【休載中】銀世界を筆は今日も

Noel.R

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Op.3 スケルツォ 急転を駆けて

主題(後編)

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 照明は煌々と輝き、観衆は波打つ。

 熱気が緊張感を高め、表に出すまいと堪える。



 多くのメンバーが圧力を全身で感じているようだった。

 だが俺はここで一人、違う理由で昂ぶっていた。

 
 帰ってきたんだ。舞台に。皆で奏でるこの舞台に、帰ってきた。

 
 全員が席についた。黒木先生が客席へ深く一礼する。

 一曲目は部員七十五人全員で、バーンスタインの『キャンディード』序曲だ。

 とにかく音圧のコントロールで魅せる冒頭。轟くティンパニ、駆け抜けるファンファーレ、戯けたようなフルートたち。
 不規則に聴こえる流れを軽快に木管群が舞う。低音は奇襲。冒頭の再現に帰る。

 一際厚さを増す響きの中、観客に歓迎と感謝の意を込め、全員の、全身全霊の、序曲。


 盛大に、爆発的に、走りきった。

 黒木先生が深々と頭を下げる。


 湧き上がる客席。万雷の拍手。今年は一味違うと見せつけることが出来たようだ。

 ここで一旦コンクールメンバー以外は捌ける。

 一年のクラリネット、長友が陰アナを務める。

「先程お送り致しました曲は、レナード・バーンスタイン作曲、キャンディード序曲でした。続きまして、今年度の東京都吹奏楽コンクールにて演奏する二曲を続けてお送り致します。課題曲Ⅲ、保科洋作曲、インテルメッツォに続きまして自由曲は、黒木宥大作曲、交響詩 白夜の暁。指揮は、黒木凜音です。」

 改めて深く一礼する。

 振り返った黒木先生は指揮棒を胸の前で立て、深呼吸する。

 ゆっくりと目を開けた。その唇が、『行くよ。』と動く。

 

 穏やかに、始まった。




   ◆  ◆  ◆




 幕が降りた。

 全員、憔悴しきった表情だった。



 或いは絶望したような、と言うべきか。



 楢橋西高校吹奏楽部の行く先に、暗雲が立ち込めた。
 
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