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「お兄ちゃんは、高校生なの?部活はしてないの?」
「……俺は、帰宅部だよ」
「キタクブ?」
「何もせずに家に帰るってこと」
「そんな部活があるんだ。ふーん」
駄目だ……。
まるで理解してねー。
「お前はどうなんだよ。クラブ活動とかないの?」
「今日はクラブはないの。これから子供食堂に行くところだったの」
「子供食堂?なんだそれ。子供の店長かなんかいんのか」
「何それ~。違うよ。子供がやってるお店じゃないよ~」
そう言ってケタケタ笑う。
最初は、人見知りそうなガキだと思ったが、よく喋るし、よく笑う。
「子供食堂っていうのはね……」
なんでも、子供食堂と言うのは、親が仕事で帰りが遅かったりで、家で1人きりで飯を食べる子供が、安心して楽しく過ごせるように、安価で飯を提供してくれたりする場所、取り組みらしい。
どうやらこのガキの親も、仕事で遅くまで家に帰って来ないってことらしい。
「今日楽しみだったのに、雷怖いから行くの無理かな」
分かりやすいくらい沈んだ表情で俯く。
さっきまでの元気の良さは消え失せて、俯いた姿がやたらと小さく見える。
「なぁ、その食堂ってここから遠いのか?」
「うん。結構歩く」
「……よしっ。じゃあ、俺が一緒に付いて行ってやるよ」
自分ではあり得ないことを口走ってしまった。
いつもなら面倒ごとなんか見て見ぬふりだし、ガキはもっと苦手だし。
「えっ!いいの?」
急に糸で引っ張られた操り人形みたいに顔をこちらにピンと持ち上げる。
その姿がさっきまでの分かりやすく落ち込んだ姿と180度違うので、
おかしくて思わず噴き出しそうになる。
「ああ、俺も今日は暇だしな。子供食堂とやらに行ってみるか」
「やった~!ありがとう。でもお兄ちゃん、傘持ってないんじゃ」
確かに、忘れてた。俺、傘持ってなかったわ。
しょうがねぇ。濡れていくか。
覚悟を決めて、ガキの手を取って歩き出そうとすると、
ガラガラガラ。
「あら、健斗君?久しぶりね。ん?お嬢ちゃんもこんにちは」
「こんちわ」
「……こんにちは。はじめまして」
田中さんとは初対面らしく、ちょっと恥ずかしそうだが、礼儀正しく挨拶する。
「今日は、ひどい雨ね。雷もひどいし」
「さっき、近くに雷落ちたみたいな音しましたよね」
「そうね。今日はもうお店閉めちゃおうと思って。2人とも傘は持ってる?お嬢ちゃんは持ってるのね。健斗君は?」
「あ、俺は予報見てなかったんで。運悪かったっす」
「あら、だったら家の傘持って行って。返すのいつでもいいから」
「助かります。ありがとうございます!
