夢じゃなかった!?

Rin’

文字の大きさ
146 / 599
エスリアール王城 出会い

腹ごなしは歌で4

しおりを挟む
“アーヤと神託者が世話になる。”

「はい、迷客と神託者を我が学院に迎えられること、光栄に存じます。」

“アーヤ、他国に赴く前に歌を届けてくれたのだな。感謝する。”

「いえ、ちょうどタイミングが合ったのもありましたが、編入したら他国にいるのでお会いするのは難しいかなと思っておりました。」

“そうだな。自国なら出入りに不自由はないが、余所よその聖獣の領域となると多少の影響はあるかもしれない。”

“相変わらずそなたの歌は、心地ここちよかったぞ。それに、魔力が更に込められ我の力も満たされた。守護聖獣としての加護も上がった。”

「お役にたてて私も嬉しいです。」

“出先と申していたな。長く引き留めては悪い。我はそろそろ戻るとしよう。

アーヤの師となる者だったか。そなたは鳳の加護があったが故に力の制御が大変だったろう。

その分、力の扱いや苦労を知る者としてアーヤのこと呉々くれぐれも頼んだぞ。

神託者共々心しておけ、アーヤが呼べは我が翔けつけることを。”

「はい、心得ました。アーヤさんは必ずお守り致しますと私の真名に誓いましょう。」

「オルフェウス様、ご心配ありがとうございます。私も魔法や剣を学んで、自分の身は守れるよう心身共に強くなれるように頑張りますから。」


“そなたは迷客なのだから、程々にな。


さらば。アーヤ、鳳の加護者。”


オルフェウス様は空を翔るようにキラキラと去って行った。お帰りは突風はなくて静か。

来るときは急いで来てくれているのかな?なんて思ってしまった。ふふふ。


「アーヤさん、聖獣と普通に話していましたね。怖くはないのですか?」

「初めて、お会いした時は緊張とすごい存在感に萎縮してしまいましたが、二回目でしたし、何となく免疫というか私を案じてくれる存在とわかっているので、怖くはないです。緊張はしましたよ?」

「そうですか。私なんて初めて聖獣を前にして今頃…震えが。」

無意識に握っていた両手を開くと、緊張でうっすら汗ばんでいたのだろう。冷たい手が震えているのがわかった。

「サリアンさんでもやっぱり、緊張しますよね。少し座りませんか?」

「ええ、そうですね。」

「サリアンさんのおかげさまで、麒麟様に歌を届けられました。ありがとうございました。」

「いえ、こちらこそ聖獣降臨に立ち合わせて頂き大変貴重な経験をさせて頂きました。お礼を言うのはこちらの方です。ありがとうございました。」

「いえいえ、連れて来て貰えないと歌えなかったので、サリアンさんのおかげですって、あはは、別にお礼を向きになって言い合うこともないですね。」

「フフフ、そうですね。お互いにありがとうでよしとしましょう。」

「まだ、震えが止まりませんか?」
サリアンさんの手を見つめて聞く。

「…心配ありがとうございます。大丈夫ですよ。…ね?。」

ね?


サリアンさんのまだ少しひんやりした手が私の地面についていた手の上に被さって、ね?とかわいく微笑んでいる。

「と、止まって良かったですね。」

「はい。落ち着きました。」

「えっと、今何時ごろですかね?」
さりげなく手をずらす私。

「今は、1時35分ですね。まだ少し早いので、2時位にブルーローズに着くように、ここで過ごすか、スティールで空中散歩かアーヤさんはどちらがいいですか?」

「ここでまったりのんびりか、空中散歩…迷う二択です。う~ん。」

お腹が一杯の後って眠くなるよね。麒麟様に無事歌を届け終わってほっとしたからか微かに眠気が。でも、こんな森で昼寝はいかんでしょう。しかもサリアンさんと二人っきりでとか。

森でのんびりは睡魔に襲われる可能性大だからやめとこう。空中散歩なら国の風景や景色がわかるかもしれない。

「スティールで空中散歩がいいです。」

「おや、そちらを選ばれましたか。私としては森でのんびりしだったので少し残念です。」

「えっ?」

「フフ、冗談ですよ。どちらもアーヤさんと過ごせるだけで文句などありません。」

ん?冗談?サリアンさんの冗談はどこまでなのか、本気かわからないよ。ま、いっか。

「スティールのいる方に戻りましょうか。えーと確かあの辺、あっちですよね?」

歩き始めた私の後ろをサリアンさんが呼び止めた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...