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べったりする男

ベッドの上での番

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「おはよぅ」

目を開けた瞳に、
捕らえられている俺は、挨拶を受ける。

腕の中に居たる俺の愛しいつがいが、目を覚ました。

まだ眠いような声の挨拶が、可愛い。
とろりと重い瞼に疲れを感じさせた。
寝起きが良い方だと思うが、昨日の今日で疲れているのだろう。

今朝はゆっくり起きれば良いのだが、
律儀にいつもの時間に目を覚ましたようだ。

気を許されていると感じるマイペースさに、
頬が緩むのを感じながら、挨拶を返した。

『このまま腕に閉じ込めておきたいな。』
という本音を伝えないよう自分を律した。
それを伝えたら、俺は実行してしまうだろう。

そうなれば、今日は旅立てない。
今後のために、俺自身に我慢を強いる。

ここでするんじゃない。

もっと深い関係になるのは、心の距離を詰めてからだ。
行動で示すだけではダメなんだ。

この番の心にもっと影響を与えなければ。

それには、
“顔を見て話せ”だ。
会話をしろと言う助言に素直に従うことにする。

番との会話は楽しいだろうが、
“膝に乗せずに”という条件がわからない。

なぜ、番を膝の上に座らせてはダメなんだ?

聞けば、顔が見えないだろうが!と呆れられた。

肌の接点が少なくなるのは寂しいが、
番を守る為にも必要なことと思えば、耐えられる!

日中くらいならな。
宿場に着けば、思いっきり甘やかそうと決めて耐えることにする。

この可愛い番を手放す怖さがある。
俺の元から逃げ出すことがあれば、手の中に再度おさめて逃さないだろう。
二度と手の中から逃げないように。

身体にわからせる。甘く甘く…
ドロドロにな。

そんな身体を合わせた、ベッドの上で身体で語り合うのが
番同士だろうと思うのだが、一方的に愛でたいだけじゃなく…

『君の心が欲しい。』
まだ伝えられない、本音とともに優しく彼女の頬に触れる。
ぽやぽやしている表情は、普段より余計に幼く

庇護欲を掻き立てるが、
その匂い立つものは、喰らいつきたくなる欲を刺激する。

ガブリっと喰らいついて、歯に伝わる骨まで
愛おしく思うだろうか?

いや、怖がらせるのも悲しませるのも違う。
俺を受け入れて欲しい。

全部を。

この熱情も色欲も、醜い心もだ。

君が他の男と居れば、俺は怒りに染まる。
誰かを見て目を輝かせれば、嫉妬に狂いそうだ。
君の身体を貪り喰いたい。余すことなく隅々まで。

俺が知らないトコロがないように。
俺しか知らない身体にしてやる。

甘く、逃げられない。逃げる気など起こらないくらいに。


君は、俺のエモノ。

離れたくないつが
仄暗い欲、醜ささえ飲み込んでくれと差し出すには、
まだ時間をかけなければ。

俺の心に仕舞い込んで、
微睡に身を横たえる番を撫でるのだった。
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