じゃ、遠慮なくお借りします。」
「お嬢ちゃんは、お家まで遠いの?」
「今日は、お母さんのお仕事が遅いので、これから子供食堂に行くんです」
「まぁ、そうだったのね。ひどい雨だけど大丈夫?おばちゃん、送っていこうか?」
「ああ、田中さん、大丈夫っす。俺、こいつそこまで送って行きますよ」
「大丈夫?私が車でも運転できればいいんだけど。ひどい雨だから気を付けてね」
「うっす。傘お借りします!じゃあ」
田中さんが、ガキに何か小声で話しかけている。
「お嬢ちゃん、健斗君もね、小さい時によく学校帰りにここに来てたのよ。
もし良かったら、今度お嬢ちゃんも学校帰りに遊びにいらっしゃい」
「はい!ありがとうございます」
それから2人は笑って何やら楽しそうに話しをしている。
女同士っていうのは年齢差があっても、打ち解けるのが早いんだな。
コミュ力たけーな。
「おい。そろそろ、行こうぜ」
勢いよくワンタッチ傘を開き、歩き出すそうとすると、
少し遅れて小走りでガキが駆け寄ってくる。
「……俺は、帰宅部だよ」
「キタクブ?」
「何もせずに家に帰るってこと」
「そんな部活があるんだ。ふーん」
駄目だ……。
まるで理解してねー。
「お前はどうなんだよ。クラブ活動とかないの?」
「今日はクラブはないの。これから子供食堂に行くところだったの」
「子供食堂?なんだそれ。子供の店長かなんかいんのか」
「何それ~。違うよ。子供がやってるお店じゃないよ~」
そう言ってケタケタ笑う。
最初は、人見知りそうなガキだと思ったが、よく喋るし、よく笑う。
「子供食堂っていうのはね……」
なんでも、子供食堂と言うのは、親が仕事で帰りが遅かったりで、家で1人きりで飯を食べる子供が、安心して楽しく過ごせるように、安価で飯を提供してくれたりする場所、取り組みらしい。
どうやらこのガキの親も、仕事で遅くまで家に帰って来ないってことらしい。
「今日楽しみだったのに、雷怖いから行くの無理かな」
分かりやすいくらい沈んだ表情で俯く。
さっきまでの元気の良さは消え失せて、俯いた姿がやたらと小さく見える。
「なぁ、その食堂ってここから遠いのか?」
「うん。結構歩く」
「……よしっ。じゃあ、俺が一緒に付いて行ってやるよ」
自分ではあり得ないことを口走ってしまった。
いつもなら面倒ごとなんか見て見ぬふりだし、ガキはもっと苦手だし。
「えっ!いいの?」
急に糸で引っ張られた操り人形みたいに顔をこちらにピンと持ち上げる。
その姿がさっきまでの分かりやすく落ち込んだ姿と180度違うので、
おかしくて思わず噴き出しそうになる。
「ああ、俺も今日は暇だしな。子供食堂とやらに行ってみるか」
「やった~!ありがとう。でもお兄ちゃん、傘持ってないんじゃ」
確かに、忘れてた。俺、傘持ってなかったわ。
しょうがねぇ。濡れていくか。
覚悟を決めて、ガキの手を取って歩き出そうとすると、
ガラガラガラ。
「あら、健斗君?久しぶりね。ん?お嬢ちゃんもこんにちは」
「こんちわ」
「……こんにちは。はじめまして」
田中さんとは初対面らしく、ちょっと恥ずかしそうだが、礼儀正しく挨拶する。
「今日は、ひどい雨ね。雷もひどいし」
「さっき、近くに雷落ちたみたいな音しましたよね」
「そうね。今日はもうお店閉めちゃおうと思って。2人とも傘は持ってる?お嬢ちゃんは持ってるのね。健斗君は?」
「あ、俺は予報見てなかったんで。運悪かったっす」
「あら、だったら家の傘持って行って。返すのいつでもいいから」
「助かります。ありがとうございます!
じゃ、遠慮なくお借りします。」
「お嬢ちゃんは、お家まで遠いの?」
「今日は、お母さんのお仕事が遅いので、これから子供食堂に行くんです」
「まぁ、そうだったのね。ひどい雨だけど大丈夫?おばちゃん、送っていこうか?」
「ああ、田中さん、大丈夫っす。俺、こいつそこまで送って行きますよ」
「大丈夫?私が車でも運転できればいいんだけど。ひどい雨だから気を付けてね」
「うっす。傘お借りします!じゃあ」
田中さんが、ガキに何か小声で話しかけている。
「お嬢ちゃん、健斗君もね、小さい時によく学校帰りにここに来てたのよ。
もし良かったら、今度お嬢ちゃんも学校帰りに遊びにいらっしゃい」
「はい!ありがとうございます」
それから2人は笑って何やら楽しそうに話しをしている。
女同士っていうのは年齢差があっても、打ち解けるのが早いんだな。
コミュ力たけーな。
「おい。そろそろ、行こうぜ」
勢いよくワンタッチ傘を開き、歩き出すそうとすると、
少し遅れて小走りでガキが駆け寄ってくる。
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