爛漫ろまんす！

時の一族と実

欠落した人間たち

学び舎には沢山の子供と、貧しくて学ぶ事が出来なかった年配の男女や、生まれつき身体が不自由であったり、心を閉ざして口をきかない者もいた。
青龍チーロンはそんな人間達を見過ごせる程、心は冷酷ではなかったのだ。
それが運命さだめられた人生だと主あるじに言い聞かせられていたとしても…だ

。
。

「あの人間は生まれつき片腕だ。」

龍仙女ロンシィェンニュは世界を護る者にしては、人間に対して残酷すぎるくらい平等だ。それがたとえ、五体満足・五体不満に生まれても────
裕福な人間や貧困な人間で差が大きくあっても、それは生まれた者の運命さだめだと言い聞かされた。

「… 龍仙女ロンシィェンニュ様、あの人間は腕が生えないのですか？」

「ああ。死ぬ迄ずっと…あのままの姿で生きていく。」

「私の力で、あの人間に腕を与える事は出来ませんか？」

「無理だ────そんな事をしてみろ、世界の均衡が乱れるだけ。お前が滅ぼす覚悟があるならば、試してみるのもええんじゃねぇのか？」

(…性格の悪い糞婆くそばばあだ)

青い龍は心の中で毒づいた。
人間に生まれ変わる機会などそうそうないだろうが、もし……何かのきっかけで人間になれたとしたら…

「私は、その運命さだめを変える手伝いくらいは出来ると思います」

「ほお……、それがきっかけで───他の人間に悪影響が出るとしてでも……お前は哀れだと思う人間に手を貸すのか？」

「哀れだとは思った事はありません。でも…あの片腕の人間から、強い生命力と……片腕という悔しさを糧にして、諦めたくない…───そう…思いが伝わってきます。私は、興味があります───あの人間が何処まで這い上がれるのか…」

「おめぇは龍の癖して……───人間臭ぇな」

この言葉を私に言った主あるじは、一人の人間の娘を愛し、世界がどうなったとしても、その娘を護る為に、この世界を捨てた─────
捨てれるくらい、愛した。
使命なんて阿呆なかっこをつけて……────
その身が滅ぶ事が分かっていて…

だからこそ、その身で私に語ったのか……
今となっても、龍仙女ロンシィェンニュの事は分からない。

「せんせー！！、オラ、せんせーに教わった風邪に効く薬作れるようになったんだ！」

「せんせー！！、アタシね字がかけるようになったの！」

「先生！、此処で読み書きや演算ができるようになったおかげで…新しい仕事に就けることになりました！」

「先生、足がね…動くようになったのよ」

何かが欠けて生まれた者達が集うこの学び舎───
私はただただ───何処までこの人間達が這い上がれるのかを見たいだけ。

"愛"などと言う感情は一切抱かない

だけど……

(何故だか胸が温かい…)

この空間が居心地いい───────
家族とやらが居たら……この様な感じだったのでしょうか？。

(分からない)

だけど、中には裏切る人間だっている─────
初めて心を許せると思った……なんて　

(長く人間と共にすると…ろくな事がないですね)