14 / 24
Op.2 帰還と始動 Tempo di Marcia
第二マーチ(前編)
しおりを挟む
そして時刻は午後一時。兄は車で家に迎えに来た。
「よし、んじゃあ行くか!」
「………行き先聞いてないんですがそれは…?」
「まーまー黙ってついてこい!悪いようにはしねーよ。」
「悪いようになりそうだったらその場でハンドル乗っ取るからなクソ兄貴。」
「おー怖い怖い。安全運転でお送りしまーすぅ。」
相変わらず飄々とした、とかいうレベルではないクソ兄貴である。
車を飛ばして四、五十分といったところだろうか。その間はずっとレスピーギの交響詩『ローマの祭り』と『ローマの松』が車中には流れていた。
「着いたぞ。」
そう言われて車を降りたのは横浜だった。
入ったのは小さな建物だった。地下への階段を降りる。車を停めたのはすぐ近くの駐車場だった。三度、兄がドアをノックする。開いてる、という低くよく響きそうな声が聞こえた。
兄と共に中に入った。するとそこには、
大量の楽器。
「ほら、選ぶぞ。世話になります。古川さん。」
古川さん、と呼ばれたさっきの声の主は、よっしゃ、とゆっくり腰を上げた。
「選ぶって……………?」
「お前の楽器を、だ。」
…………………………………………………………………………え。
「ええええええええええええええええええええええええええええ!」
「どした不満か?」
いやそうじゃなくて、
「本気で?」
「冗談でこんなこと言っても利益ねーわ偏屈め。」
確かに道理だ。
しかしまさか行き先不明のドライブ先がまさか楽器屋で、しかもそのまま楽器を買うことになるとは。
困惑しかない。
「黒木君の弟君。初めまして、かな?」
古川さんと呼ばれていた男性が話しかけてきた。
「初めまして。黒木宥大と申します。兄がお世話になっているようで…。」
「いやー、彼はうちの上客だからねえ。むしろこっちがお世話になってるかもしれないくらいだよ。」
「はあ……」
クソ兄貴はどうやら金銭的な余裕が半端ないようです。
とりあえず何台か持ってきてみようか。と呟いて古川さんは
あっという間に五台のケースを持ってきた。
「調性はCで良いんだよね?」
(調性…楽器の基準となる音の高さのこと。チューバの場合は主にBC、E、Fがあり、プレイスタイルや音色の差で決める。)
え?今Bなんですけど…と困惑していると兄貴がええ。Cでお願いします。と返す。
「何故にC管で?」
「今後長く使おうと思ったらBよりCのほうが色々対応しやすいしな。お前どうせ高校で終わんねーだろ?」
まあそのつもりだし、
「なるほど。あざっす。」
という訳で五台、いざ、試奏。
「よし、んじゃあ行くか!」
「………行き先聞いてないんですがそれは…?」
「まーまー黙ってついてこい!悪いようにはしねーよ。」
「悪いようになりそうだったらその場でハンドル乗っ取るからなクソ兄貴。」
「おー怖い怖い。安全運転でお送りしまーすぅ。」
相変わらず飄々とした、とかいうレベルではないクソ兄貴である。
車を飛ばして四、五十分といったところだろうか。その間はずっとレスピーギの交響詩『ローマの祭り』と『ローマの松』が車中には流れていた。
「着いたぞ。」
そう言われて車を降りたのは横浜だった。
入ったのは小さな建物だった。地下への階段を降りる。車を停めたのはすぐ近くの駐車場だった。三度、兄がドアをノックする。開いてる、という低くよく響きそうな声が聞こえた。
兄と共に中に入った。するとそこには、
大量の楽器。
「ほら、選ぶぞ。世話になります。古川さん。」
古川さん、と呼ばれたさっきの声の主は、よっしゃ、とゆっくり腰を上げた。
「選ぶって……………?」
「お前の楽器を、だ。」
…………………………………………………………………………え。
「ええええええええええええええええええええええええええええ!」
「どした不満か?」
いやそうじゃなくて、
「本気で?」
「冗談でこんなこと言っても利益ねーわ偏屈め。」
確かに道理だ。
しかしまさか行き先不明のドライブ先がまさか楽器屋で、しかもそのまま楽器を買うことになるとは。
困惑しかない。
「黒木君の弟君。初めまして、かな?」
古川さんと呼ばれていた男性が話しかけてきた。
「初めまして。黒木宥大と申します。兄がお世話になっているようで…。」
「いやー、彼はうちの上客だからねえ。むしろこっちがお世話になってるかもしれないくらいだよ。」
「はあ……」
クソ兄貴はどうやら金銭的な余裕が半端ないようです。
とりあえず何台か持ってきてみようか。と呟いて古川さんは
あっという間に五台のケースを持ってきた。
「調性はCで良いんだよね?」
(調性…楽器の基準となる音の高さのこと。チューバの場合は主にBC、E、Fがあり、プレイスタイルや音色の差で決める。)
え?今Bなんですけど…と困惑していると兄貴がええ。Cでお願いします。と返す。
「何故にC管で?」
「今後長く使おうと思ったらBよりCのほうが色々対応しやすいしな。お前どうせ高校で終わんねーだろ?」
まあそのつもりだし、
「なるほど。あざっす。」
という訳で五台、いざ、試奏。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
おかしくなったのは、彼女が我が家にやってきてからでした。
ましゅぺちーの
恋愛
公爵家の令嬢であるリリスは家族と婚約者に愛されて幸せの中にいた。
そんな時、リリスの父の弟夫婦が不慮の事故で亡くなり、その娘を我が家で引き取ることになった。
娘の名前はシルビア。天使のように可愛らしく愛嬌のある彼女はすぐに一家に馴染んでいった。
それに対してリリスは次第に家で孤立していき、シルビアに嫌がらせをしているとの噂までたち始めた。
婚約者もシルビアに奪われ、父からは勘当を言い渡される。
リリスは平民として第二の人生を歩み始める。
全8話。完結まで執筆済みです。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
さようなら、お別れしましょう
椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。
妻に新しいも古いもありますか?
愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?
私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。
――つまり、別居。
夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。
――あなたにお礼を言いますわ。
【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる!
※他サイトにも掲載しております。
※表紙はお借りしたものです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる