3 / 8
3
しおりを挟む
【ゆめ屋】は異様な存在感を放ちながらも、その怪しさから殆ど誰からも近寄られずに、ひっそりと営業していた。
地下に続く階段を下りると、昭和感の残るドアがあり、「OPEN」と書かれたプレートが音を立てて揺れていた。
生ぬるい空気が菜々の首元に纏わりつく。
そのドアを開けたら引き返すことはできないかもしれない……
そんな不安が菜々を襲った。
――思い切ってドアを叩いてみる。
返事はない……
菜々が恐る恐るドアを押し、中へ入ると、焼きそばのように細かいパーマをかけたロングヘアの女性がカウンターからこちらを睨んだ。
その威圧感に、菜々は思わず怯む。
「あ、あの……」
やっと聞こえるくらいの声で、菜々が口を開くと、
「あんた、もしかして……」
この店の店主、知世が一歩、菜々に近づく。
菜々が後退ると、知世はまた距離を詰める。
「その子、あんたがやったの?」
鬼のような形相で知世が尋ねた。
菜々は両手で抱えた猫を差し出して、
「い、いいえ。そ、その先の公園近くの道路脇で見つけました……」
と知世に答えた。
すると知世は菜々の背に合わせて腰を屈め、まじまじと彼女の顔を見た。
「どうやら嘘はついてないみたいだね……疑ってごめんね。悪かった」
そう言うと、知世は意外なほど優しい目をして菜々に頭を下げた。
菜々は、その知世の表情の変化に驚きながらも、事の成り行きを説明した。
眠るような顔で横たわる愛猫のお腹に触れ、女は鼻をすすった。
しかし、すぐに菜々に顔を向け、
「あんた、猫の死体が怖くなかったの?」
とストレートに尋ねた。
「はい、少し怖かったです……。でも可哀想で放っておけませんでした」
知世は菜々が店に来るまでに取った行動や、話す時の表情、口ぶりから、この子が何か問題を抱えながらも強く生きてきた少女なのではないかと考えた。
「あんたは勇気もあるし、優しい子なんだね。本当にありがとう。ちょっと待ってて」
知世はカウンターの影に消えたかと思うと、スナック菓子とジュースをお盆に載せて戻ってきた。
「こんな物しかないけど、良かったら食べてきなよ」
知世は見た目に反し、根は優しそうな人物だった。
顔もよく見れば美人に入る部類だ。
だが、その圧倒的に怪しいファッションセンスで全てを台無しにしているタイプだった。
菜々が礼を言い、無言でおやつを食べていると、
「ところであんた、なんでステラが、うちの子だって分かったんだい?」
と知世が訊く。
菜々はスナック菓子を喉に詰まらせそうになりながら、
「あの……信じてもらえますか?」
と、少し窺うような目で知世を見つめ返す。
「まぁ、聞く前から言われてもね。とりあえず話してみて」
と知世は言い、笑みを零した。
地下に続く階段を下りると、昭和感の残るドアがあり、「OPEN」と書かれたプレートが音を立てて揺れていた。
生ぬるい空気が菜々の首元に纏わりつく。
そのドアを開けたら引き返すことはできないかもしれない……
そんな不安が菜々を襲った。
――思い切ってドアを叩いてみる。
返事はない……
菜々が恐る恐るドアを押し、中へ入ると、焼きそばのように細かいパーマをかけたロングヘアの女性がカウンターからこちらを睨んだ。
その威圧感に、菜々は思わず怯む。
「あ、あの……」
やっと聞こえるくらいの声で、菜々が口を開くと、
「あんた、もしかして……」
この店の店主、知世が一歩、菜々に近づく。
菜々が後退ると、知世はまた距離を詰める。
「その子、あんたがやったの?」
鬼のような形相で知世が尋ねた。
菜々は両手で抱えた猫を差し出して、
「い、いいえ。そ、その先の公園近くの道路脇で見つけました……」
と知世に答えた。
すると知世は菜々の背に合わせて腰を屈め、まじまじと彼女の顔を見た。
「どうやら嘘はついてないみたいだね……疑ってごめんね。悪かった」
そう言うと、知世は意外なほど優しい目をして菜々に頭を下げた。
菜々は、その知世の表情の変化に驚きながらも、事の成り行きを説明した。
眠るような顔で横たわる愛猫のお腹に触れ、女は鼻をすすった。
しかし、すぐに菜々に顔を向け、
「あんた、猫の死体が怖くなかったの?」
とストレートに尋ねた。
「はい、少し怖かったです……。でも可哀想で放っておけませんでした」
知世は菜々が店に来るまでに取った行動や、話す時の表情、口ぶりから、この子が何か問題を抱えながらも強く生きてきた少女なのではないかと考えた。
「あんたは勇気もあるし、優しい子なんだね。本当にありがとう。ちょっと待ってて」
知世はカウンターの影に消えたかと思うと、スナック菓子とジュースをお盆に載せて戻ってきた。
「こんな物しかないけど、良かったら食べてきなよ」
知世は見た目に反し、根は優しそうな人物だった。
顔もよく見れば美人に入る部類だ。
だが、その圧倒的に怪しいファッションセンスで全てを台無しにしているタイプだった。
菜々が礼を言い、無言でおやつを食べていると、
「ところであんた、なんでステラが、うちの子だって分かったんだい?」
と知世が訊く。
菜々はスナック菓子を喉に詰まらせそうになりながら、
「あの……信じてもらえますか?」
と、少し窺うような目で知世を見つめ返す。
「まぁ、聞く前から言われてもね。とりあえず話してみて」
と知世は言い、笑みを零した。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
白椿の咲く日~遠い日の約束
紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに姉の稚子(わかこ)と会う。真由子の母、雪江は妻を亡くした水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。実之には俊之、稚子、靖之の三人の子がいた。
稚子と話をしているうちに、真由子は雪江と庭の白椿の木に、何か関係があることに気がつき……
大人の恋物語です。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる