うつし世はゆめ―人間とダンピールと吸血鬼ですが家族やってます―

深山瀬怜

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あざなえる呪詛の糸

蛾眉の家

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「話の前に、前提として里についてどれくらいの知識が共有されてるのかを知りたいんだが」
「……うっ」
「まだ何も聞いてないのに『全部忘れた』みたいな顔しないでくれるか、嬢ちゃん」

 だが実際のところは図星だ。民警試験のテキストにも出て来るが、冬弦に会うまで里の名前すら忘れていた有様なのだ。

「まあ正直なところ、あまり知らないって言うか……捨て問にする人も多いよね」
「そうね。私も樹様にやれって言われたときは飛ばしていいと言われたわ」
「蛍って民警試験いつ受けたんだっけ?」
「民警は十五歳からしかなれないから、二年前くらいね」
「そういえばそうだった。じゃあ俺と半年差くらいか」

 この中では紅羽が一番民警歴が短い。しかし蛍と紅羽の間でも一年くらいの差しかない。一番民警として長いのは榛斗だが、榛斗が受けた十年前の試験でもほぼ出ないと言われていた箇所だった。

「十年前でも捨て問扱いをされていたのは事実で……。そもそも民警試験って学科で禁忌肢踏まない限りは、実技の成績がよければ何とかなるところはあって」
「まあ当時の現状を考えればそうだよな。それに、嬢ちゃんのことを考えれば……」
「あれ、とうとうおじさんにも馬鹿扱いされるようになってきた?」
「でも一発で禁忌肢だけは全部避けて、ギリギリの合格点取れたから、そういう意味では……」

 とうとう冬弦にもそういう目で見られたことに文句を言う紅羽だったが、碧都がフォローを入れる。ちなみに禁忌肢とは、選択問題において絶対に選んではいけない選択肢のことだ。怪異への対処時に事態を悪化させる方法がそれにあたる。紅羽は禁忌肢を踏まないだけの知識は元々あったのだ。ただどの怪異に対しても大抵力技で解決しようとしているだけだ。

「俺は個人的には知っていることもあるけれど、一般的な民警が知っているのは、集落のほぼ全員が呪術師の土地と言うことくらいかな。かつての事件とかをいくつか記憶している人もいるだろうけど、それもほとんど出題はされない」
「現実に里の呪術師の呪術に対処することがほぼないから、ってところだな。里に対する特別な知識がなくても一般的な呪術への対処法を知っていれば対処は出来るし。それじゃあ、ほぼ知識がないということを前提に話した方がいいか」

 微かな風鈴の音とともに空気が変わる。紅羽はむき出しの自分の腕をそっと撫でた。普段は気怠げな雰囲気を漂わせている冬弦が呪術師の顔をするときはいつも微妙に空気が変わるのだ。いや、空気というよりは風なのか。正体はわからないが、紅羽の野生の勘が何かを感じているのだ。

「そもそも、うちが何故『蛾眉の里』と呼ばれているか。蛾眉とは三日月のような眉を持つ美女のことだが、それは里を拓いた呪術師がそう呼べるほどの女だったからだ。そして最初の頃は、その呪いの力は女だけに受け継がれていくものだった」
「最初っていうと……もう室町時代くらいの話になってくるな」
「そうだ。その頃っていや戦乱の時代だ。もちろん主力は武器だろうが、呪術も勿論重宝された。そしてその頃の里の呪術は今と違って特殊なやり方をしていた」

 冬弦はそこで言葉を切る。そして煙管をふかした後でゆっくりと言葉を続けた。

「まず、生まれた女児の髪に一度も鋏を入れずに十六まで育てるんだ」
「それものすごい長さにならない? 生活に困りそう」
「そうだな。……そもそも生活を送るということは想定されていない。生まれたときから十六まで、その髪の毛に呪力を溜め続けるためだけの教育を受ける。そして――十六になると伸ばした髪の毛を全て切り、それと自らの肉の一部を箱に入れて封をする。これが数年もすれば立派な呪物になる」

 紅羽の中で何かが符合したような気がした。その呪物の作り方は、紅羽が最近聞いたものと似通っている。そしてどうして冬弦がこの話を始めたのかの答えもそれによって見え始めていた。

「そして髪を切り落とした女は次の女を産む。そして娘を同じように育てるんだが、このとき娘は十歳から母親が十六のときに作った呪物を使って呪いを行使するように教育される。そして十六で髪を切り落として子供を作り、その子供が十歳で呪術を使うようになったら引退。これを何代も繰り返していったんだ」
「最初の一人以外は、母親の髪の毛と肉体の一部を使った呪物を使って、娘が呪術を使っていたってことだよね?」

 碧都の言葉に冬弦が苦い顔をして頷く。

「それを続けていた家系が本来の蛾眉の里の本家だ。その家の名は口にしてはいけないとされている。じゃあ白月家がどうやって成立したかというと……まあ、必ず娘が生まれるとは限らないだろう。男が生まれたり、娘が二人以上になったときはそれが分家になる。そのうちのひとつだったんだが、まあうまく母親の呪力を引き継げた分家があってな。それが本家とは別のやり方で呪術を使い始めた。それが白月家の始まりで、白月家が大きくなるにつれて、蛾眉の里の二本の柱のようになった」

 里の柱は二本になり、そこから一本が失われて現在に至る。その現状はその場にいる誰もが知っていた。冬弦は淡々と話を続ける。

「最終的に分家だけが残った経緯はわりとあっさりしたもんだ。ある代の母親が自分の娘にそんな思いをさせたくないと考えた。分家の人たちはそんなことをしなくても呪いを使えているし、それでいいじゃないかと思ったらしい。まあ同じ里の中で比較的自由にやってる奴らを見たらそう思う奴が一人は出て来るだろうな。そして娘が十歳になる前にその髪に鋏を入れた。そして周囲の反発を少々強引に封じながら、娘を白月家に預けて、そっちの技術を継承させた。その娘が子供を産む前に死んで、それで本家の歴史は終わったんだ」

 分家が里の中に残っていた段階でいずれそうなったのだろう。そして里として存続するにはそれで問題ない状態になっていたのだ。その選択をした母親は確かに娘のことを愛していたのだろう。しかし話はそれでは終わらないのだ。

「その後、白月家を含む分家の人間は本家の人間が使っていた呪物の処理をすることになった。正直扱いが難しくて、自分たちが使っている慣れたやり方にしたかったってところだな。その処理は適切に行われたはずだった。――けれど、呪物の力が強すぎて、それ自体が別の怪異と変化した」

 冬弦の声がわずかに低くなる。紅羽たちは息を呑んだ。窓の外の風が、一瞬だけ止まったような気がした。

「里の人間はその怪異を倒そうとしたが逃げられた。里の外に出たそれは呪いと、そして呪法をばらまいた。一時、里はその怪異への対処に追われたが、やがてその騒動は終息したと言われている」
「でも、実際はそうではなかったってこと?」

 紅羽の質問に冬弦は頷いた。

「あれは姿形を自在に変化させながら、様々な時代と場所に現れるようになった。おそらくあのサイトにもそれが関わっているだろう。それからあの弁護士先生にテープを送った奴を殺したのも――」
「薄々そう思ってたから必死になってたってこと?」

 碧都の言葉に冬弦は溜息を吐く。

「そんなに必死に見えたか。社長さんにも言われたからよっぽどだな」
「正直結構動揺しているように見えてたけど……」
「そうか。……俺はあの怪異に会ったことがある。いや、違うな――受け入れてしまったと言うべきか」

 部屋の空気が一瞬で凍りついた。紅羽は言葉を失い、蛍の目がわずかに揺れる。

「結論から言えば、その場にたまたま黒霞がいて、黒霞がそいつをぶっ飛ばしたから、実際には何も起きなかった。だが俺はあの汚点をずっと引きずっているらしいな」

 汚点とまで言うような過去なのか。紅羽が尋ねる前に、冬弦が続きを話し始める。

「最初、あれは普通の女として俺に近付いてきた。会ったのは里の外だった。呪いとは何の関係もないような顔をしていて、そして蛾眉の名に相応しい女だった」
「……つまるところあれだ、好きになっちゃったわけだね?」
「嬢ちゃん、よくこの雰囲気ぶち壊してそんなこと言えるな。いや、まあおかげで少し落ち着いたが」
「そ、そうだよ。私はおじさんを落ち着かせようと思ってね!」

 絶対嘘だろ、と紅羽以外全員の顔に書いてあった。冬弦は弛緩した雰囲気に溜息を吐きながらも先程よりは明るい声で続ける。

「まあ、そういうことではある。未熟だった俺はすっかり騙されて、あれを里にまで引き込んじまった。黒霞がいなかったらどうなってたかわからねえな。しかも後で黒霞に言われるまで正体にも気付けなかった」
「それはそれとして、黒霞さんは強すぎない……?」
「元々うちも女の方が呪力は強いからな。それでもあいつは桁違いの強さだったし……最期に自分の身体を呪いの材料にすることを選んだのも、本家の話を知っていたからだろうな」

 確かに黒霞の呪いも肉体を利用しているという点では似通っている。冬弦は静かに、しかしどこか硬い声で言った。

「ここからは俺の個人的な感情でしかないが……あれに騙されたのは、俺のこれまでの人生で一番の屈辱だ。この手でどうにかしてやらねえと気が済まない。これは俺の問題だ」

 その言葉には確かな憎悪が含まれていた。しかしその裏に何か別のものが見え隠れしているような気もした。紅羽は息を呑む。思わず自分の腕をさすった。碧都はそれをちらりと見てから冬弦に言う。

「……でも現実的に考えて、白月黒霞でもぶっ飛ばすだけで終わった相手に一人で勝てるとは思えないよ」
「それはそうだな。太陰鈴を使えば行けるかもしれないが、使える状態まで持って行ける可能性はそれほど高くないし、黒霞のときよりも酷い呪い返しが来るだろうな」
「あのときよりも酷いって、それじゃ死んじゃうじゃん」

 黒霞のときは紅羽が咄嗟に榛斗の血を冬弦に与えたから助かったのだ。しかしそのときよりも強い呪い返しに対抗できるかどうかはわからない。

「だけど俺は、たとえ死んでもこの雪辱を果たしたいんだよ」
「おじさん……」
「ここまで話したんだ。――協力してくれないか」

 短い言葉に、全ての感情が詰まっているような気がした。紅羽はそれに息を呑みながらも頷いた。

「そもそもここは民警会社のオフィスよ。ここに持ち込まれた怪異の話は全て『依頼』になるわ」

 これまで全く口を開かずに話を聞いていたハルコが言う。社長である彼女の言葉が総意だった。

「それで、これからどうするかは考えてるの?」
「ああ……ひとまず、いったん里に太陰鈴を取りに行く。前よりは扱えるようになってるはずだからな。できれば誰かに同行して欲しい」
「わかった。じゃあ紅羽と碧都をつけるわ。蛍と榛斗は既にばらまかれている呪法の対処に当たって」
「了解しました」

 蛍が間髪入れずに答える。その反応の早さにサーペンティン時代の名残を感じた。調査に向いている二人を残すハルコの采配に反対する者は誰もいなかった。

「それで、いつから行くの?」
「今から」
「今から? 確かにギリギリ電車あるだろうけど」
「……金曜日の夜だからな。今から行けば、嬢ちゃんは学校休まなくていいだろ」
「この状況でおじさんは私の学校を心配してるわけ?」
「学校は行っておいた方がいいだろ」

 もっともな冬弦の言葉に、紅羽はそれ以上何も言えなくなってしまった。ひとまず今から出かける準備をして集合するということにして面々は解散することになった。
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