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Op.1 Overture ーその始まりー
第一楽章(後編)
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今日からまた、少し新しくなる環境の中で、私は音楽をする。
夏までに、どれだけ多くの仲間が増えるだろう。どんな仲間と出会えるのだろう。期待で胸をいっぱいにして、門をくぐった。【都立楢橋西高等学校】の門を。
玄関前はごった返している。丁度混雑のピークに来てしまったみたいだ。人混みの中で、何とか自分の名前を見つけた。
【2年5組38番 山城桜音羽】
急いで靴を履き替えて階段を駆け上がる。逸る鼓動に重なるようにな足音とともに。
教室に入るともうすでに二十人以上は居るだろうか、いくつかの集団になって早くも盛り上がりを見せている。
「あ、桜音ちゃん?今年は同じクラスだね!よろしく!」
そう明るく話しかけてきたのは同じ吹奏楽部の晴香だった。晴香はフルート、私はオーボエを担当している。位置が近いこともあって去年からよく一緒にいた。
「晴香!よろしくね!」
「うん!」
そのまま会話は終わり、晴香はそれまでいたグループでまた話し始めた。本当によくわかってくれている。私はクラスが変わると、必ず全員の様子を観察する。不自然に見えない程度に。これは癖のようなもので、ずっと昔から、それこそ小学生くらいの頃からしていることだ。それを知っている晴香は私を無理に会話に巻き込まなかったのだ。去年も同じクラスだったメンバーは六人。思ったほど多くはなかった。名札がないのが一つ時折厄介なうちの学校であるが、さすがに一年間学校に居ると大方学年全員の顔くらいは分かるようになっていて、知らない顔は当然のようにいなかった。
と思ったが、私は思わず目を疑った。知らない顔が一人。基本的に窓の方を向いたまま、たまに正面を向いて気怠げに、後頭部を掻く。三つほどのグループで群れている男子達の中にいてたった一人、どのグループにもいない。転校生だろうか、と思ったけど、その命題はすぐに却下された。転校生は二つ隣の3組に一人居るだけだと、知り合いや仲の良い先生から聞いている。じゃあ、誰?
その時、ふと視界に入った彼の仕種は私に彼が何者であるかを知るための大きなヒントを一つ与えた。体育館から聞こえて来る吹奏楽部の音(というのも、うちの学校では基本的に三年生だけで式典の演奏をする。)に合わせて、右手の親指以外の四本が微かに動いている。それが急に止まったかと思うと、また不機嫌そうに頭を掻く。あの動きは多分チューバ奏者のそれだ。経験があるのだろうか。
急にその正体不明の彼が振り返った。目が合った。観察がバレたのはいつぶりだろうか。指の動きは止まり、目を逸らして、何事もなかったかのように彼はまた外を眺めはじめた。
あ、名簿。見たら彼の名前だけは分かるんじゃないだろうかと思って玄関で配布された名簿を見た。彼が座っている席は教室向かって入口と反対、左の窓側の、一番後ろの席、6番。【黒木宥大】と記されていた。
その時はまだ知らなかった。黒木くんの抱えた重荷を。
夏までに、どれだけ多くの仲間が増えるだろう。どんな仲間と出会えるのだろう。期待で胸をいっぱいにして、門をくぐった。【都立楢橋西高等学校】の門を。
玄関前はごった返している。丁度混雑のピークに来てしまったみたいだ。人混みの中で、何とか自分の名前を見つけた。
【2年5組38番 山城桜音羽】
急いで靴を履き替えて階段を駆け上がる。逸る鼓動に重なるようにな足音とともに。
教室に入るともうすでに二十人以上は居るだろうか、いくつかの集団になって早くも盛り上がりを見せている。
「あ、桜音ちゃん?今年は同じクラスだね!よろしく!」
そう明るく話しかけてきたのは同じ吹奏楽部の晴香だった。晴香はフルート、私はオーボエを担当している。位置が近いこともあって去年からよく一緒にいた。
「晴香!よろしくね!」
「うん!」
そのまま会話は終わり、晴香はそれまでいたグループでまた話し始めた。本当によくわかってくれている。私はクラスが変わると、必ず全員の様子を観察する。不自然に見えない程度に。これは癖のようなもので、ずっと昔から、それこそ小学生くらいの頃からしていることだ。それを知っている晴香は私を無理に会話に巻き込まなかったのだ。去年も同じクラスだったメンバーは六人。思ったほど多くはなかった。名札がないのが一つ時折厄介なうちの学校であるが、さすがに一年間学校に居ると大方学年全員の顔くらいは分かるようになっていて、知らない顔は当然のようにいなかった。
と思ったが、私は思わず目を疑った。知らない顔が一人。基本的に窓の方を向いたまま、たまに正面を向いて気怠げに、後頭部を掻く。三つほどのグループで群れている男子達の中にいてたった一人、どのグループにもいない。転校生だろうか、と思ったけど、その命題はすぐに却下された。転校生は二つ隣の3組に一人居るだけだと、知り合いや仲の良い先生から聞いている。じゃあ、誰?
その時、ふと視界に入った彼の仕種は私に彼が何者であるかを知るための大きなヒントを一つ与えた。体育館から聞こえて来る吹奏楽部の音(というのも、うちの学校では基本的に三年生だけで式典の演奏をする。)に合わせて、右手の親指以外の四本が微かに動いている。それが急に止まったかと思うと、また不機嫌そうに頭を掻く。あの動きは多分チューバ奏者のそれだ。経験があるのだろうか。
急にその正体不明の彼が振り返った。目が合った。観察がバレたのはいつぶりだろうか。指の動きは止まり、目を逸らして、何事もなかったかのように彼はまた外を眺めはじめた。
あ、名簿。見たら彼の名前だけは分かるんじゃないだろうかと思って玄関で配布された名簿を見た。彼が座っている席は教室向かって入口と反対、左の窓側の、一番後ろの席、6番。【黒木宥大】と記されていた。
その時はまだ知らなかった。黒木くんの抱えた重荷を。
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