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19・月禍と深凪
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深凪はあてもなく走り、その場を立ち去った。本当は立ち去りたくなかったが、足手纏いにしかならないことはわかっていたからだ。そして息が切れて足が止まったそのときに深凪の目に入ったのは、美しく舞う月禍の姿だった。
「……誰かと思えば。一人でいるのは珍しいな」
深凪に気が付いた月禍は舞をやめてそう言った。
「お兄様が……っ!」
深凪がそう言った瞬間、月禍の表情が少しだけ変わった。混乱してうまく話せないでいる深凪を宥めるように月禍はその頭を撫でた。
「何があったのだ?」
「さっき……急にお坊さんが来て、お兄様を……」
「この事態を察知した坊主が鬼退治に来たというわけか」
月禍は深凪の言葉ですぐに事態を理解したようだった。
「月禍さん……このままじゃ、お兄様が……!」
「ああ、わかっている。お前はここで待っているといい」
月禍は言った。しかし深凪は首を横に振る。自分がいても足手纏いになるだけかもしれない。けれどこのまま月禍に任せて待っているだけも嫌だったのだ。
「……正直な話、お前が行っても何かができるわけではないと思う。だが……私としてはお前がいると都合がいいこともある」
「都合がいいことって?」
「私は鬼ではあるがあまり攻撃は得意ではない。特に力のある僧であれば私の攻撃などまず通らないだろう。だが、人の体を使えば別だ」
月禍はにやりと笑い、深凪の頬を撫でた。
「どうしても行くというのなら、いざというときはその体を使わせてもらう。それが条件だ」
深凪は頷いた。それで兄が助けられるなら、自分の体を鬼に差し出しても構わない。深凪の意志のこもった目を見ると、月禍は小さく笑って深凪を抱きかかえた。
「ならば、急いで向かおう」
月禍は深凪を抱きかかえたままで宙を飛ぶようにして移動する。深凪が恐怖を感じる暇もなく、月禍は深凪たちの家の前に降り立った。
「お兄様……」
巽は燕明の作り出す鎖を破ったところだった。自らの手を鬼の手に変化させて燕明を切り裂く。しかし燕明もすんでのところでそれを避け、致命傷を与えられてはいなかった。
「何が目的なのだ……既にお前の妹は贄からは解放された。それなのに鬼の封印を拒む理由は何だ?」
燕明が巽に尋ねる。それを聞いて月禍は小さく笑った。
「それは確かにそうだな」
「え……」
「今ならまだ耀鬼をあの体から引き剥がして封印することもできるだろう。あの僧はそこそこ強いようだし」
月禍が言う。しかし月禍は耀鬼の封印を解きたがっていたはずだ。妙に冷静な彼女に深凪は少し戸惑っていた。
「それで……いいんですか?」
「いいとは言えないが、巽がそれを望むならば受け入れるつもりだ」
全ては巽次第だと言うことだ。鬼を封印することを選べば、犯した罪は裁かれるとしても、今ここで殺されることはない。しかし、巽はそれを受け入れなかった。
「力があれば、もっと早く、深凪を害する人間を全部殺せたんだ。いや違う。これからも、深凪が生きている限り、深凪を害するものは全部この手で殺し尽くす。そのために力が必要だ」
自分のためにそこまでしなくていい。深凪はそう思った。けれど同時に、これまで深凪を苦しめていたあらゆるものを巽が壊してくれたのだということもわかっていた。
「そのためにこの鬼を利用する。そして俺が与える『穢れ』でこの鬼も少しずつ回復するだろう。誰にも邪魔させない」
「ならば!」
燕明は懐から五鈷杵を出して気合を込めた。深凪が息を呑んだ瞬間、巽の背後に明王の影が現れ、手に持っていた武器を巽の体に突き刺す。それは巽の胸に刺さり、巽は血を吐きながらその場に膝を突いた。
「お前が妹を思う気持ちは本物なのだろう。だが、悪鬼やそれを守る人間を放置することは出来ない」
