8 / 8
8
しおりを挟む
菜々が産まれた時の母の涙声、ハイハイする菜々と遊ぶ母の朗らかな声、幼稚園の入園式の時に菜々を注意する母の甲高い声、小学校の授業参観の帰りに菜々を褒めてくれた時の母の誇らしげな声……
全て菜々の頭の中に流れてきた。
菜々は母の妹、百合子の手を強く振り解き、涙を見せまいと背を向けた。
「二度と来ないでください。それから伝えてください……恨みに思うほど、あなたのことを憶えていませんと」
百合子は「はい」と一言だけ答え、店を出て行った。
きっと百合子の頭の中にイメージとして、全て流れてしまっただろう。
どれだけ菜々が母を求め、愛していたかが……
日頃、人に癒しを与えた彼女の能力が、これほどまで残酷に感じられる出来事はなかった。
そこへ知世が帰ってきた。
「菜々、もしかして今の人……」
「…………」
菜々は何も言わず俯いていた。
「菜々、ごめん。この間、あんたに言ってなかったんだ……実は見えてたんだよ、今日のこと……菜々、本当はとっくに許してるんだろ? 母さんのこと」
菜々は知世に抱きついた。
相変わらずセンスの悪い知世のお気に入りの服は、菜々の涙でぐしょ濡れになった。
全て菜々の頭の中に流れてきた。
菜々は母の妹、百合子の手を強く振り解き、涙を見せまいと背を向けた。
「二度と来ないでください。それから伝えてください……恨みに思うほど、あなたのことを憶えていませんと」
百合子は「はい」と一言だけ答え、店を出て行った。
きっと百合子の頭の中にイメージとして、全て流れてしまっただろう。
どれだけ菜々が母を求め、愛していたかが……
日頃、人に癒しを与えた彼女の能力が、これほどまで残酷に感じられる出来事はなかった。
そこへ知世が帰ってきた。
「菜々、もしかして今の人……」
「…………」
菜々は何も言わず俯いていた。
「菜々、ごめん。この間、あんたに言ってなかったんだ……実は見えてたんだよ、今日のこと……菜々、本当はとっくに許してるんだろ? 母さんのこと」
菜々は知世に抱きついた。
相変わらずセンスの悪い知世のお気に入りの服は、菜々の涙でぐしょ濡れになった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
白椿の咲く日~遠い日の約束
紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに姉の稚子(わかこ)と会う。真由子の母、雪江は妻を亡くした水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。実之には俊之、稚子、靖之の三人の子がいた。
稚子と話をしているうちに、真由子は雪江と庭の白椿の木に、何か関係があることに気がつき……
大人の恋物語です。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる