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当主
第二話
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小豆坂の戦いから四年が過ぎた天文十五年。織田吉法師は、林秀貞・平手政秀・青山与三右衛門・内藤勝介がお供をし、古渡城へ向かう。
吉法師は正装姿で信秀の前に正座した。
「吉法師、余はこれから織田三郎信長と名乗るが良い。」
信長は頭を下げ
「この信長、緒田家繁栄のため、日々精進して行く所存にございます。」
「若様、元服祝着至極に存じます。」
平手政秀が笑みをこぼしながら信長に言った。
「政秀、儂は父を超える器になれると思うか?」
「それは若にしか分からぬことにございまする。しかしながらこの政秀、若を立派な織田家当主にしてご覧に入れましょう。」
天文十六年、政秀は信秀に目通りする。
「若様も良いお年になりました。何卒、初陣の方を。」
「政秀、丁度儂も倅(信長)の晴れ舞台を用意しようとしていた所じゃ。」
政秀は喜びながら
「では!」
「政秀を指南役とし、信長と共に吉良・大浜へ出陣せよ。」
信長は、出陣の支度をした。紅筋が入った頭巾と馬乗り羽織、馬鎧という出で立ちである。
「政秀、戦とはなんぞや。」
「若様、戦は敵を殺す事が重要ではございませぬ。如何に戦わずして勝つかが戦の定石でござる。」
伝令が信長の前に現れ
「駿河勢、三河の吉良・大浜に着陣している模様!」
「良し、いざ出陣!」
信長勢は吉良・大浜にいる駿河勢へ向け攻撃を開始し凄まじい勢いで敵を退けた。
信長は馬を城下町へ走らせ
「町を全て焼き払え!跡形も残すな!」
足軽兵に命令を下し、城下を焼き払う。夜空を見上げれば、昼のように明るかった。
信長の初陣は大勝利で終わる。
信秀は喜ぶ間もなく出陣を始める。
美濃国へ侵入した信秀は尾張国中の軍勢を指揮して、村々を焼き払い、斎藤道三の居城稲葉山城の城下に押し寄せた。
この少し前に信長は津島十五家筆頭堀田正貞の元へ駆けつけている。
「茶筅か。」
信長は正貞を上から指図するように
「百貫くれ。」
「無償で貸せると思うか若造。」
「無論承知。されど、父信秀は戦に勝つ。もうすぐ伝令が来るだろう。」
正貞の周りにいる家来は呆れ帰り。
「嘘も大概にしろ、敵は蝮の道三だぞ!尾張の小国大名の織田の相手ではないわ。」
周りの人間は頷き信長を冷たい目線で見た。
しかし一人の物見が正貞に
「織田勢大勝利にございまする!」
その時全員がどよめき
「爺、百貫くれるな。」
「良いだろう。二百貫やる。」
信秀が戦に勝った事により、正貞は信秀方に味方するように津島の商人に言い広めたがもう一人の物見がやって来た。
「今し方、決戦の様子を見て参りました。」
「あぁ、さっき来たやつに聞いた。」
今にも飛び跳ねる位浮き浮きしながら正貞は言ったが。
「織田勢、稲葉山城から退却の折、斎藤勢の奇襲に遭い総崩れ。斎藤方の大勝利にございまする。」
正貞は天地がひっくり返るほど驚いた。
「織田が負けただと!」
正貞は座り込んでしまい。
(茶筅め悪戯が過ぎようぞ自らの父の敗戦を銭に変えよったわ。)
正貞は涙を流しながら
「負けた。」と嘆いた。
二百貫の行方は分からないが、一説によると信長の友を国から逃がすための逃亡資金に充てたらしい。
吉法師は正装姿で信秀の前に正座した。
「吉法師、余はこれから織田三郎信長と名乗るが良い。」
信長は頭を下げ
「この信長、緒田家繁栄のため、日々精進して行く所存にございます。」
「若様、元服祝着至極に存じます。」
平手政秀が笑みをこぼしながら信長に言った。
「政秀、儂は父を超える器になれると思うか?」
「それは若にしか分からぬことにございまする。しかしながらこの政秀、若を立派な織田家当主にしてご覧に入れましょう。」
天文十六年、政秀は信秀に目通りする。
「若様も良いお年になりました。何卒、初陣の方を。」
「政秀、丁度儂も倅(信長)の晴れ舞台を用意しようとしていた所じゃ。」
政秀は喜びながら
「では!」
「政秀を指南役とし、信長と共に吉良・大浜へ出陣せよ。」
信長は、出陣の支度をした。紅筋が入った頭巾と馬乗り羽織、馬鎧という出で立ちである。
「政秀、戦とはなんぞや。」
「若様、戦は敵を殺す事が重要ではございませぬ。如何に戦わずして勝つかが戦の定石でござる。」
伝令が信長の前に現れ
「駿河勢、三河の吉良・大浜に着陣している模様!」
「良し、いざ出陣!」
信長勢は吉良・大浜にいる駿河勢へ向け攻撃を開始し凄まじい勢いで敵を退けた。
信長は馬を城下町へ走らせ
「町を全て焼き払え!跡形も残すな!」
足軽兵に命令を下し、城下を焼き払う。夜空を見上げれば、昼のように明るかった。
信長の初陣は大勝利で終わる。
信秀は喜ぶ間もなく出陣を始める。
美濃国へ侵入した信秀は尾張国中の軍勢を指揮して、村々を焼き払い、斎藤道三の居城稲葉山城の城下に押し寄せた。
この少し前に信長は津島十五家筆頭堀田正貞の元へ駆けつけている。
「茶筅か。」
信長は正貞を上から指図するように
「百貫くれ。」
「無償で貸せると思うか若造。」
「無論承知。されど、父信秀は戦に勝つ。もうすぐ伝令が来るだろう。」
正貞の周りにいる家来は呆れ帰り。
「嘘も大概にしろ、敵は蝮の道三だぞ!尾張の小国大名の織田の相手ではないわ。」
周りの人間は頷き信長を冷たい目線で見た。
しかし一人の物見が正貞に
「織田勢大勝利にございまする!」
その時全員がどよめき
「爺、百貫くれるな。」
「良いだろう。二百貫やる。」
信秀が戦に勝った事により、正貞は信秀方に味方するように津島の商人に言い広めたがもう一人の物見がやって来た。
「今し方、決戦の様子を見て参りました。」
「あぁ、さっき来たやつに聞いた。」
今にも飛び跳ねる位浮き浮きしながら正貞は言ったが。
「織田勢、稲葉山城から退却の折、斎藤勢の奇襲に遭い総崩れ。斎藤方の大勝利にございまする。」
正貞は天地がひっくり返るほど驚いた。
「織田が負けただと!」
正貞は座り込んでしまい。
(茶筅め悪戯が過ぎようぞ自らの父の敗戦を銭に変えよったわ。)
正貞は涙を流しながら
「負けた。」と嘆いた。
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