの触手がカノンの体に伸びていく。それは、今まで触れられていなかったカノンの尻を目指していた。
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