【休載中】銀世界を筆は今日も

Noel.R

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Op.3 スケルツォ 急転を駆けて

主題(前編)

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 都大会まであと三十日。いつも通りの練習に励む俺達だったが、今日は少し雰囲気が違った。

 今日は校内での発表があるのだ。毎年体育館をその日だけは借りて、生徒や保護者、OBを招待して行われる。

 そして、毎年借りる体育館だが…

 

 今年の体育館は一日にして音楽ホールに変貌していたのだ。

 というのも、


 黒木先生と顧問の近藤先生とうちのクソ兄貴が呑みに行った際に誰からともなく出たアイデアで、兄の知り合いに頼んで急遽即席の材料を調達したのだという。

 ステージの反響板、座席の高さ、壁も天井も、全てがホールそのものだ。

「まさかここまでとは………」

 流石に俺も空いた口が塞がらなかった。

「いや、私もまさかここまで出来るとは思ってなかったのよ。とんでもない人と結婚してたって改めて思い知ったわ…」

 と黒木先生。

 他の生徒(吹奏楽部も一般生徒も)も保護者もOBも、揃って驚いている。

 近藤先生はなんと業者に紛れ込んで作業に勤しんでいた。言い出しっぺだし見てみるとロマン感じちゃって、とのことだった。その後「んあぁ、腰が…」と呻いていたのは部内の誰もが想定していたことだった。近藤先生、細いし非力そうですもんね…と金村。

 そんなこんなで今、ステージ袖(改造済み)で待機している。黒木先生も準備万端だ。

 メンバーは皆少し不安げに顔を見合わせている。これもステージ効果だろうか。

 予ベルが鳴った。

「本日は、都立楢橋西高等学校吹奏楽部ショートコンサートに足をお運びいただき誠にありがとうございます。演奏に先立ちまして、お願いがございます。会場内での、携帯電話及びスマートフォン等の音の出る機器は、演奏並びに他のお客様のご鑑賞の妨げとなりますので、電源をお切りいただきますようお願い申し上げます。また、カメラ等での撮影及び録画、録音なども固く禁止させていただいております。ご理解、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。それでは演奏開始まで、今暫くお待ちください。」


 あー緊張した。


 そう。さっきのアナウンスは俺が担当だったのだ。放送部も活動が忙しいとのことでアナウンスは毎年部で誰かが担当することになっている。

 勿論ジャンケンで一人勝ちし(てしまっ)た結果だ。

 楽器を持って待機位置に並ぶ。後一分を切った。


 皆のボルテージが高まってゆく。



 本ベルが、厳かに冷たく、始まりを告げた。


 さあ、幕が上がる。
 
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