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Op.1 Overture ーその始まりー
第一楽章(前編)
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時々、言葉を失う瞬間がある。
それでも、いや寧ろそんな時ほど、真っ白な世界は色付くんだ。
色褪せない青春を、かけがえのない思い出を、忘れられない過去を、その身に刻み込むために。
溢れ出す奔流を止める術を僕は知らない。
だから流れのなかを、ゆっくりと…
† † †
桜。山桜でも秋桜でもなく、桜。ソメイヨシノ。
時に華やかに、時に切なく、人の心の中に一ひら、その薄いピンクをそっと乗せて、ゆっくりと暖まってゆくような花。
見るのは何年ぶりだろうか、なんて振り返ると、なんだたった一年と半年ぶりだった。空白の500と数日。所詮人は斯様に小さいものなのか。
門をくぐる。煉瓦造りの肩の高さほどの、何の変哲もない門を。踏み込んだ敷地にはさほどの感傷も覚えず、まるで毎日のことかのように歩く。玄関まではこれほど遠かったのか、と、静かに息を吐き出す。それだけ歩くことと疎遠だったのか。
先週届いた資料には、
【2年5組6番 黒木宥大】
と記されていた。変わらなかったのは故意か奇遇か。何の迷いもなく靴をしまい、履き替えた。
髪は伸びたし少し痩せたからか、知っている顔は全てこちらに向かず通りすぎていく。何だ、思ったほど、これからの二年は苦では無いかもしれない。
久々の教室。もう既に十数名の〈トシシタ〉が居て、三つのグループを形成していた。ついさっき抱いた針の穴ほどの希望は儚く埋められた。
部を辞め休学して一年半、人と関わらない時間を過ごした俺は、今後の展望を曇天に重ねて窓から眺めていた。
それでも、いや寧ろそんな時ほど、真っ白な世界は色付くんだ。
色褪せない青春を、かけがえのない思い出を、忘れられない過去を、その身に刻み込むために。
溢れ出す奔流を止める術を僕は知らない。
だから流れのなかを、ゆっくりと…
† † †
桜。山桜でも秋桜でもなく、桜。ソメイヨシノ。
時に華やかに、時に切なく、人の心の中に一ひら、その薄いピンクをそっと乗せて、ゆっくりと暖まってゆくような花。
見るのは何年ぶりだろうか、なんて振り返ると、なんだたった一年と半年ぶりだった。空白の500と数日。所詮人は斯様に小さいものなのか。
門をくぐる。煉瓦造りの肩の高さほどの、何の変哲もない門を。踏み込んだ敷地にはさほどの感傷も覚えず、まるで毎日のことかのように歩く。玄関まではこれほど遠かったのか、と、静かに息を吐き出す。それだけ歩くことと疎遠だったのか。
先週届いた資料には、
【2年5組6番 黒木宥大】
と記されていた。変わらなかったのは故意か奇遇か。何の迷いもなく靴をしまい、履き替えた。
髪は伸びたし少し痩せたからか、知っている顔は全てこちらに向かず通りすぎていく。何だ、思ったほど、これからの二年は苦では無いかもしれない。
久々の教室。もう既に十数名の〈トシシタ〉が居て、三つのグループを形成していた。ついさっき抱いた針の穴ほどの希望は儚く埋められた。
部を辞め休学して一年半、人と関わらない時間を過ごした俺は、今後の展望を曇天に重ねて窓から眺めていた。
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