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番外編7(2024年文披31題)
4・小さな世界(アクアリウム)
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亘理梨杏の部屋にはたくさんのテラリウムが飾られている。テラリウムを作るのが趣味なのだ。ちなみにいくつかはバイト先である喫茶アルカイドにも飾られている。
透明な器の中に小さな世界がある。テラリウムを作るのが好きなのは、世界を作るのが好きとも言えるのかもしれない。梨杏は今し方完成したテラリウムを飾り、それを遠目に眺めて満足そうに頷いた。これで部屋の模様替えは完成だ。今年の夏のテーマはアクアリウムだ。カーテンなどで水槽を演出して、そこに自作のテラリウムを飾る。主役は由真からもらったイルカのぬいぐるみだ。梨杏は出来に満足しながら部屋の写真を撮影した。
写真をSNSに上げてから暫くすると、由真からメッセージが送られてくる。どうやら投稿を見たらしい。メッセージには一言、「クラゲ型の器なんてどこに売ってるの?」と書いてあった。
「さすがに売ってないって」
苦笑しながら返信をする。SNSを見てメッセージを送ってくるくらいなら、実物を見に来ればいいのに――とは言わなかった。
クラゲが漂い、イルカが優雅に泳ぐ海の中。梨杏はそこに由真の姿を思い浮かべた。由真は昔から水辺が好きだった。まるで水の中の方が生きやすいとでも言うように。でも空も好きだという。もしかしたら青くて広い場所ならどこでもいいのかもしれない。
「空も海も、人間には住めない場所なんだけどな」
テラリウムの小さな世界を背負った海月が揺れている。ここが本当に海の中ならいいのに、と梨杏は思った。
透明な器の中に小さな世界がある。テラリウムを作るのが好きなのは、世界を作るのが好きとも言えるのかもしれない。梨杏は今し方完成したテラリウムを飾り、それを遠目に眺めて満足そうに頷いた。これで部屋の模様替えは完成だ。今年の夏のテーマはアクアリウムだ。カーテンなどで水槽を演出して、そこに自作のテラリウムを飾る。主役は由真からもらったイルカのぬいぐるみだ。梨杏は出来に満足しながら部屋の写真を撮影した。
写真をSNSに上げてから暫くすると、由真からメッセージが送られてくる。どうやら投稿を見たらしい。メッセージには一言、「クラゲ型の器なんてどこに売ってるの?」と書いてあった。
「さすがに売ってないって」
苦笑しながら返信をする。SNSを見てメッセージを送ってくるくらいなら、実物を見に来ればいいのに――とは言わなかった。
クラゲが漂い、イルカが優雅に泳ぐ海の中。梨杏はそこに由真の姿を思い浮かべた。由真は昔から水辺が好きだった。まるで水の中の方が生きやすいとでも言うように。でも空も好きだという。もしかしたら青くて広い場所ならどこでもいいのかもしれない。
「空も海も、人間には住めない場所なんだけどな」
テラリウムの小さな世界を背負った海月が揺れている。ここが本当に海の中ならいいのに、と梨杏は思った。
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