贄の乙女は鬼となった兄の愛に溺れる

深山瀬怜

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5・水溜まり

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「ふっ、う……んん……」

 深凪は一人残された部屋で身体を震わせた。体の奥が熱い。ここは本来は子供を宿す場所であると言うことを深凪は知っていた。胎内で珠同士が擦れ合い、新たな熱を生み出しているかのようだった。そして同時に紋が描かれた部分から甘い快感が広がるのだ。少しでもその感覚から逃れようと体をよじるが、縄は全く解ける気配を見せない。それどころか動いたことで余計に縄が強く締まっていくように思えた。

「んぅっ……ふぅー……んんっ」

 もう何時間経っただろうか。深凪はひたすら快感に耐え続けていた。頭の中はもうぐちゃぐちゃで何も考えられない。ただ胎内にある珠が擦れ合うたびに生まれる快楽だけが思考を支配している状態だ。

「ふああぁっ!」

 不意に強い衝撃を感じて、深凪は身体を仰け反らせた。同時に秘所からは大量の蜜が吹き出す。しかしそれでも体の疼きは治まらないどころかどんどん酷くなっていった。

(もう無理……早く終わってぇ……!)

 そんな願いも空しく時間は過ぎていくばかりだ。やがて日が落ち、夜になった。しかしモリゴサマは戻ってこないし、縄が解かれる気配もない。

「はぁ……はぁ……」

 もう体力の限界だった。それでも体の中で珠同士が擦れ合うたびに新たな熱が生まれる。その感覚に深凪は甘い吐息を漏らすことしか出来なかった。

「んぁっ!  あ、ああぁっ」
 再び絶頂を迎える。それと同時に秘所からは大量の潮が吹き出した。それはまるで噴水のようで辺り一面に飛び散っていく。だがそんなことを気にしている余裕など今の深凪にはなかった。
 それからも何度も絶頂を迎える。その度に秘所からは大量の蜜が溢れ出すのだ。そしてそのたびに体が熱くなり、新たな快感が生まれる。その繰り返しだった。

「はぁ……はぁ……」

 もう何時間経っただろうか。時間の感覚すら曖昧になっていた頃、ようやく小屋の扉が開いた。

「待たせたな」

 そう言って入ってきたのはモリゴサマと村の人たちだ。しかしその姿はいつもと違っていた。儀式用の複雑な刺繍が施された着物を身につけている。

「さあ、儀式を始めるよ」

 モリゴサマが縄をほどいていく。しかし深凪は何度も絶頂を繰り返したせいでぐったりとしていた。

「ま……待って、ください……」
「そういうわけにはいかないのだ。もうお前は何もしなくてもいい」

 村の男たちが深凪を膝立ちにさせ、手首に細長い絹の布を結ぶ。その布はそのまま天井の梁に結わえ付けられた。手を上にした状態で固定された深凪の周りを囲むように村人たちとモリゴサマが円を作る。

「さあ、始めるよ」

 村人たちが何やら呪文を唱え始める。モリゴサマは村人達の円から抜けると、懐から一本の筆を取り出した。そしてそれを深凪の体に滑らせていく。脇腹、お腹、鎖骨へと筆が這うたびに深凪は甘い声を上げた。

「ふぅ……ん……くぅ……」

 やがて筆はその豊満な乳房へと到達する。そしてその先端にある突起に触れた瞬間、深凪の身体がびくんと跳ねた。

(いや……なにこれ……)

 今まで感じたことのないような感覚に戸惑いを覚える。だが次の瞬間、今まで以上の快感に襲われた。

「んんっ……!」

思わず声が出てしまう。それほどまでに強烈な刺激だった。

「儀式の最中はあまり声を出すのではないよ」

 モリゴサマが言うがそれに応える余裕などない。それどころか少しでも気を抜くと意識を持っていかれそうになるのだ。そんな深凪の様子を見て満足そうに笑みを浮かべると、モリゴサマは筆の動きを再開させる。今度は両方の突起を同時に責め立てられた。その瞬間、頭の中で火花が飛び散るような感覚に襲われる。あまりの快感に一瞬意識を失いかけたほどだ。

「う……あ……」

 しかしそれも束の間、すぐに新たな刺激に襲われる。今度は筆先でカリッカリッと引っ掻くように弄ばれた。その度に背筋に電流が流れるかのような感覚に襲われる。思わず腰が浮き上がりそうになったが、手を縛る布がそれを許してくれなかった。結局深凪はただひたすら耐えることしかできなかったのだ。
 やがて儀式も終盤を迎える頃になると、深凪の体は全身汗まみれになっていた。息も絶え絶えといった様子で呼吸を繰り返すたびに豊満な双丘が大きく上下する。その姿はとても淫靡なものだったが、今の深凪にはそれを気にしている余裕などなかった。村人達が低い声で唱える呪文がこだまして、さらに意識が朦朧としていく。

「そろそろだな」

 モリゴサマが筆を高く掲げて言った。次の瞬間、深凪は今までにない程の強い衝撃を感じた。まるで体の中で何かが爆発したかのような感覚だ。同時に秘所からどろりと蜜が溢れ、床に落ちる。深凪から流れ出たもので出来た水溜まりに波紋が広がった。

「んぅ……ぁ……」
「少しずつ体が変化してきたようだね。見てごらん」

 モリゴサマに言われるが、深凪には自分の体を見る余裕などなかった。その体は僅かに透け始めている。それは人間を鬼の贄とするために必要なことであった。
 再び筆による愛撫が始まる。今度は先ほどとは比べ物にならないほどの快感に襲われた。まるで全身が性感帯になってしまったかのようだ。

(だめっ……こんなの続けられたらおかしくなる……!)

 必死に耐えようとするが無駄な抵抗だった。むしろ意識すればするほど敏感になっていくような気さえする。そしてついに限界が訪れた。

「ふぅっ……んんっ……!」

 深凪は身体を大きく仰け反らせると絶頂を迎えた。秘所からは大量の愛液が流れ出る。しかしそれでも儀式は終わらない。モリゴサマが深凪の体から離れると、深凪の胎内にある赤い珠が熱を持ち始めた。

「あ……ああ……」

 もう限界だった。どうせこの後鬼の贄となって死ぬのだ。早く殺してくれ。深凪は朦朧とする意識の中でただそれだけを願っていた。

(もう……解放して……)

 心の底からそう願ったとき、脳裏に浮かんだのは兄の顔だった。彼は今も薬売りたちをもてなしているのだろうか。ここに来ることは出来ない。けれどその顔を思い浮かべることを止めることは出来なかった。

(お兄様……)

 深凪の意識が白に染まったそのとき、深凪たちがいる場所が大きく揺れ始めた。
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