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鉄槌

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卒業の儀に2人が入城した。


1人はこの国を担う王太子。
その手にリードされるのは、高貴な血筋の令嬢。

この国で一番高位であり、王族の血も入る彼女ならば
王妃として国を導いてくれるだろう。

王太子は、彼女に決めていたのか。
それが王太子の意志とそぐわないとしても、まずは形を成すのが重要だ。


今から、神前での誓いがある。
神は人を罰する力を持っている。過去その怒りに触れて消えてしまった国もあるのだ。


最悪な状況を思い描いた緊張から、見守る大人達は安堵の雰囲気だった。
だから気づかなかったのか?


壇上に上がる王太子が宣言する。

「私は、王太子の座を狙う女達など選びはしない!」

ざわついた。

ーなぜ?
ーでは誰を選ぶと言うのだ?


「皆、貴方様を慕っております。王族の一員になるための研鑽を否定なさるのですか?」

事実、王妃教育を受けた女学生が集められていた。
その乗り越えた時間の否定は、悔しさが滲む。

「私ではなく、王家に入りたいがためだろう?知った事か!」

もう、神に誓った王家の約束は守られることはない。

『では、おまえは王になる事はない』

公爵令嬢が、人とは思えない声で宣言する。
穏やかなその瞳は微笑んでさえいるかのようで、穏やかだ。

その背には、清らかな翼は見えたため大人達は跪いた。


王太子、もう王になる事はない男は聖なる炎にまかれ立ち去った。

残った新たな王、神の祝福を受けた高貴な血筋の令嬢に跪く。


新たな王は、天命を受けて国を繁栄させる事を誓ったのだった。
にこやかに、王太子だった男の追放と自らの覚悟を語り始めた。
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