爛漫ろまんす!

平野ポタージュ

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時の一族と実

医の国

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山藍シャンラン国は──医療がどの国よりも先進している国だと、知識を広めた張本人が語った。
それが、青龍チーロンだ。

「都の人達…みんな薬草みたいなのとか、なんだか独特なニオイの…茶色い粉っぽい?物を持ち歩いてるけど」

「あれは漢方ですよ。…漢方を作るには専門的な知識と資格が必要になりますが…、この国に住む民ならば簡単な漢方や薬を煎じる事はできるんです。」

「へぇ~、凄いんだね!」

「まあ…自己責任ですが…フフフ」

「え……それって危ないんじゃ───」

「あはは、冗談ですよ。なので、その知識を身に付けられるように、"学び舎"が存在しているんです。中には学び舎に通わず、そのまま独学で医者をしている者もいますが…──大体そういう輩は天性な素質と腕を持ち合わせていますね」

どちらにしても無免許の医者にはかかりたくない…。と、思う神美かみだった。

「せんせー?───せんせーだよな!?」

歳は10歳くらいか、活発そうな少年が青龍チーロンに駆け寄る。

「!──琳桃リンドウ…、久しぶりですね。」

「せんせー!!なんで急にいなくなっちまったんだよ~!!。───オラ…、見捨てられたんだって…思っちまったよ!!」

琳桃リンドウと呼ばれた少年は涙目の目元をゴシゴシと擦った。青龍チーロンは、やれやれと言わんばかりに、自分よりも背が低い琳桃リンドウと目線を合わせる為にしゃがみ込み、優しく頭を撫でる。

「…ひと月毎に顔を出すとは言っていたんですがね」

「えぇ!?オラそんな話聞いてねーよ!」

ガラガラ……と、木で出来た車椅子に乗った15歳くらいの少女が「ここに居た」と、少し息を切らして胸を押えながらゆっくりと此方に近付いてくる。
車輪が小石に引っかかり、バランスを崩しそうになったのを神美かみは咄嗟に支え、横転しそうになるのを防いだ。

「あ…ありがとうございます!」

「全然!、大丈夫?」

梅琳メイリン姉ちゃん!?。なんでこんな所にいるんだよ!!危ないだろ!?」

「そう思うなら、真面目に授業受けてちょうだい。探すのに苦労したわ…」

「だって……、せんせーが居ない授業なんかつまんないんだもん。」

「立派な医者を目指す者が、そんな事を言ったら駄目よ。ね?先生───」

梅琳メイリン、足の具合はどうですか?」

「少しずつではあるけど、良くはなってるって。今は歩行の練習もしてるよ」

「姉ちゃんは…せんせーが月毎に帰ってくるって知ってたのか?!」

「あんたに言うと、ギャーギャー騒いで勉強が身に入らないからねぇ…。まあ、逆効果だったみたいだけど…────ところで先生、そちらの素敵な娘さんと…殿方は?」

「訳あって今は旅をしていて…その仲間と───」

青龍チーロン神美かみの肩を抱き寄せ

「私の妻となる女性です」

「何!?────」
「はあ?!」
「ええーー!?いつの間に…」
「…」
「キュウ?」

「は……はいいいいい~~~っ!?」

「せ…せんせー!!、なんでこんなボーッとしてそうな肉がタプタプしてる女なんかと!!」

「に、肉がタプタプしてるですって~!!?」

「おや、この肉付きがたまらないのに…。それと、彼女は痩せてしまうと美しすぎるので、敢えて肥えているのです。」

「…おい、女!───オラはお前とせんせーの結婚認めねぇからな!!」

「いやだから、違うってば!!」

青龍チーロンの嫁候補として紹介されてしまった神美かみ
このやり取りを、少し離れた場所から静観している者がいた─────


「…どうして、藍猿ランホウが此処に…」

その男は拳を握り締め、震えていた。
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