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戦場の後

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「私を見なさい」

戦場で膝をつく男に声をかける。
こんな所にいられても邪魔だ。

せめて自分の足で後退してほしい。

貴重な兵をこの男を運ぶために使いたくはない。
ズシャ!とひと断ち魔物を切り捨てた。



「うちの愚弟が邪魔したね。」

婚約者の兄だ。
護衛はいるようだが、こんなところに出てきてはダメな人物だろう。

「お戻りくださいな、ここは私の戦場ですわ。」
「ああ、分かっている。」

ささっと男を回収し、立ち去る。後ろから

「楽しんで」

ニコッと自然に笑みがこぼれる。

私が邪魔になるモノがない、快適な戦場が出来上がっていた。



そして、魔物の後始末の時に
婚約破棄の話をされる。

まあ、当然だろう。そもそも、気性が合わないのだから。


「君が義妹にならなくて残念」

元婚約者の兄が、何故か隣に座る。

全然残念そうでないのは何故なのか。

「いや私の婚約者に、どうだい?」


この男、弟を私の婚約者にしておくことで

私の婚約者になれるよう画策していた節がある。


「君の美しさに惚れていたんだ。」

戦場で言ったこの男のセリフは、何故か私は喜んでいる。

それを面には出さず、私はゆるりと笑い
男の口から出る言葉を聴いていた。


「奇特な事だ。」
「君ほどの女性といたいなら、それくらいちょうど良いんじゃないか?」


私は差し出された手に、自分の手を添えた。
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