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Op.3 スケルツォ 急転を駆けて
再現部(後編)
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ある暑い夏の日のこと。
楢橋西高校吹奏楽部に所属する私、佐藤尚美は、来る東京都吹奏楽コンクールに向けての練習のため、いつもの坂道を自転車で駆け上がった。
コンクールまであと二週間。部の緊張感は日に日に高まっていく。
そんな中でも、常に落ち着いた奏者がただ一人。
先輩にして後輩でもある人。黒木宥大。
長期の休学から復帰し、コンクールへと共に歩む大切な仲間だ。その腕はやはり大したもので、三年間必死に練習してきた私でも敵わない。
そんな先輩(いや、後輩なのかな?)の作曲した、交響詩『白夜の暁』も、他の吹奏楽作品に引けを取らない一曲だ。そんな曲を演奏できるのが嬉しい。
今日はどんな変化があるだろう。日々進歩するバンドに居られるのは幸せなことだ。
そんなことを考えていると、あっという間に着いた。門を抜け、駐輪場に自転車を停めた。
◆ ◆ ◆
いつも黒木……先輩は誰よりも早く部活に来る。校舎を上がる頃にはもう音が聴こえることもある。今日はまだ聴こえないけど、もうじきいつもの自由で開放的な、優しい音が聴こえることだろう。
校舎の階段は嫌いで、いつも登るのは億劫だけど、その先に今日もいつもの音があると思うと少し気が軽くなる。
「………あれ?」
誰もいない踊り場で思わず声が出てしまった。
音が、先輩の音が聴こえない。
教室の鍵はもう職員室の鍵の棚には無かった。ということはもう来ているはずなのに、いつものように聴こえない。ただ蝉の力の抜けたような声がこだまする。
どうしたんだろう?何かしてるのかな。
342教室の鍵はやはり間違いなく空いていた。
「おはようございま…………………………………!!!先輩!どうしたんですか!?」
そこに黒木先輩がうつ伏せで倒れていた。
寝ているような場所でも体制でもない。
「先輩!聞こえますか!佐藤です!先輩!」
…反応がない。
「誰か!誰かいませんか!」
教室から顔だけ出して叫んだ。声が枯れそうになった。
「どないしてん?!」
来てくれたのはパーカッションの三年、菅井雅文だった。
「先輩が!倒れてて!で…」
「救急車呼んでくる!お前は近藤先生のとこ行け!」
「分かった!」
無我夢中で走った。何人かの運動部が慌てて道を開けてくれた。
「近藤先生!来てください!早く!」
職員室には近藤先生しかいなかった。今度は二人でさっきは億劫だった階段を駆け上がった。
◆ ◆ ◆
連絡を受けて駆けつけた先輩のお兄さんが付き添う形で救急車は出発した。
その姿が見えなくなった途端、糸が切れたように私の体は崩れた。
怖かった。びっくりした。怖かった。怖かった。怖かった。
その後、一応平常通り部活は行われた。それでも、先輩がいない不安が薄っすらと部を包んでいた。
そもそも何で教室で倒れていたんだろう。
別に外傷も無かったし、病気って感じでもなかっ………
…あの時か。
=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=
受験勉強の方にそろそろ本腰を入れるため、暫く休載します。
最速なら国公立の二次試験が終わる頃に帰ってきます。
今暫くお待ちください。
Noel.R
楢橋西高校吹奏楽部に所属する私、佐藤尚美は、来る東京都吹奏楽コンクールに向けての練習のため、いつもの坂道を自転車で駆け上がった。
コンクールまであと二週間。部の緊張感は日に日に高まっていく。
そんな中でも、常に落ち着いた奏者がただ一人。
先輩にして後輩でもある人。黒木宥大。
長期の休学から復帰し、コンクールへと共に歩む大切な仲間だ。その腕はやはり大したもので、三年間必死に練習してきた私でも敵わない。
そんな先輩(いや、後輩なのかな?)の作曲した、交響詩『白夜の暁』も、他の吹奏楽作品に引けを取らない一曲だ。そんな曲を演奏できるのが嬉しい。
今日はどんな変化があるだろう。日々進歩するバンドに居られるのは幸せなことだ。
そんなことを考えていると、あっという間に着いた。門を抜け、駐輪場に自転車を停めた。
◆ ◆ ◆
いつも黒木……先輩は誰よりも早く部活に来る。校舎を上がる頃にはもう音が聴こえることもある。今日はまだ聴こえないけど、もうじきいつもの自由で開放的な、優しい音が聴こえることだろう。
校舎の階段は嫌いで、いつも登るのは億劫だけど、その先に今日もいつもの音があると思うと少し気が軽くなる。
「………あれ?」
誰もいない踊り場で思わず声が出てしまった。
音が、先輩の音が聴こえない。
教室の鍵はもう職員室の鍵の棚には無かった。ということはもう来ているはずなのに、いつものように聴こえない。ただ蝉の力の抜けたような声がこだまする。
どうしたんだろう?何かしてるのかな。
342教室の鍵はやはり間違いなく空いていた。
「おはようございま…………………………………!!!先輩!どうしたんですか!?」
そこに黒木先輩がうつ伏せで倒れていた。
寝ているような場所でも体制でもない。
「先輩!聞こえますか!佐藤です!先輩!」
…反応がない。
「誰か!誰かいませんか!」
教室から顔だけ出して叫んだ。声が枯れそうになった。
「どないしてん?!」
来てくれたのはパーカッションの三年、菅井雅文だった。
「先輩が!倒れてて!で…」
「救急車呼んでくる!お前は近藤先生のとこ行け!」
「分かった!」
無我夢中で走った。何人かの運動部が慌てて道を開けてくれた。
「近藤先生!来てください!早く!」
職員室には近藤先生しかいなかった。今度は二人でさっきは億劫だった階段を駆け上がった。
◆ ◆ ◆
連絡を受けて駆けつけた先輩のお兄さんが付き添う形で救急車は出発した。
その姿が見えなくなった途端、糸が切れたように私の体は崩れた。
怖かった。びっくりした。怖かった。怖かった。怖かった。
その後、一応平常通り部活は行われた。それでも、先輩がいない不安が薄っすらと部を包んでいた。
そもそも何で教室で倒れていたんだろう。
別に外傷も無かったし、病気って感じでもなかっ………
…あの時か。
=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=#=
受験勉強の方にそろそろ本腰を入れるため、暫く休載します。
最速なら国公立の二次試験が終わる頃に帰ってきます。
今暫くお待ちください。
Noel.R
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