夢じゃなかった!?

Rin’

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異世界転移前 準備

夢の通い路 前世 善行

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‐‐‐‐‐誰かの記憶が流れ込んでくる。

‐‐‐‐‐息苦しい。

体がなまりのように重たい。ようやく開いた瞼はぼやけた世界を映していた。いつもより狭い視界、何故かモノトーンで見える。

‐‐‐此処はどこなんだ?

エルシオンにとって、初めて目にするものばかり。ようやく動かない体で思案し、自分が、ある室内の床に横たわっていることを理解した。


回りに気を配るばかりだったが、ふと自分の手を見てみる。

白く短い毛並み、ほっそりとした動物の足のようなものが2本重なっていた。
わからない。どうしてこんなことに?

足音が聞こえる。話し声が重なっている?そんな時、自分と別の意識が浮上した。

「ただいまー。太郎はどう?」

「お帰り。綾子。いつもの場所で横になっているわ。」

「太郎ね、昨日と同じで急に起き上がって倒れそうになりなっても自分で歩いておしっこシートまで、おしっこできたのよ。偉かったよ。」

‐‐‐きこえる

‐‐‐きた きた…… 帰ってきた

‐‐‐良かった。ぼくのいのちがつきるまえにおねえちゃんはかえってきてくれた

うれしい

うれしい

おかえりって、つえたい
うごけ うごけ さいごにもういちど
 
ファサ ……



「ただいま太郎」

おかえりなさい

ファサ……


「晩ごはん取ってくるけど、すぐもどるからね。」



太郎の心音はやがて

とくん…とくん…… とく……… と…………



太郎は魂だけの霊体となってからも佐藤家の家族を、綾子を守ろうと側にいた。

そして、あの雷がとどろき。異空間に迷い混んだ綾子の側で神が現れるまで吠え続け、神のいきはからいで刹那せつなの交流を果たした。


ワン!・・ワンワン!・・ワンワン!・・
?!ッ・・ワッ!!・・ギャワッ!!!

ちょっ。焦るな。落ち着け。呼んでいたのはおまえだな?霊魂の身でよくもまぁ…。
もう大丈夫だ。そっちの彼女はお前のおかげでまだ何とかなる。偉いぞ。よく守り続けたな。まずはお前の回復からだ。


さあ、霊魂の揺らぎがましになったし、色々聞かせてもらいたい。こちらとしては、彼女には訳あって詳しく話せない事情云々うんぬんはあるが、できるだけ彼女の希望を叶える形で異世界転移に納得してもらわなければいけない。協力してくれるか?

ワン! ファサ…ファサ

よしよし。かしこいな。助かる。手始めにお前の知る彼女について教えてくれ。



わかった。じゃあ彼女を起こすから、そこからは怖がらせないよう太郎が勧める話し方にしてみる。サポートよろしく 。

ワン♪ ファサ…ファサ



ツン

スリスリ…スリスリ…スリスリ

ファサファサ…ファサファサ…ファサファサ。


うれしい うれしい
ファサファサ…ファサファサ

思い出した。
綾子という大切な存在を守るため、死してからも側で守る道を選んだ自分。

後悔はない。



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