信長最後の五日間

石川 武義

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3日目

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 徳川家康という男は、この本能寺の変の最大の黒幕という説が浮上している。
 家康は、あらかじめ信長が光秀に討たれるという事が分かっていたのではないのだろうか。しかし、この説は証拠もなければ、確信もない。この物語は、家康は何も知らなかったということで描いて行こうと思う。

 安土城にやって来た家康は、信長に謁見した。
「久しぶりだな。」
「長らくお会いできなく、申し訳ございません。」
 信長と家康が世間話を続けていると、光秀が料理を運んで来た。
「京料理でございます。ごゆっくりとお召し上がりくださいませ。」
 光秀が頭を下げると家康が
「これは、かたじけない。では、いただきます。」
 家康が料理を口に運ぶと、信長もそれに合わせて口に運んだが。
「光秀、なんだこの料理は?」
「お口に会いませんでしょうか?」
 次の瞬間、信長が膳をひっくり返した。
「薄い。こんな料理を三河殿(家康の官位)に食べさせるのか。」
 信長の怒鳴り声が部屋中に響いた。
 光秀は、頭を下げ続け、家康は、困った顔をする。
(最悪な状態だ。)
 家康は、思った。
(この場を納めねば。)
 すると、家康は光秀に
「日向守殿(光秀の官位)、この料理は、美味でござる。信長様、私はこの料理を気に入りました。」
 すると、信長は腰を下ろして。
「光秀、おぬしは明後日、秀吉のもとへ行き、中国攻めに参加させようと思う。」
「しかし、三河守様のご接待は…」
「それは、他に任せる。」
「しかし。」
 信長は、堪忍袋の緒が切れたのか立ち上がり。
「わしに口答えするのか金柑!(光秀のあだ名)」
 信長は、光秀を蹴り倒した。
 そして、光秀は座り直して平伏し。
「申し訳ございません。この光秀、上様のために中国攻めに参加いたします。」
 これを聞いた信長は
「よし、もうよい。下がれ。」
 光秀は、「はっ。」と返事をして部屋を去った。
「三河殿、お恥ずかしい所をお店致した。面目ない。」
「いえいえ、大変でございますな。」

 この家康の接待の一件によって、光秀が謀反を起こす理由になった事は、言うまでもない。
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