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その日を境に、二人は年齢差、三十歳の奇妙な縁で繋がった友達になった。
菜々は、父親と二人暮らし。
母親は、菜々が小さい時に外に男を作り、蒸発してしまったという。
昔は、祖母が菜々の様子を時々、見に来てくれていたが、最近は菜々も高校生になったので、父が会社から帰るまでは、知世の店でアルバイトをして過ごしていた。
ゆめ屋の女店主、知世は占い喫茶を経営している。
菜々と出逢ってから七年経ったが、知世の風貌は、その時から、ちっとも変わらない。
一方、菜々の方は、以前より明るい性格になり、ショートカットが似合う女子高生になっていた。
――カランコロン。
ドアベルの音が鳴り、お客様がやって来る。
「いらっしゃいませ」
暗い店内に不釣り合いな明るい菜々の声。
普通のアルバイトなら、大いに喜ばしい明るさも、この店では却って店主の機嫌を損ねる。
占いを主としている店だから、雰囲気は重要なのだ。
やって来た客は、一人の老女。
初来店のようで、キョロキョロと不安そうに店内を見渡す。
「いらっしゃいませ。本日の御利用は?」
店内に暫し沈黙が流れる。
「……おじいさんに逢いたくて」
と、老女は喉の奥から絞り出すような声で言う。
菜々は、自分の仕事だと認識し、老女をパーテーションで区切られた自分の方のスペースに招く。
ゆめ屋では、知世の占い(実は予知能力)と菜々のサイコメトリーを使用したサービスのどちらかを選んで受けることができる。
また、客の希望によってドリンクも提供している為、かろうじて喫茶店という体をなしていた。
菜々は老婆を自分の向かい側の席に座らせ、
「こんにちは。じゃあ、早速、始めましょうか」
と、明るく声をかけた。
それから菜々は、老婆が持ってきた遺品の帽子をテーブルの上に置いてもらい、目を閉じ、その遺品に優しく手で触れる。
暫くすると、菜々の頭の中に老婆の逢いたい彼女の旦那さんの記憶と感情が飛び込んできた。
――静かに目を開けると、菜々の頬に一筋の涙が伝った。
目の前の老婆は依頼しておきながら、少し疑わしそうな顔で菜々を見ている。
菜々は、ゆっくりと頭の中に一気に流れてきた感情や記憶を整理し、話し始める。
「絹江さん、何か源三さん訊いてみたいことはありますか?」
老婆は自分の名前と旦那の名前を言い当てられたと思い、口をあんぐりと開けている。
この情報は先ほど来店されてすぐにメモ用紙に書いてもらった情報だ。
依頼者は高齢の為か、そのことをすっかり忘れているようだ。
「そ、そうね……今は、あちらでどんな生活を送っているのか知りたいわ」
と老婆が、おろおろしながら訊く。
菜々はもう一度、目を閉じて集中する。
「あちらでは、お友達の虎次郎さんと将棋を指しているそうです。それからウォーキングを続けているそうですよ」
と菜々が伝えると、老婆は、ますます目を丸くした。
今、菜々が話した内容は、関係者しか知りえないことだった。
老婆は、すっかり菜々を信頼したようで、次々に質問を浴びせた。
菜々は、父親と二人暮らし。
母親は、菜々が小さい時に外に男を作り、蒸発してしまったという。
昔は、祖母が菜々の様子を時々、見に来てくれていたが、最近は菜々も高校生になったので、父が会社から帰るまでは、知世の店でアルバイトをして過ごしていた。
ゆめ屋の女店主、知世は占い喫茶を経営している。
菜々と出逢ってから七年経ったが、知世の風貌は、その時から、ちっとも変わらない。
一方、菜々の方は、以前より明るい性格になり、ショートカットが似合う女子高生になっていた。
――カランコロン。
ドアベルの音が鳴り、お客様がやって来る。
「いらっしゃいませ」
暗い店内に不釣り合いな明るい菜々の声。
普通のアルバイトなら、大いに喜ばしい明るさも、この店では却って店主の機嫌を損ねる。
占いを主としている店だから、雰囲気は重要なのだ。
やって来た客は、一人の老女。
初来店のようで、キョロキョロと不安そうに店内を見渡す。
「いらっしゃいませ。本日の御利用は?」
店内に暫し沈黙が流れる。
「……おじいさんに逢いたくて」
と、老女は喉の奥から絞り出すような声で言う。
菜々は、自分の仕事だと認識し、老女をパーテーションで区切られた自分の方のスペースに招く。
ゆめ屋では、知世の占い(実は予知能力)と菜々のサイコメトリーを使用したサービスのどちらかを選んで受けることができる。
また、客の希望によってドリンクも提供している為、かろうじて喫茶店という体をなしていた。
菜々は老婆を自分の向かい側の席に座らせ、
「こんにちは。じゃあ、早速、始めましょうか」
と、明るく声をかけた。
それから菜々は、老婆が持ってきた遺品の帽子をテーブルの上に置いてもらい、目を閉じ、その遺品に優しく手で触れる。
暫くすると、菜々の頭の中に老婆の逢いたい彼女の旦那さんの記憶と感情が飛び込んできた。
――静かに目を開けると、菜々の頬に一筋の涙が伝った。
目の前の老婆は依頼しておきながら、少し疑わしそうな顔で菜々を見ている。
菜々は、ゆっくりと頭の中に一気に流れてきた感情や記憶を整理し、話し始める。
「絹江さん、何か源三さん訊いてみたいことはありますか?」
老婆は自分の名前と旦那の名前を言い当てられたと思い、口をあんぐりと開けている。
この情報は先ほど来店されてすぐにメモ用紙に書いてもらった情報だ。
依頼者は高齢の為か、そのことをすっかり忘れているようだ。
「そ、そうね……今は、あちらでどんな生活を送っているのか知りたいわ」
と老婆が、おろおろしながら訊く。
菜々はもう一度、目を閉じて集中する。
「あちらでは、お友達の虎次郎さんと将棋を指しているそうです。それからウォーキングを続けているそうですよ」
と菜々が伝えると、老婆は、ますます目を丸くした。
今、菜々が話した内容は、関係者しか知りえないことだった。
老婆は、すっかり菜々を信頼したようで、次々に質問を浴びせた。
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