燕明の言葉など深凪にはほとんど聞こえなかった。ただ目の前で血を流す兄と、血を流させた男を許せないという感情だけが募っていく。
思わず立ち上がった深凪を月禍が止める。
「行ってどうなる? このまま行ってもあの坊主の攻撃に巻き込まれて死ぬだけだ」
「でも、お兄様が……」
「さっき言っただろう。『どうしても行くというのなら、いざというときはその体を使わせてもらう』と」
それは兄と同じ状態になるということだ。鬼に取り憑かれ、人の理を外れるということ。しかし覚悟はとうに決まっていた。これまで深凪は散々巽に守られてきたのだ。今度は深凪が巽を守れるようになりたい。
たとえそれが、どれだけ歪んだ未来だとしても。
「いいだろう」
月禍が言った瞬間、深凪の体を冷たい感覚が支配する。まるで体が内側から冷えていくような、そんな感覚だ。その次の瞬間、深凪の体は人のものではなくなり、角と赤い瞳を持つ鬼の姿になった。
「お兄様……」
巽は燕明につけられた傷を手で押さえながら燕明を睨みつけていた。燕明が巽に止めを刺そうと近づいたそのとき、深凪はその腕で、背後から燕明の腹部を刺し貫いた。
「君、は……⁉︎」
燕明は驚愕に目を見開いた。しかしそれは深凪も同じだった。思うままに突っ込んでいっただけで、自分にこんなことができるとは思っていなかったのだ。
(これが……鬼の力なのね)
冷たいのに熱い感覚が体を支配する。その意識の後ろには確かに月禍の気配がした。だが、月禍はあくまで深凪に体の主導権は与えたままのようだった。
「お兄様を傷付けるものは許さない」
そう言って深凪は燕明の体を地面に投げ捨てた。深凪は既に虫の息になりつつある燕明の錫杖を奪い、燕明の胸に突き刺す。燕明はしばらくもがいていたが、やがて完全に体から力が抜けた。
「お兄様……」
巽は深凪に駆け寄り、その体をきつく抱きしめた。
「……どうして、こんな」
「私も、お兄様を守れるようになりたかったんです。この手を血に染めてでも、一人で逃げて生き延びるなんて嫌だったんです」
深凪は巽の手に自らの手を重ね、そしてそのまま血に塗れたその手で自分の頬をなぞらせた。
「お兄様……もっと早く、こうすればよかった」
「深凪……」
「そうしたら、お兄様が傷つくこともなかったのに」
「いいんだよ。それはお互い様だ」
巽はそう言って深凪を抱きしめる力を強くした。かろうじて間に合ったとはいえ、巽も深凪も相手が傷つくのを完全には防げなかった。だからこそ、次はないと誓う。
「もう、決してお兄様から離れません」
「俺もだよ、深凪」
二人はどちらからともなく唇を合わせる。その熱さに夢中になり、徐々に互いの舌を絡めあうようになった。深凪の呼吸がもたなくなったところで二人はそっと唇を離す。
「……その傷、治さないと」
「ああ。だが……法力が込められた武器で受けた傷の治し方などわからないのだが」
「私の……いえ、月禍さんの力を私を通してお渡しします。鬼の力が活性化すれば傷の回復も早まると」
「そうか。何から何まであの鬼の思い通りのような気もするが……だが、感謝しよう」
深凪はゆっくりと巽の首筋に唇を触れさせた。深凪の背に回された巽の手がびくりと動く。しかし深凪は静かに唇を動かし、今度はその鎖骨に強く吸い付いた。
「ん……っ」
「お兄様……?」
「いや……そういう場合ではないはずなのだが、その……」
少し顔を赤くして巽は口籠る。戸惑う深凪の頭の中に月禍の声が響いた。
(今回は私の力を少し渡しているからな。どうもそれは多少快楽を伴うものらしい)
なるほど、そういうことか。深凪は巽の腹部の傷が塞がり始めているのを確認してから、その手を巽の下半身に伸ばしていく。
「もっと、欲しいですか……お兄様?」
巽は深凪のその妖艶な笑みに、思わず息を飲んだ。しかしすぐに笑みを浮かべて応える。
「ああ……欲しいよ」
そう言って巽は今度は自分から深凪に口付ける。そしてそのまま二人はその場に倒れ込んだ。
「お兄様……」
口付けは長く、深い。深凪は巽と舌を絡ませながらもその手で深凪の胸板に触れた。巽の手も深凪の肌をまさぐる。やがてその手は胸から脇腹、そして腰へとゆっくりと降りていった。
「あ……んっ」
深凪はくすぐったさに思わず身を捩らせる。しかしその手を振り払うことなく、むしろ誘うように腰を浮かせる。その反応に巽が驚いたような顔をしているのを見て深凪は少しだけ笑った。
「もっと、ください……」
息継ぎと共にそう言い、今度は深凪の方から口付ける。隣にまだ生々しい死体がある中での行為は、まるで獣のような交わりだった。
「んあっ……!」
巽の手が深凪の秘部に触れる。そこは既にしとどに濡れていた。巽は喉を鳴らして指を動かす。
「ん……そこ、ぁ……っ」
「鬼に取り憑かれると、こんなところにまで力が滲むのか」
何度も触れてきたからこその変化に気付き、巽が言う。深凪はどういうことかわからずに首を傾げた。
「この蜜にもわずかだが鬼の力が含まれている」
(それは私が力を渡そうとしているからだ)
巽の言葉に答えるように月禍の声が深凪の頭に響くが、果たして伝わっているかはわからない。しかし深凪がそれを確認しようとする前に、巽が深凪の秘部に指を挿れた。
「あっ! や、ああっ……!」
巽の指は深凪の中をかき回すように動く。巽は深凪の弱いところを完全に把握しているようで、深凪はすぐに体を跳ねさせることになった。しかしそれでも巽の手は止まらず、ますます激しく動かされる。
「あああっ! お兄さ……っ」
絶頂した深凪から大量の蜜が溢れる。巽は手についたそれを舐め取ってから、深凪の足を開かせる。そしてすっかり硬くなった己を深凪の入り口にあてがった。
「お兄様……はやく……」
「そんなことを言われてしまったら、滅茶苦茶にしてしまうかもしれないぞ」
巽は自らの欲望で深凪を貫く。その刺激だけでまた深凪の体が跳ね、蜜が溢れ出した。
「ああっ! お兄さま……っ!」
「深凪……っ」
それは知らぬ人から見れば甚だ異常な光景だっただろう。村人が無惨に殺された村。鬼を封印するためにやってきた僧侶の死体もそのままに色に耽る。しかしそんなことは二人の目には入らない。長い夜が明けるまで、二人は互いを貪り合うのだった。
「……誰かと思えば。一人でいるのは珍しいな」
深凪に気が付いた月禍は舞をやめてそう言った。
「お兄様が……っ!」
深凪がそう言った瞬間、月禍の表情が少しだけ変わった。混乱してうまく話せないでいる深凪を宥めるように月禍はその頭を撫でた。
「何があったのだ?」
「さっき……急にお坊さんが来て、お兄様を……」
「この事態を察知した坊主が鬼退治に来たというわけか」
月禍は深凪の言葉ですぐに事態を理解したようだった。
「月禍さん……このままじゃ、お兄様が……!」
「ああ、わかっている。お前はここで待っているといい」
月禍は言った。しかし深凪は首を横に振る。自分がいても足手纏いになるだけかもしれない。けれどこのまま月禍に任せて待っているだけも嫌だったのだ。
「……正直な話、お前が行っても何かができるわけではないと思う。だが……私としてはお前がいると都合がいいこともある」
「都合がいいことって?」
「私は鬼ではあるがあまり攻撃は得意ではない。特に力のある僧であれば私の攻撃などまず通らないだろう。だが、人の体を使えば別だ」
月禍はにやりと笑い、深凪の頬を撫でた。
「どうしても行くというのなら、いざというときはその体を使わせてもらう。それが条件だ」
深凪は頷いた。それで兄が助けられるなら、自分の体を鬼に差し出しても構わない。深凪の意志のこもった目を見ると、月禍は小さく笑って深凪を抱きかかえた。
「ならば、急いで向かおう」
月禍は深凪を抱きかかえたままで宙を飛ぶようにして移動する。深凪が恐怖を感じる暇もなく、月禍は深凪たちの家の前に降り立った。
「お兄様……」
巽は燕明の作り出す鎖を破ったところだった。自らの手を鬼の手に変化させて燕明を切り裂く。しかし燕明もすんでのところでそれを避け、致命傷を与えられてはいなかった。
「何が目的なのだ……既にお前の妹は贄からは解放された。それなのに鬼の封印を拒む理由は何だ?」
燕明が巽に尋ねる。それを聞いて月禍は小さく笑った。
「それは確かにそうだな」
「え……」
「今ならまだ耀鬼をあの体から引き剥がして封印することもできるだろう。あの僧はそこそこ強いようだし」
月禍が言う。しかし月禍は耀鬼の封印を解きたがっていたはずだ。妙に冷静な彼女に深凪は少し戸惑っていた。
「それで……いいんですか?」
「いいとは言えないが、巽がそれを望むならば受け入れるつもりだ」
全ては巽次第だと言うことだ。鬼を封印することを選べば、犯した罪は裁かれるとしても、今ここで殺されることはない。しかし、巽はそれを受け入れなかった。
「力があれば、もっと早く、深凪を害する人間を全部殺せたんだ。いや違う。これからも、深凪が生きている限り、深凪を害するものは全部この手で殺し尽くす。そのために力が必要だ」
自分のためにそこまでしなくていい。深凪はそう思った。けれど同時に、これまで深凪を苦しめていたあらゆるものを巽が壊してくれたのだということもわかっていた。
「そのためにこの鬼を利用する。そして俺が与える『穢れ』でこの鬼も少しずつ回復するだろう。誰にも邪魔させない」
「ならば!」
燕明は懐から五鈷杵を出して気合を込めた。深凪が息を呑んだ瞬間、巽の背後に明王の影が現れ、手に持っていた武器を巽の体に突き刺す。それは巽の胸に刺さり、巽は血を吐きながらその場に膝を突いた。
「お前が妹を思う気持ちは本物なのだろう。だが、悪鬼やそれを守る人間を放置することは出来ない」
燕明の言葉など深凪にはほとんど聞こえなかった。ただ目の前で血を流す兄と、血を流させた男を許せないという感情だけが募っていく。
思わず立ち上がった深凪を月禍が止める。
「行ってどうなる? このまま行ってもあの坊主の攻撃に巻き込まれて死ぬだけだ」
「でも、お兄様が……」
「さっき言っただろう。『どうしても行くというのなら、いざというときはその体を使わせてもらう』と」
それは兄と同じ状態になるということだ。鬼に取り憑かれ、人の理を外れるということ。しかし覚悟はとうに決まっていた。これまで深凪は散々巽に守られてきたのだ。今度は深凪が巽を守れるようになりたい。
たとえそれが、どれだけ歪んだ未来だとしても。
「いいだろう」
月禍が言った瞬間、深凪の体を冷たい感覚が支配する。まるで体が内側から冷えていくような、そんな感覚だ。その次の瞬間、深凪の体は人のものではなくなり、角と赤い瞳を持つ鬼の姿になった。
「お兄様……」
巽は燕明につけられた傷を手で押さえながら燕明を睨みつけていた。燕明が巽に止めを刺そうと近づいたそのとき、深凪はその腕で、背後から燕明の腹部を刺し貫いた。
「君、は……⁉︎」
燕明は驚愕に目を見開いた。しかしそれは深凪も同じだった。思うままに突っ込んでいっただけで、自分にこんなことができるとは思っていなかったのだ。
(これが……鬼の力なのね)
冷たいのに熱い感覚が体を支配する。その意識の後ろには確かに月禍の気配がした。だが、月禍はあくまで深凪に体の主導権は与えたままのようだった。
「お兄様を傷付けるものは許さない」
そう言って深凪は燕明の体を地面に投げ捨てた。深凪は既に虫の息になりつつある燕明の錫杖を奪い、燕明の胸に突き刺す。燕明はしばらくもがいていたが、やがて完全に体から力が抜けた。
「お兄様……」
巽は深凪に駆け寄り、その体をきつく抱きしめた。
「……どうして、こんな」
「私も、お兄様を守れるようになりたかったんです。この手を血に染めてでも、一人で逃げて生き延びるなんて嫌だったんです」
深凪は巽の手に自らの手を重ね、そしてそのまま血に塗れたその手で自分の頬をなぞらせた。
「お兄様……もっと早く、こうすればよかった」
「深凪……」
「そうしたら、お兄様が傷つくこともなかったのに」
「いいんだよ。それはお互い様だ」
巽はそう言って深凪を抱きしめる力を強くした。かろうじて間に合ったとはいえ、巽も深凪も相手が傷つくのを完全には防げなかった。だからこそ、次はないと誓う。
「もう、決してお兄様から離れません」
「俺もだよ、深凪」
二人はどちらからともなく唇を合わせる。その熱さに夢中になり、徐々に互いの舌を絡めあうようになった。深凪の呼吸がもたなくなったところで二人はそっと唇を離す。
「……その傷、治さないと」
「ああ。だが……法力が込められた武器で受けた傷の治し方などわからないのだが」
「私の……いえ、月禍さんの力を私を通してお渡しします。鬼の力が活性化すれば傷の回復も早まると」
「そうか。何から何まであの鬼の思い通りのような気もするが……だが、感謝しよう」
深凪はゆっくりと巽の首筋に唇を触れさせた。深凪の背に回された巽の手がびくりと動く。しかし深凪は静かに唇を動かし、今度はその鎖骨に強く吸い付いた。
「ん……っ」
「お兄様……?」
「いや……そういう場合ではないはずなのだが、その……」
少し顔を赤くして巽は口籠る。戸惑う深凪の頭の中に月禍の声が響いた。
(今回は私の力を少し渡しているからな。どうもそれは多少快楽を伴うものらしい)
なるほど、そういうことか。深凪は巽の腹部の傷が塞がり始めているのを確認してから、その手を巽の下半身に伸ばしていく。
「もっと、欲しいですか……お兄様?」
巽は深凪のその妖艶な笑みに、思わず息を飲んだ。しかしすぐに笑みを浮かべて応える。
「ああ……欲しいよ」
そう言って巽は今度は自分から深凪に口付ける。そしてそのまま二人はその場に倒れ込んだ。
「お兄様……」
口付けは長く、深い。深凪は巽と舌を絡ませながらもその手で深凪の胸板に触れた。巽の手も深凪の肌をまさぐる。やがてその手は胸から脇腹、そして腰へとゆっくりと降りていった。
「あ……んっ」
深凪はくすぐったさに思わず身を捩らせる。しかしその手を振り払うことなく、むしろ誘うように腰を浮かせる。その反応に巽が驚いたような顔をしているのを見て深凪は少しだけ笑った。
「もっと、ください……」
息継ぎと共にそう言い、今度は深凪の方から口付ける。隣にまだ生々しい死体がある中での行為は、まるで獣のような交わりだった。
「んあっ……!」
巽の手が深凪の秘部に触れる。そこは既にしとどに濡れていた。巽は喉を鳴らして指を動かす。
「ん……そこ、ぁ……っ」
「鬼に取り憑かれると、こんなところにまで力が滲むのか」
何度も触れてきたからこその変化に気付き、巽が言う。深凪はどういうことかわからずに首を傾げた。
「この蜜にもわずかだが鬼の力が含まれている」
(それは私が力を渡そうとしているからだ)
巽の言葉に答えるように月禍の声が深凪の頭に響くが、果たして伝わっているかはわからない。しかし深凪がそれを確認しようとする前に、巽が深凪の秘部に指を挿れた。
「あっ! や、ああっ……!」
巽の指は深凪の中をかき回すように動く。巽は深凪の弱いところを完全に把握しているようで、深凪はすぐに体を跳ねさせることになった。しかしそれでも巽の手は止まらず、ますます激しく動かされる。
「あああっ! お兄さ……っ」
絶頂した深凪から大量の蜜が溢れる。巽は手についたそれを舐め取ってから、深凪の足を開かせる。そしてすっかり硬くなった己を深凪の入り口にあてがった。
「お兄様……はやく……」
「そんなことを言われてしまったら、滅茶苦茶にしてしまうかもしれないぞ」
巽は自らの欲望で深凪を貫く。その刺激だけでまた深凪の体が跳ね、蜜が溢れ出した。
「ああっ! お兄さま……っ!」
「深凪……っ」
それは知らぬ人から見れば甚だ異常な光景だっただろう。村人が無惨に殺された村。鬼を封印するためにやってきた僧侶の死体もそのままに色に耽る。しかしそんなことは二人の目には入らない。長い夜が明けるまで、二人は互いを貪り合うのだった。
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